2016年07月08日

プラン通りの結果にならずも意図的に試合を硬直させたドイツ

ヨーロッパの強豪国による熱戦が続くEURO2016から
準々決勝のイタリア対ドイツのカードを取り上げたいと思います。

EURO3連覇も期待されたスペインを破って意気上がるイタリアと
直近のW杯チャンピオンであるドイツによる試合は
1−1のまま延長でも決着つかず
PK戦までもつれ込んだ結果ドイツが勝ち上がりを決めています。

思っていた以上に堅い試合になったというのが率直な感想ですが、
事実上の決勝戦とも言われた強豪同士の試合を見ていきます。

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この準々決勝の試合に臨むに当たってまずは変化をしてきたのはドイツの方で、
これまで4バックにしてきたディフェンスラインを
センターバックを1人増やす3バックシステムに変更しています。

変更してきた理由は言わずもがな対戦相手のイタリアが3バックだからであって、
4バックのチームが3バックのチームを相手にした時に被りやすい
布陣上のギャップを解消するためです。

この大一番であっさりと変更できてしまうところに
ドイツの個々の選手のスキルの高さや柔軟性を感じますが、
システムを合わせてきた事でピッチ上ではギャップの生まれにくい
両チームがガップリ四つに組む状況になります。

だからと言って相対するイタリアが戦い方を変化させる事はなく、
まずはドイツにボールを持たせたらハーフウェイ付近にブロックを作って
これまで通り5−3−2の陣形で守備から試合に入っています。

イタリアの5−3−2の守備は中央が固められているため
ドイツは5−3−2の2の手前から3の横にできやすいスペースまでボールを運んでは
攻撃を仕掛けていく事になります。

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ドイツはイタリアの2トップに対する3バックでの数的優位を使って前へと運ぶと
イタリアの何倍もゴールへアタックしていたと言えます。

しかし、ドイツの攻撃はイタリアのブロックの外回りからパスを供給しているに過ぎないので
ゴールを脅かすまでには至っていません。

イタリアとしてはこのハーフウェイから自陣に引いたところでブロックを作るのを守備ベースとすると、
プレッシャーをかけてボールをドイツ陣内へと追いやったら
ディフェンスラインを上げてボールの奪う位置を上げようとします。

ボールを奪えたのであれば相手に守備を整えるための時間を与えないように急いで縦に運び
それに伴って全体の位置を押し上げたらイタリアは押し上げた状態を維持しようと画策します。

相手のGKからのリスタート時にはドイツのペナルティボックスの周りに選手を配置して
簡単にショートパスで繋がせないようにしていたように、
イタリアの高い位置からの守備意識は徹底していたと思います。

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イタリアがそこまで高い位置での守備を徹底させるのは
もちろんリスク回避のために自ゴールから遠い位置で守備がしたいという事とともに
顕著な成績を叩きだすストライカーが不在であるため
相手にカオスの状況を与えて攻撃したいとする事情があるかと思います。

しかし、ドイツという対戦相手を考慮した時、一旦撤退を選択してしまうと
高い位置にボールを閉じ込めようとする相手のポゼッション状態からそうそう逃れられず、
もう一度全体を押し上げるには大変な作業になるため
イタリアはそうした状況に陥るのを避けたいとするところもあったと思います。

ドイツもまたイタリアと同様に相手のGKからのリスタート時には
ペナルティボックスの周りに選手を配置してイタリアに繋がせないようにしていますが、
ドイツの場合は高い位置でゾーンを形成するだけでなく
それぞれの役割分担がはっきりしていてボールの回収作業が非常に効率的であるため、
イタリアはこのドイツのシステマティックな守備から逃れて
ボールを運ぶのは困難を極めていたと感じます。

ドイツの高い位置でのボール回収作業をシステマティックにしているのは
アンカーのトニ・クロースを中心としたイタリアをサンドイッチするプレスバックだと思います。

予め布陣を同じにしてあるためギャップはできにくいとは言え、
ボールを保持して攻撃をする事によって失った直後にはマークが外れてしまう事もあります。

そうした場合にもドイツはクロースがボールホルダーの前方に立ち塞がると、
前方からミュラーやマリオ・ゴメスがプレスバックする事で
相手のボールホルダーを取り囲んでイタリアのカウンターを制しています。

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クロースの後方の相手のFWにボールが入ったとしても
センターバックがマークに付いて後ろからプレッシャーをかけたら
今度はクロースがプレスバックする役割を担ってしっかりと相手を挟み込むため
複数人に囲まれることになるイタリアはたまらずボールを失う事になるというように、
ドイツの高い位置位置でのボール回収作業はイタリア以上に効率的だったと感じます。

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ドイツが相手陣内にボールを運べていながらも
イタリアの5−3−2の守備の外回りからの攻撃するばかりで
ゴールを脅かすような攻撃に至っていなかったのは、
このボールを失った後の守備まで考えながら攻撃しているからです。

リスクマネジメントにプライオリティを置きながらの攻撃であるために
ドイツの攻撃はクリエイティブさやアイディアに欠けたものにはなりがちですが、
例えボールを失ったとしても即回収作業に移れる態勢が取れているため
再びマイボールとして攻撃に移る事を可能にします。

それを繰り返せば相手の守備陣形も乱れてゴールを奪う可能性も高まってくるわけで、
ドイツはある意味で積極的に試合を硬直させたところはあったように思います。


イタリアの場合は高い位置から中盤をスライドさせてドイツの選手を捕まえようとするも
前からのプレスバックまでは徹底していないことから囲い込む守備にはなりにくく、
特に前半序盤においてはアンカーのクロースをフリーにしてしまっています。

クロースをクローズドできないため一旦引く事を余儀なくされると
ドイツの高い位置でのシステマティックな守備が機能して
イタリアは守備する時間を長くしてしまっています。

より高い位置で奪うためにはトニ・クロースへのプレッシャーが必要という事で
前半の途中からイタリアは中盤のジャッケリーニ、パローロ、ストゥラ−ロが
できるだけクロースに付くようにしていたように感じますが、
ドイツが後半になって先制した場面ではそれが仇となったところもあったように感じます。

失点の場面を少し巻き戻すと、イタリアは高い位置でボールを奪うべく
クロースに対してはストゥラーロが前に出てプレッシャーをかけに行きますが、
後ろに戻されたボールをGKノイアーが前方に蹴り出しています。

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前からプレッシャーをかけてノイアーに蹴らせたのであれば
その蹴りだされたボールを拾えれば良かったのですが、
フロレンツィのクリアしたボールをドイツに拾われてしまい
ゴメスがサイドに流れてボールをキープできた事から
イタリアはドイツにプレスを外された格好となってしまいます。

イタリアは低い位置ながらも陣形を整えると
左サイド高い位置で基点を作ったドイツのマリオ・ゴメスに対して
右WBのフロレンツィと右CBバルザリに加えて
アンカーのパローロがボールサイドに流れて数的優位を作りますが、
サイドに流れたバルザリと中央にステイしたボヌッチとの間にポッカリとスペースを空けてしまうと
ニアゾーンをヘクターに衝かれて最後はエジルに押し込まれてしまいます。

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おそらくは前から過剰にチェイスせずに自陣への撤退を選択していれば
守備を整えられている事からボールに近いストゥラーロがサイドに流れて
アンカーのパローロはバイタルを埋める役割をしていたと思われるところで、
ヘクターの侵入はパローロが蓋をする事で防げていたと思います。

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そういうところでは防げた失点でもあり
たまたまロングフィードが通った運の要素は否定できませんが、
ドイツがボールを持って運が先に訪れる可能性を高めていたのは事実だと思います。

それに対してイタリアは高い位置で形成するドイツのゾーンを突破するのに苦戦していましたし
攻撃の部分では後方もしくはウイングバックに一度当ててから
2トップめがけてクサビの縦パスを当てる事を繰り返すばかりで
ボールを持った際にはドイツ以上に単調なところがあったように思います。

まずは2トップにクサビを当てる戦術はコンテがユヴェントスを率いていた時から変わっていませんが、
ユヴェントスではアレッサンドロ・ピルロが長短・裏表に七色のパスを供給していたことからすると
この試合ではパローロが代役を務めていましたが
デ・ロッシを筆頭にレジスタを欠いた事はイタリアにとっては痛手だったと感じます。

それでも、ドイツが後半に運動量の低下からか高い位置での守備の機能性を落とすと、
追いかけるイタリアはリスタートを急いでのカウンターであったり
横幅を広く活用する事でドイツを低い位置まで引かせてチャンスを作って
PKを貰って同点に追いつく事に成功しています。

FWに突出したストライカーが不在で得点力が欠如していることからすれば
イタリアが残り時間で自力で同点ゴールを奪える可能性はそう高くなく、
ドイツの詰めの甘さがその後の延長戦〜PK戦へと誘ったように思います。

後半の出来や選手の質の維持の点で少し憂慮すべき問題があるようにも思いますが
現時点で勝ち残っている国の中では総合的に見て力が抜けているのではないかと思うところで、
歴史に名を刻むのはドイツである可能性が高いように感じます。



(追記)どうやらフラグを立ててしまったようです...





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2016年06月20日

スペインに見る本物のボールポゼッション

鬼門とも言える初戦チェコ戦を辛くも勝利したスペインと
初戦のクロアチア戦を落としたトルコによるEURO2016グループDの試合。

共に初戦では最少得点差での決着だった両チームによる試合は
スペインがゴールを重ねて3−0でトルコに快勝しています。

なぜ大きく差がつく結果が導き出されたのかを少し探ってみたいと思います。

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初戦を落としているトルコとしては勝利が欲しく
ゴールを必要としているのでボールを持ちたいところではありますが、
ボール保持に長けたスペインを前にしてはそれは難しいと言わざるをえません。

であるならば、できるだけ相手ゴールに近い位置で奪いたいと考えるのが当然だと思いますが
それができないのが前半早々の時間帯から表れています。

ボールをできるだけ高い位置で奪いたいトルコは
ロングフィード等でボールをスペイン陣内に運ぶ事ができた暁には
全体を押し上げて狭いエリアに人数を投入してプレッシャーをかけて
その場でボールを奪い返そうとしています。

しかしながら、狭いエリアでもワンタッチツータッチの素早いパスワークで
ボールをコントロールしてしまうスペインの技術の前では
トルコはボールを奪えていませんでした。

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この日のトルコは0−0のニュートラルなスコア状況においては
スペインのセンターバックに対しては無理にプレッシャーをかけようとはしていません。

技術のあるスペインから無理やりボールを奪い取ろうとすれば
後方にリスクを抱える事になるからであり、
スペインがセンターバックに戻してボールをキープしたら
トルコは無理に追う事はせずに自陣への撤退をしています。

撤退をすることで高い位置でボールを奪う事は叶わなくなりますが、
コンパクトなブロックを作ってスペースを消せば
相手のミスを誘ったりプレッシャーをかける的を絞りやすくなり
ボールを奪える期待値は上がります。

しかしながら、バルセロナを主体とするスペインは
ボールを持たせてくれるのであれば持たされるようなサッカーにはしないというのが
この試合のキーと言えばキーになるのかもしれません。


一般的なチームであればセンターバックのところで持たされる事によって
ボールを前に進めるためのパスコースを失うところではありますが、
スペインはボールを持たせてくれるのであれば
センターバック自らがスペースを使って持ち上がる事をします。

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トルコとしてはスペインのセンターバックにボールを持たせていたはずも
その位置を上げてくるとなると背後に空けたスペースを1本のパスで衝かれる事になるので
オープンの状況を改善すべく守備をする位置を全体的に下げざるを得なくなります。

トルコの守備位置を下げさせれば恒例のブロック崩しの時間となるわけですが、
スペインはそこで相手を「縛る」事を連続させてボールを持つ意味を示しています。

センターバックの選手であれば
相手がワントップであれツートップであれフォワードの選手を見るでしょうし
サイドの選手であればやはり相手のサイドの選手を見る事になるというように、
ゾーンディフェンスでもマンツーマンディフェンスでも
ポジションによってマークする選手というのは大体決まってきます。

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マンツーマンの守備はマーク対象を絶えず捕まえられる反面で
相手の動きによって守備者が動かされてしまう欠点がある事から
現代サッカーではゾーンでのディフェンスを選択する傾向がありますが、
自分のゾーンに入ってきた選手だけを捕まようとすれば
マークに付く、棄てる、受け渡すといった判断を求められる事になります。

しかし、それはゾーンに1人の選手が入ってきた場合には効率的ではあるものの
AとB2人(以上)の選手がゾーンに入ってきた場合には対応が難しくなるはずです。

Aへのマークを選択すればBはフリーになり、BをマークすればAがフリーになるとすれば
守備者はどちらのマークにもつかずにABどちらも見れるポジショニングを取ります。

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片方に食いつけばもう片方がフリーになってピンチが広がる事を想像すれば
どちらにも食いつかないのは正しい判断になりますが、
守備者はAにもBにもマークに付く事ができない状況に陥るわけで
それが相手を「縛る」事になります。

縛られたトルコはAにもBにも食いつけないので
プレッシャーをかける的を絞る事はできなくなり、
スペインはブロックの間でクサビのパスを受けやすくなります。

dss20160620006myboard.jpg

クサビのパスを入れる事によってトルコの守備が中に寄ったら
次にはサイドにスペースができることにもなりますし、
場合によってはクサビを受けたところでターンして前を向ければ大きなチャンスになるはずです。

特に最終ラインの選手というのは背後を取られればゴールを脅かされるピンチに直結するため
対応する際には必ずそうせざるを得ない判断があります。

その判断を逆手にとって設計しているのがスペインの攻撃であり、
ボールを使って相手を「縛る」状況を各所に作った事が点差のつく結果を導いたと言えます。


とはいえ、このスペインの攻撃は今に始まったわけではなく
これまでも続けてきた事ではあります。

同じことをし続けながらも
なかなかゴールを奪えない試合もあれば今回のように点差がつく場合もあるのは
チャンスメイクが必ずしもゴールに結びつく事を保証していないからです。

それでもチームを構成する主体であるバルセロナのように
突出したストライカーが不在のチームにあっては、
この論理的なプロセスはゴールを保証してはくれないけれども
ゴールする確率は上げてくれる期待ができるのでやり続けるしかないわけです。

しかしながら、現実としてこの論理的な攻撃をするだけのボールコントロール技術と
ピッチ上で行動に移せるスキルを選手のほとんどが有しているのはスペインだけであり、
トップレベルの国々が集まっているこのEUROでも大きなアドバンテージとなるはずです。

2010年W杯におけるまさかの敗戦によって王者の座を追われた印象もありますが、
このクオリティをインターナショナルチームで保てるのは奇跡であり
スペインのEURO3連覇は非常に現実味があると感じます。






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2014年07月13日

現実以上のものを晒したブラジル

日本がグループリーグで敗退した試合を最後に
更新していなかったのですが
決してショックでというわけではなく、
時差の都合上W杯の試合を数多く見ようとすると
見るのだけで手一杯というのが正直なところです。

既に今朝には3決が行われたわけですが
決勝戦を前にして試合間隔が空いたので少し書いておこうと思います。

ここまでのW杯を見ていきますと
スペインが敗れた事でポゼッションサッカーの終焉、
それに対して攻守の切り替えを早くしたカウンターサッカーの隆盛、
またアメリカ大陸の国々が強いといった事などが
今大会のトレンドとしてあったようには思う。

しかしながら、ベスト4に残った顔ぶれを見れば
前回大会王者のスペインは不在ではあるものの
特にサプライズという程の事はなく
多くの人が予想した国々が勝ち上がってきた。

結局のところ何度もふるいにかけてみれば
本物の勝負強さを持った国だけが残るということではある。

ところが、たったの4ヶ国しか残れない準決勝で
開催国の地元ブラジルが
ドイツにまさかの1−7での大敗を喫したのは
今大会のどんなサプライズも敵わない程の衝撃だった。

ドイツの強さ自体は驚くものではなかったが、
ブラジルがここまで大きく崩れるまでは想像できなかった。

なぜそうなってしまったのかその大敗の原因を探っていくと
当然もっともな理由としては
攻守の主軸であるネイマールとチアゴ・シウバの欠場が挙がる。

ブラジルはヨーロッパのチームのように組織的とは言い難く
攻守において個人の能力に依存していたところがあったので、
その攻守の中核を担う2人がピッチから消えた事は
大きく戦力を低下させる事に繋がったようには思う。

また、その他では自国開催による過度なプレッシャーに
選手が耐えきれなかったのだとする精神面への指摘や、
単純に相対的にドイツの方が力が上だった事や
そもそものチーム作りの失敗や育成に及ぶまで
その原因は多岐に渡って指摘されているが、
これほどの大差がつく程の理由になりえるかというとどうだろうか。

確かにドイツは強かったとは思うのであるが、
今大会におけるドイツの歩みを振り返って見た時
ドイツに対してこれほどの大差で敗れたのは
1人退場者を出したポルトガルを例外とすれば
ブラジルぐらいなものである。

その辺りから少し今大会を振り返って考えてみたい。


決勝トーナメントに入ってからの衝撃がブラジルの大敗だとしたら
グループステージにおける衝撃は
コスタリカの躍進とスペインの敗退だろう。

特に前回頂点に立ったスペインの早期敗退は
今大会の流れを決定づけた。

スペインとグループ初戦で対戦したオランダは後ろを5バックにすると
ディフェンスラインを上げ過ぎに感じるくらい高く設定して
前後をコンパクトにしてその中にスペインを閉じ込めた。

ディフェンスラインを高く上げれば
その背後には広大なスペースができてしまうことになるものの、
足元でパスを繋ぐ事の多いスペインには
裏のスペースは使いきれないという判断から
思い切ってディフェンスラインを高く上げて全体を圧縮したら
コンパクトな狭いスペースの中で追いかけるハードワークをし、
ボールを奪ったら一気に
前線のファン・ペルシとロッベンに供給し続けたオランダに
スペインは大差負けする結果になった。

また、次戦でスペインと対戦したチリの場合は
ラインを上げる事でコンパクトさを保つのではなく、
前線の選手がハードワークを惜しまず
前から戻ってプレスバックする形で密度を高め
スペインからスペースと時間を奪った。

そういったオランダとチリに対して
コンディション面の不備があったのか
それともサイクルの終焉からくる劣化なのか
コンパクトなスペースを突破するだけの質が
スペイン自身に乏しかったところもある。

そのスペインの敗退からポゼッションサッカーの終焉と
カウンターサッカーの躍進という流れができあがった格好ではあるが、
ブラジル相手に大勝したドイツも
どちらかといえばポゼッション型のチームである。

ポゼッション型の終焉という大会のトレンドからすれば
ドイツもその波にのみ込まれておかしくなかった。

グループステージ初戦こそ
ペペが退場してポルトガルが1人少ない状況になったので
点差は開く結果にはなったものの、
その後対戦したガーナ、アメリカ、
アルジェリア、フランスとの試合では
ドイツはいずれも1点差内の僅差のゲームをしてきている。

それらの国々がドイツ相手にどのようにして戦ったのかを見ていくと、
ディフェンスラインの高さなどの違いはあるものの
総じて前後をコンパクトに保ってその中でハードワークする事で
ボールを動かすドイツの活動スペースを狭めていた。

ボールを持ってポゼッションを高めるチームに対しては
スペースと時間を与えないという事が求められるところで
前後をコンパクトにするという事は必須とも言える。

そのコンパクトにしたラインをどこに設定するかというところで、
ディフェンスにスピードと高い個の能力があれば
背後にスペースを空ける形でラインは高く設定するだろうし、
逆にそういった能力に欠ければラインは低く設定して
ディフェンスの背後のスペースは小さくするだろう。

どちらにせよ、そうする事によってドイツのボール回しに
制限をかけるということを各国はしており
ドイツが点差を付けて勝つという展開にはならなかった。

そうした各国の対抗策に対してドイツは
コンパクトなブロックによってスペースを消されたのであれば
後ろでボールを動かして相手を前に引き出してスペースを作り出し、
ディフェンスラインを高くしてきたのであれば
その背後のスペースを狙った。

また相手が自らボールを握ってこようとするならば
一旦引いて守備を整えて相手がボールを動かしにくい状態を作り上げて
ボールを奪ったらカウンターを機能させる、
また相手が後ろでボールを動かそうとするならば
前からプレスをかけて嵌めるなど
相手の出方に合わせる柔軟な対応をしたと言える。

足元でボールを動かして失ったらその場で奪い返して
ポゼッション状態を作り上げるというスペインからすると、
ドイツは相手の出方に対応して戦える柔軟性があり
戦い方に幅があったところが
残ったドイツと弾かれたスペインとで分けられたところはあるように思う。

ただ、柔軟に戦えたドイツもグループステージでは
ディフェンスラインを高くして試合に臨んできたガーナに対してなどは
明確にFWの選手を置かない0トップを採用した事もあり
背後のスペースを使いきれたとも言えず苦戦することになったし、
ベスト16ではハードワークでボールを奪ったら
一気にトップの選手にボールを供給してくるアルジェリアに手を焼き
延長戦にまで持ち込まれた。

負けていてもおかしくない試合は幾つかあったが、
ピンチの時にはGKノイアーの
DFかと思うくらいの広いエリアのカバーと
スーパーセーブによって救われた。

なので、ドイツがここまで勝ち残ったのは
持ち前のパスワークによる自分達のサッカーだけでなく、
自由を奪われた時に何ができるかというところで
どういった状況にも対応できる柔軟性を持ち合わせていた事、
またノイアーという特別なGKの存在が大きく
決して簡単に勝ち上がってきたわけではなかった。


そのドイツに対して
準決勝でブラジルはどのように試合に臨んだかと言えば、
試合開始序盤からフルパワーで先にボールを握って
先制点を取らんばかりに攻撃を仕掛けた。

しかしながら、ネイマールを欠いていたこともあり
ゴールを奪うまでには至らないとなると、
ブラジルの出方を見て守備を整えたドイツに
ボールを奪われて前に運ばれてしまう。

ブラジルは攻撃時にサイドバックの攻撃参加を促して
サイドバックを高いポジションに置くので
その裏にスペースができやすくボールを運ぶ入り口とされる。

そのサイドバックの裏のスペースに対してブラジルはこれまで
ボランチの1人がカバーリングに入るだけでなく
センターバックが持ち場を離れる大胆な守備で対応しており
ドイツとの試合でもそのように対応した。

しかしながら、そういったカバーリングが
相手の攻撃を遅らせるようなものではなく
ボールを取りきるような深い守備であるというのが
ひとつポイントであったように思う。

ブラジルはボールホルダーに対して
ボールを奪いきるかのように深くディフェンスをするのが特徴で
その対応でボールを取りきる事ができればよいが
失敗すれば前線から選手が戻ってくる時間は稼げないわけで、
やはりそのような守備の仕方というのは
組織で守る上でのセオリーとは異なりリスキーであった。

そうなると、攻撃的な姿勢によって裏にスペースを作り
カバーするための深い守備はかわされまた新たにスペースが生まれる。

これまでスペースを消される対応をされてきたドイツからすれば
バラバラでスペースのあるブラジルは
どんなに崩しやすかっただろうかと思うところで
そこに大敗の原因が隠れているのではないだろうか。


個人的にはブラジルは対応を誤ったのだと思う。

ネイマールとチアゴ・シウバがいないチーム状況、
またドイツと対戦してきた国々が
対抗策を講じていずれも接戦を演じてきた事からすれば
ブラジルはまずは守備から入るべきだった。

そこを間違えなければ
ここまでの大差にはならなかったと思うし
先へ進む可能性だってあったとも思うし、
3決でもこのような結果にならなかったかもしれない。

ここまで危うさを漂わせながらも結果的に順当に勝ち上がってきた事と
地元の大歓声による後押しは「現実」をかき消してしまったように思う。

その結果ブラジルは
現実の力関係以上の結果をピッチに晒してしまったように思う。

そういったブラジルの姿はどこか日本にも当てはまるところがあり
ブーメランのように胸に突き刺さる。


ドイツ代表(H)2014





アルゼンチン代表(H)2014





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タグ:w杯
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