2017年01月03日

想像以上の衝撃 旋風を巻き起こしたRBライプツィヒ

新年明けましておめでとうございます。

毎年一年の最初は天皇杯決勝のレビュー記事が定番でしたが、
本年は肩肘張らず、自分のペースでじっくり更新していこうと思っています。

そんなゆったりした感じのブログサイトですがお付き合いいただけたらと思います。

それでは昨年アップしようと用意していたものがありますので、そちらから始めたいと思います。


今シーズンのドイツ・ブンデスリーガ前半戦において旋風を巻き起こしているのが
巨大な資本をバックにするRBライプツィヒ。

開幕ゲームのホッフェンハイム戦での引き分けを皮切りに
13節のシャルケ戦に至るまでの間を無敗のまま乗り切ると、
今シーズン昇格したばかりながら11節には首位に立っている。

ラルフ・ラングニックに端を発した先鋭的なスタイルのサッカーは
プロジェクト発足からたったの7年で
ラルフ・ハーゼンヒュットルの下で結実しようとしている。

開幕前からピッチ外での経営面がクローズアップされた同チームではあったものの、
シーズン前半戦を終えた現在ではピッチの中でサプライズを与えているといって過言ではない。

その躍進の原動力となっているのが、
最終ラインを上げて両サイドが中に寄って作り上げるコンパクトスペースをベースとして、
集団でプレスをかけての相手を追い込むプレッシングと
奪ったボールを縦に速く進めてゴールに迫るダイレクトなサッカーだ。

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有名選手とは言い難い彗星のように現れた選手達による組織的なサッカーによる躍進ぶりは
チームの背景こそ異なるものの10-11シーズン香川真司らを擁してマイスターシャーレを掲げた
ボルシア・ドルトムントを想起させる。

しかしながら、コンパクト過ぎるスペースは相手の活動スペースを狭めるとともに
自らの活動スペースを狭める諸刃の剣にもなる。

スペースを狭めることによって
相手だけでなく自分達のボールコントロールも困難にすれば秩序の無い状況を生む。

しかし、ライプツィヒは敢えてこの無秩序な状況を作り出し
コントロールすることで試合を優位に進めようとしている。


ユルゲン・クロップ時代のドルトムントや
ロジャー・シュミット率いるレバークーゼンがそうであるように、
ハーゼンヒュットルのライプツィヒのゲームスタートもボールを保持しないところから始まる。

ライプツィヒの4−4−2の陣形はサイドMFがワイドに広がらず
内側に寄せることでオフェンシブMFとなって前後左右コンパクトな陣形を作ったら、
ボールサイドのOMFが2トップに並ぶように前に出ることで
相手のボールホルダーに対してのプレッシャーを強めている。

その際、逆サイドのOMFは中寄りに下がり
2人のCMFと共に中央を固めてパスコースを消し、
相手のボールを出す方向を誘導して実際に出させたら素早く距離を詰めて追い込みを図る。

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ボールを持つ相手の選択肢は人の居ないワイドに開いたサイドか
もしくはGKへのバックパスに誘導されるために
タッチラインまたはゴールラインを背にして追い込まれることになる。

相手はそこでリスクを取ってもボールをキープするのか
それとも大きく蹴り出して当面のリスクを回避するのかの選択に迫られることになるが、
ライプツィヒは前線のプレッシャーに伴い
ディフェンスラインをハーフウェイまで上げて更にスペースを狭めているため、
相手が地上戦で足元から繋ごうとするならば密集したスペースの中でボールを奪い
空中戦でロングボールを蹴ってくるならば後ろから跳ね返してボールを取り上げる。

ボールを失った相手もまたすぐにプレッシャーをかけて奪い返そうとするため、
ライプツィヒは素早く縦にボールを前線に供給してプレッシャーが及ぶ前に攻撃へと切り替える。

相手の守備陣形が整わない間に縦に素早くボールを出すことは
大きなチャンスが生まれやすくなると言える。

しかしながら、ライプツィヒのそれは、相手ゴールに迫ることを実現すると共に、
「ボールを相手ゴールに近づける=自陣ゴールから遠ざける」役割をも果たしていると言える。

ボールを自陣から遠い位置に置いて敵陣で行うボール回収作業自体を守備として
高い位置から再攻撃へと繋げる。

しかし、そこでボールを失い、直後に相手にカウンターを仕掛けられるような展開になれば、
ボール回収作業のためにライプツィヒの高くしたディフェンスラインは
背後に大きなスペースを与えることになる。

ライプツィヒはその広いスペースを衝かれる展開に持ち込ませないよう
ボールを敵陣に閉じ込めるべく集団で厳しくプレッシャーをかけるわけだが、
相手と同数で相対している以上
行き当たりばったりでプレッシャーをかけるだけではボールを回収し続けることは困難である。

ましてや縦に速い攻撃ばかりを追求すれば
敵陣で選手間の距離を詰められるばかりでなく、
高い位置でのプレスを外されれば逆に大きなピンチとなって帰ってきてしまう。

だからこそ、ライプツィヒは縦に速い攻撃だけを追求することなく、
ボールをキープして繋ぐ事を試みる。

攻撃でボールを失った直後すぐに回収作業ができるよう
全体の位置を押し上げておくためだ。

ボールを保持する時間を持つ事でチーム全体を押し上げられれば、
失った直後にすぐに相手を取り囲むための用意・準備ができて
その場でのボールの回収効率を高める事を可能にする。

自陣ゴールから遠ざかった位置で守備をするのであれば
予防的な観点に立って事前の準備ができるようでないとその継続は難しい。


ライプツィヒのサッカーを短く表現するならば
「組織的なプレス」と「縦に速い攻撃」に集約されるとは思うが、
より深く掘り下げれば、「組織的なプレス」から「縦に速く運ぶ攻撃」、
または「縦に速い攻撃をしないで、繋いで全体を押し上げてから縦にボールを進める攻撃」となる。

そしてボールを相手陣内に運んだら「敵陣でのプレスによるボール回収」があって、
「二次攻撃」、「再びのボール回収作業」から「三次攻撃」へと繋がっているわけで、
これら連なる攻撃の連鎖は
縦に速い攻撃よりも後者の縦に急ぎ過ぎない攻撃によってもたらされる。

つまりは、ライプツィヒというチームを機能させているその根幹にあるのは
実際のところ「縦に速い攻撃」ではなく「繋ぐ攻撃」なのだ。

集団でのプレスでマイボールにしたライプツィヒは
まずは縦に速く相手の隙を衝くことを伺いながらも、
一旦後ろまで戻すことをしてボールをキープしようとする。

GKにまで戻しながらも
相手がボールに対してチェイスしてくるようであればやはり前方に蹴り出すものの、
後方で時間とスペースを与えられたならば後ろから繋いで前進することを選択する。

後方のCBヴィリ・オルバンとステファン・イルザンカーとその前方に位置する2人のCMF
ディエゴ・デメとナビー・ケイタの4人でボールを動かすライプツィヒは、
両SBのマルセル・ハルステンベルクとベルナルドがワイドに開くことによって
守備機会には存在しなかった「幅」を作り出す。

まさしく「守備は狭く、攻撃は広く」のサッカーのセオリーが体現されていると言える。

両サイドバックで作った幅はボールを運ぶための入口を作るが、
ライプツィヒはまずこのワイドに開いているサイドバックへボールを当てると、
前方に進める場合もあるがその多くの場合ですぐに後ろへのリターンを選択している。

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後方とサイド間でかわされるこの何気ないパス交換は
相手のサイドMFの位置を下げて全体を押し下げると共に
ブロックの間を縦に引き伸ばしてスペースを作ることに寄与する。

相手の2列目以降を押し下げる事により
前線に残る相手選手との間に創出したスペースは、
ライプツィヒにとっての攻撃の起点箇所となる。

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全体を押し上げることによって位置を上げてきたライプツィヒのセントラルMFは
そこで時間とスペースを得ることによって縦へパスを配球しながら
状況に応じて前方にできたスペースを衝いて更に上がっていく。

セントラルMFにサイドバックまで後ろから次から次へと飛び出してくるライプツィヒに対して、
最終ラインだけでは対応が困難になる相手は
2列目の選手がカバーしに位置を下げるためにますますその位置が押し下げられることになる。

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その攻撃の中でライプツィヒがボールを失えば相手のカウンターの脅威に晒されることになるが、
相手を押し込んでいることによって
相手の前線に残った選手との間に生じた分断されたスペースは
ライプツィヒのボール回収作業を効率的に機能させる。

カウンターの起点になろうとする相手の前線の選手に対して
ライプツィヒはセンターバックが背後からぴったりマークに付くと、
前方からはプレスバックの援軍を得ることで
ボールをコントロールしようとする相手選手を挟み込む。

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先ほども言ったように、
相手と同じ人数である以上はプレッシャーをかけようとするライプツィヒの選手の数と
カウンターを仕掛けようとする相手選手の数は大きくは変わらないはずだが、
ライプツィヒはボールを持って攻撃している段階で相手を押し込んで前後を分断しているため、
相手がいざカウンターを仕掛けようとする時には既にその起点となる箇所を孤立させている。

その孤立した選手に的を絞って前後でサンドしているからこそ
少ない数の相手選手を複数人で取り囲める状況が生まれているのであって、
ライプツィヒは決して走力に頼っただけのチームではなく
失ったボールの回収まで逆算してゲームを組み立てている論理的なチームであり、
そこに今シーズンのドイツ・ブンデスリーガを席巻している要因がある。


しかし、そのライプツィヒもウインターブレイクに突入する直前の前節、
首位攻防戦となったバイエルン・ミュンヘンとの試合で鼻をへし折られている。

ハーゼンヒュットルの古巣インゴルシュタットには土をつけられていたものの
ここまで順風に試合を消化していたと言えるライプツィヒを躓かせたのは
バイエルンの個々の選手が有するクオリティの高さだった。

バイエルン戦に臨んだライプツィヒはこれまでと同じように守備をセットし
前線からプレスをかけてサイドにボールを誘導しタッチラインに追い込んでいる。

そこには首位攻防戦でも臆することなく
普段着のサッカーをしようとするライプツィヒの姿があったように思うが、
バイエルンの選手は追い込まれながらも密集地帯を個人で突破してくる。

バイエルンの先制点もそうであったが、
ライプツィヒがサイドに追い込んで数的優位の状況で相手を取り囲みながらも
少ない人数のバイエルンの選手に球際の争いに敗れて逆サイドへ展開されて仕留められている。

取り囲む前の段階においても、バイエルンの選手の
ワイドに開いた選手の足下に届けるスピードを乗せた長い距離のパス精度と、
外に出すと見せかけて中を衝いてくるようなパスを出す上での状況判断能力は
ライプツィヒのプレッシングを完全に無効化させた。

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また、奪ったボールをキープしようとライプツィヒがGKまで下げても
バイエルンの選手が追ってくるためにロングボールを蹴れば
逆にバイエルンにコンパクトスペースを作られてロングボールを跳ね返される、
ようやく敵陣に運んでもカウンターの起点となるレバンドフスキを潰せず
ディフェンスラインを突破されて背後の広いスペースへと浸入されるなど、
ライプツィヒは全く良いところを出させてもらえず、
相手の隙をついて縦に速く攻撃できた時しかチャンスにならなかった。

先制されたライプツィヒが更に前からボールを取りに行く必要が出て
バランスを崩すことになったのに対して
バイエルンは前から取りにいかずに待ち構えるようになってライプツィヒにミスが出たり、
また、焦ったライプツィヒがラフプレーをしてしまい退場者を出すなど、
先制点がライプツィヒの戦況を悪化させた結果が0−3と差の開いたスコアにはしている。

しかしながら、ここまでライプツィヒ躍進の原動力だったプレッシングは機能させてもらえず、
敵陣でのプレスを機能させるためのボール保持もままならなかった点で言うと、
例えスコアが動いていなかったとしてもこの試合に関してはライプツィヒ「完敗」の評価が妥当だろう。

順位こそ近くしてはいるものの、ライプツィヒと王者バイエルンとの間には
まだまだそれだけの大きな差があることを痛感させた首位攻防戦だった。

ただし、対抗馬となりうるところまで力をつけてきているのは間違いなければ、
その差はバイエルンの選手のコンディションによって左右されるところもあると言える。

バイエルンの選手がコンディションが上がらず
プレーのクオリティが高まらなければ違った結果がもたらされる可能性は十分にある。

次回の両チームの対戦はシーズン終盤となるが、
消化しなければならない試合の数が多く
疲弊する可能性もあるバイエルンがコンディションを維持できている保証はない。

とは言え、やや勢いを失ったライプツィヒが
そこまでに現時点での勝ち点差をキープできているかも不明であり、
ライプツィヒにとってもこの勝ち点状況の維持が求められるところではある。






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posted by ピーター・ジョソソン at 12:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ ブンデスリーガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする