2016年12月21日

レアルと真っ向勝負 鹿島の後ろに道はできる

決勝が約束されていたも同然の戦力を有するレアル・マドリーに、
参加する事に意義があったはずの鹿島アントラーズが挑んだ
2016FIFAクラブワールドカップ・ジャパンの決勝戦。

鹿島の躍進は開催国の日本では注目を集めるのに一役買ったものの、
南米王者アトレチコ・ナシオナルの行く手を阻んだことにより
決勝戦の勝敗への興味は失わせたように思われた。

ところが、一時はレアルを逆転するスリリングな展開にまでになろうとは
鹿島サポーターでさえも一部を除いては思ってもいなかったのではないだろうか。

鹿島アントラーズとして、日本のJリーグのチームとして、また日本サッカーとしても
確実に歴史の一部となるであろう試合がどう展開されたか見ていきます。

dss20161220001myboard.jpg


勇敢に戦う姿勢を示した鹿島

BBCトリオの揃い踏みこそならなかったものの、
レアルの破壊力ある攻撃が対戦する相手に脅威をもたらすことに変わりはない。

そのスーパースター軍団を前に、
決勝まで上がってきた鹿島がどう対峙するかが、この試合まずは注目されたところ。

大方の予想は、鹿島がゴール前の人数を増やしてレアルの攻撃を待ち構え
ボールを奪ったらカウンターを伺う展開にするものだったと思われるが、
蓋を開けてみれば鹿島は戦前に予告していた通りにレアルを相手にしても怯まず
前線からプレスをかけることでレアルから時間とスペースを削る選択をした。

dss20161220002myboard.jpg

対戦する相手チームが強ければ強いほど
ゴールを脅かされる危険が高まることから引いて守ろうとしてしまうのが常ではあるが、
鹿島はそれを良しとしなかった。

自陣ゴール前で守備をすれば
シュートブロックの飛んだ方向が悪かっただけでも失点する可能性があり、
アクシデントを排除しきれない以上は相手の強力な矛に盾で対抗することは危険を伴うが、
盾ではなく矛で立ち向かおうとすればその恐怖心がどれほどのものであるか想像に難くない。

鹿島は湧き上がるはずの恐怖心を抑えてレアルに対して矛を出すと、
その勇敢な姿勢は確かにレアルから自由を奪ったと言える。

しかしながら、プレッシングの行き着く先はボール奪取でなければならない。

鹿島のプレスはレアルから自由は奪ったものの
ファウルで止めてしまった事でレアルのリスタートから試合は再開されてしまう。

鹿島がプレッシングを効果的に機能させたのだと言い切るためには
ファウルを取られずにボールを奪うことが重要なファクターになるだろう。

リスタートによりプレッシングの機能性を失う鹿島は自陣への撤退を余儀なくされるが、
序盤はレアルのエンジンのかかりが良くなかったこともあり
人数をかけた守備によって自陣でレアルからボールを取り上げる。

ただし、レアルもその場でボールを回収しようとプレスをかけてくるので、
ここで鹿島が蹴り出してしまえば
敵陣でボールを回収することになるレアルが再攻撃へと繋げて
鹿島はボールと共に試合さえも支配される展開となっていただろうが、鹿島は蹴らずに冷静に繋いだ。

蹴らずに繋いで自らの攻撃の時間を作ることで
守備だけに追われるような試合にしなかったところに
この試合に臨む鹿島の覚悟やスピリットが感じられた。

鹿島はSBマルセロの背後へ土居聖真が流れることで反撃の起点を作ると
追い越すSMF遠藤康によってレアルディフェンスからのブレイクスルーを試みるが、
レアルも縦に横にピッチを広くカゼミロがカバーを働かせている。

dss20161221003myboard.jpg

レアルはファーストディフェンスからのオーガナイズの不完全さを
カゼミロで危機管理することで解決を図っており、
前線のタレントが攻撃に専念できるのもその存在があるからだと言える。

カゼミロのカバーリングで鹿島の侵攻をストップしたレアルがボールを再び動かし出すと
鹿島もラインを上げて高い位置でのボール奪取を試みているが、
レアルは鹿島のプレスの餌食とならないようインサイドハーフをSBの位置まで下げると、
SBの位置を上げることでパスコースを確保して鹿島のプレスを剥がしにかかる。

その際にレアルが、前線の選手をボールサイドに集めることにより
サイドで局地的な数的優位を作り出してボールを運びやすくしているのは
準決勝のクラブ・アメリカとの試合から変わっていない。

dss20161221004myboard.jpg

本来なら左サイドにいるべきはずのクリスチャーノ・ロナウドが右サイドに流れてくると
ボールサイドで明らかな数的不利に陥る対戦相手はボールを奪うことが難しくなる。

そうして敵陣へとボールを運んできたレアルは
サイドチェンジのパスを用いて左右に揺さぶりをかけると、
ブロックを形成する鹿島の守備ラインを押し下げて鹿島の選手間の距離を拡げ、
パスを通すための道を作る作業に入る。

選手と選手の間にスペースを作ったら縦へのスルーパスを狙うレアルに対して、
鹿島は中に絞ろうとする意識が強くなることからサイドにスペースを作る。

スペースの空いたサイドにボールを振ったレアルはクロスボールを入れると、
植田直通が跳ね返したボールを拾ったルカ・モドリッチのミドルシュートはGK曽ヶ端準によって弾かれるも、
ゴール前に詰めていたカリム・ベンゼマが押し込んでレアルが先制することとなった。

鹿島はディフェンスラインを上げて
ゴール前のロナウドとベンゼマのポジショニングをオフサイドにしたいところだったが、
モドリッチのシュートが放たれた瞬間ロナウドはオフサイドだったものの
ベンゼマは最終ラインの昌子源よりも手前のオンサイドになっていた。

昌子のポジショニングに問題があったのであれば正さなくてはならないし、
GK曽ヶ端がベンゼマの前に弾いたことを悔やむならば
その前のモドリッチにフリーでシュートを打たせてはいけなかったし、
モドリッチにフリーの状況を与えた事を悔やむのならば
植田のクリアはもっと遠くに飛ばさなければならなかった。

どこで対応や判断を変えていたならば鹿島は失点を免れる事ができたのだろうか、
失点の原因を突き詰めて改善していくようでないと
鹿島だけでなく
引いては日本サッカー全体の守備スキルも積み上がっていかないだろうと思う。


不足する質を補うための量を確保した鹿島の粘り強い守備

リードされて確実にゴールが必要になった鹿島はプレスを強めてボールを取り上げようとするので、
レアルはショートパスによりプレスを剥がそうとするだけでなく
ロングボールも蹴ることで鹿島のプレスからの回避を試みるようになる。

ただし、ラインを上げた鹿島はこれを跳ね返してレアルからボールを取り上げると
人数をかけた攻撃へと移行する。

鹿島の狙いはボールを運ぶのに引き続き、レアルの左SBマルセロの背後である。

ワイドに開いて横幅を作る遠藤康に土居が寄せると
SB西大伍にはインナーラップをさせることにより、
ワイドに開いたら中を衝き、中を閉じたらサイドを衝く態勢を取ってレアルに迫る。

そうしてマルセロの背後を攻略してクロスボールを折り返すと、
金崎夢生と中に絞ってきた柴崎岳とで合わせることを試みるため、
レアルも逆サイドのカルバハルが中に絞るようになる。

そこで鹿島は左SBの山本脩の位置を上げることで
その外側にフリーマンを作って厚みのある攻撃を演出するが、
鹿島の逆サイドへのパスが精度を欠くと
レアルは自陣ゴール前からカウンターアタックへと移行してくる。

鹿島の仕掛けのところでの西のインナーラップは
そのレアルのカウンターから身を守るためのリスク管理の役割も担っているわけだが、
レアルは低い位置まで下がってくるルーカス・ヴァスケスやベンゼマでパスコースを確保すると
トニ・クロースからダイレクトに最前線に残しているロナウドへとボールを供給するため、
中央へと絞りをかけていたはずの西は寄せることもままならずに
オープンスペースのロナウドへとボールを運ばれてしまう。

クロースやモドリッチから配給されるパスは距離が長くとも精度が高く、
前線に残すロナウドにピンポイントでボールを届けて鹿島を窮地に陥れる。

広くスペースを与えられたロナウドは非常に危険であったが、
鹿島は対応に当たった植田が無闇に突っ込まずに
ロナウドに時間をかけさせる対応をして味方が戻るのを待った。

ボールを持った時のロナウドが
プレーのクオリティを上げられなかったところもあったようには思うが、
すぐに滑ってシュートブロックすることばかりだった日本の選手が
焦らずに時間を稼ぐ守備対応ができるようになったところは感慨深い。

世界一のアタッカーを向こうに回して落ち着いた対応ができたことは称賛に値する。

しかし、ボールが鹿島陣内へ運ばれてしまっている事実に変わりはなく、
全体を押し上げてくるレアルに対して鹿島は押し込まれることになる。

鹿島のブロックの前方でスペースと時間を得たレアルは
今度は近い距離からトニ・クロースとモドリッチがボールを配ってくるだけでなく、
自らボールを持ち運んできたり、後ろから前方のスペースへとランニングしてくる。

特に後ろから前方へと入ってくる選手は
ディフェンスが後ろ向きでの対応になることから捕まえるのが難しいが、
鹿島は振り切られても諦めることなく付いていくことによって
パスコース及びシュートコースを消してGK曽ヶ端を助けていた。

この試合では曽ヶ端のスーパーセーブが鹿島を助ける場面を多く目にしたように感じるが、
曽ヶ端もまたコースを消してくれるディフェンスによって助けられていた側面があったと思う。

レアルの攻撃を凌ぐことができたら鹿島も反撃へと移りたいところで
やはり自陣低い位置から繋いで反撃を試みるも、
鹿島はレアルのファーストプレスはかわしながらも
その次の段階であるボールを前方に運ぼうとするところでのパスの精度が伴わず、
何度もエスケープ手前で頓挫することになる。

ようやく相手陣内深いところまで運べたにしても
ファイナルサードのところを雑にしてチャンスを潰していたように、
レアルのパス精度と比較すると
ボールを持ってからのクオリティの差は顕著であり、
鹿島の課題を浮き彫りにしていたように思う。

ところが、前半終了間際にレアルは緊張を走らせることになる。

自陣内でのレアルのプレスをかわした鹿島は
カルバハルの背後に流れてきた土居にボールを預けて反撃の起点を作ると、
下がってきた土居と前後を入れ変えるようにして後ろから上がってきた金崎が
マークを振り切ってボールを受けて自陣からのエスケープに成功する。

この場面でレアルのディフェンス陣が総じて手を挙げてアピールしていることからも
おそらく土居と入れ替わる際にトラップした金崎にハンドがあったのではないかと推測されるが
主審がファウルを取らなかったために鹿島は攻撃を続けることができた。

そこから土居によって折り返されたサイドからのクロスは一旦跳ね返されるが、
その跳ね返りを拾えたことにより今度は時間が作れてゴール前に人が揃ってくると
もう一度折り返したクロスを受けた柴崎がトラップに失敗しながらも
CBのヴァランも体勢を崩したことによりシュートチャンスを迎えて同点ゴールを決めている。

鹿島のクオリティは運の要素を巻き込む形で確保されたようには感じるが、
体力的にきつい時間帯に柴崎や西がスピードを上げてきたことや
ゴール前では金崎が相手をブロックしていたことなど
クオリティを下支えしていたのは偶発的なものだけでもなかったように思う。

だが、レアルに対してどうしても不足する質を補うためには
鹿島にとっては幸運と共に量が必要でもあったように思うところで、
この同点に至るまでの間を0−1のスコアのまま崩すことなく維持していたことが
鹿島にとって試合を面白くする大きな要因となったと感じる。


地上戦から空中戦へ 「まさか」でなかった逆転劇

1−1のスコアに戻した後半、
鹿島は前半以上に普段着のサッカーをしようとしていたように思う。

後半開始から後ろから大きく蹴り出しボールを自陣ゴールから遠ざけるとともに、
相手の背後にボールを供給してレアルを間延びさせる。

レアルにコンパクトな陣形を作らせずに
間延びした陣形の中でイーブンボールの奪い合いに持ち込むことで
攻撃及び守備を実現するのが鹿島の狙いだったと言える。

勇敢に足元で繋いだ前半とは打って変わって後半になるとロングボールを蹴ってくる、
鹿島が前半と後半とで異なる戦い方を選択したのは今回が初めてではなく
既に浦和とのチャンピオンシップでも披露している。

しかし、鹿島を知らないレアルは同点に追いつかれたことでボールを欲して
前半よりも更に前からボールを取りに来ることになるが、
周囲の状況は前半とは異なりスペースが広がっていた。

縦のコースを消しながら前に出てくるレアルのプレッシャーは脅威ではあるものの、
鹿島は簡単に蹴ってしまうことをせずに
蹴ると見せかけてプレスをいなすとスペースを使って繋いでいる。

その状況判断は見事としか言いようがないが、
この作業において最も輝きを放ったのは右SBの西大伍であった。

平然とレアルのプレスをかわしてボールを前に運ぶことを実現させると
自らも前方へと上がって攻撃に加わることで鹿島の攻撃に厚みをもたらしている。

dss20161221005myboard.jpg

サイドでボールを受けた遠藤康の判断が遅かったために攻撃は成就しなかったものの、
もし遠藤康が西へとボールを出していたら
その直後に訪れる歓喜よりも早く鹿島は歓喜に包まれていたのではないかと思う。

ひたひたと確実に背後に迫っていた鹿島の足音に気づいていたかいなかったは知らないが、
レアルはディフェンスの背後へのフィード対応において
戻りながらの対応を余儀なくされたセルヒオ・ラモスが雑に扱うと、
鹿島はそのこぼれ球を柴崎が拾いゴールにつなげている。

この日2ゴール目となる柴崎の
状況を打開した個の力が素晴らしかった事は言うまでもないが、
鹿島の戦術の上に乗っかったところに存在したゴールであり、
逆にレアルは後半の鹿島の変化を感じ取れずに
ラモスを始めとしてそれぞれが雑な対応をしたことにより鹿島の術中に嵌まり込んだ。


本気になったレアル

まさかの鹿島の逆転劇はレアルを焦らせる。

一気にギアを上げてプレーの速度を上げると、
下がってくる右のヴァスケスと左のベンゼマで攻撃のための起点を作って鹿島のプレスを回避し、
空けたスペースへと両サイドバックが追い越して上がってくることで
嵩にかかった攻撃をしてくるようになる。

ワイドに開いて幅を作るサイドバックに対して攻撃の起点を作ったら中へと入ってくるウイング、
このレアルのサイドの構成に対して
鹿島はサイドハーフとサイドバックの2対2の数的関係だけでは対応が難しくなる。

そこで鹿島はCMFの小笠原満男と永木亮太に加えて、
前線からは金崎と土居がプレスバックして
守備ラインを下げながらもボールサイドに人を集めることで対応する。

dss20161221006myboard.jpg

鹿島がボールサイドに人を集めることによって
仕掛けを難しくするレアルはボールを一旦後ろまで戻す、
または逆サイドに展開して仕掛けるタイミングを計るようになるが、
鹿島は新たなボールサイドへ切り替えて素早く寄せることでレアルを再びブロックの外へ排除しようとする。

鹿島が粘り強く左右に人を集めることでレアルに仕掛けるのを踏み止まらせるが、
何度も左右に振られることにより鹿島の守備は徐々にボールサイドへの集まりを悪くする。

鹿島の守備がばらけたタイミングで右からヴァスケスが中へと入ってくると、
対応に当たった柴崎が食らいつくも遅れて
最終的にはカバーした山本脩がヴァスケスを倒してレアルにPKを与える結果となっている。

外側から食らいついた柴崎とともに内側の小笠原とでヴァスケスをサンドして
ボックスに侵入される前に対応して失点を免れたかったところであったが、
レアルの左右の揺さぶりは前半から奮闘していた小笠原から体力を奪い
そのタイムリミットを早めていたように思う。


レアルが自ら放棄したアドバンテージ

PKをロナウドが決めて同点に追いついたレアルは一気呵成に突き放したいところ。

しかしながら、ヴァスケスが躍動して引き続き活性化している右サイドに対して
左サイドからの攻撃はマルセロから上がってくるクロスボールに依存するようになる。

幅を作る役割を完全にサイドバックへと受け渡したレアルは
後方のラモスとヴァランの間にカゼミロを落として最終ラインを3バックにし
前線に人数を割いてボールポゼッションを高めようとしていたのは明らかだった。

ベンゼマをトップに上げることによって機能を落とした左サイドは
運動量の多いヴァスケスをトップ下に配置することにより左右をカバーさせている。

dss20161221007myboard.jpg

その変化が戦術ありきだったのか
ベンゼマの運動量の低下を受けてのものだったかはわからないが
それにより鹿島の反撃に移るハードルが上がったことは間違いない。

鹿島は自陣でのレアルの嵩になった攻撃を凌がなければならないのと同時に
レアルのボール回収のためのプレスからエスケープすることが必要になる。

レアルの包囲網を突破したい鹿島は小笠原に代えてファブリシオを投入しているが、
狙いとするところは低下した小笠原の運動量を柴崎と土居で確保する事と共に
レアルの包囲網からの脱出にあったと思われるものの、
ポゼッションを高めるレアルの圧力に対してエスケープするまでには至らなかった。

ところが、80分過ぎになってレアルがヴァスケスに代えてイスコを投入すると潮目が変わってくる。

レアルの交代の隙を突いてボールを敵陣へと運んだ鹿島に対して、
自陣ゴール前まで戻っての対応を余儀なくされながらもボールを奪い返したレアルは
一気に最前線へとロングフィードを送っている。

ポゼッションスタイルへの変更に伴って前線をロナウドとベンゼマの2トップにしていたレアルは、
2対2の数的状況となっている鹿島のセンターバックとの間にボールを入れることで
個の力で2対2を制して一気に鹿島ゴールを脅かそうとする。

ロナウドとベンゼマを同数で相手にすることになる昌子と植田には大変な負担となるが
奮闘するセンターバックとGKとで難を逃れると、
カウンターから攻め切ってしまっていることによって
ポゼッションを高める時間を作れなくなったことはレアルからアドバンテージを取り上げた。

カウンターを仕掛けるレアルに呼応するように
鹿島も素早く縦に運ぶことでお互いに陣形を間延びさせることに繋がると、
その攻防で苦しくなったのは意外にもレアルの方だった。

2対2の状況でロナウドとベンゼマが思うほどの成果を挙げられなかった事で、
後ろに下がり過ぎずにミッドフィールドに選手を残した鹿島の人数をかけた攻撃に
レアルディフェンスの方が負担を重くしたように感じる。

そのような展開にあってレアルは、
鹿島陣内へとボールを運んだからには自陣へと下がることのないよう
ボールも鹿島の選手も敵陣に閉じ込めておきたい。

その強い思いがファウルに繋がったようにも感じるが、
ターンしてカウンターへと移行する金崎をラモスが倒してしまった。

既に1枚イエローカードを受けていたラモスに対して
主審がポケットに手をかけた仕草は退場を意味するものだと誰もが思ったところだったが、
カードを出さなかったことで物議を醸すことになる。

おそらくカードを出しても出さなくても議論の対象にはなったと思うが
出すか出さないかの判断する裁量は主審に委ねられていることからして
どちらの判断をするにしても毅然とした態度が欲しかったところではあった。


タイトルホルダーとして名は刻めずも 世界の人の記憶に刻まれた「Kashima」

終盤に鈴木優磨を投入した鹿島は
運動量を武器にしてボールを支配し始めるとあわや勝ち越すまでの場面を作り出す。

鹿島がレアルから金星を挙げられるとしたら
おそらくこのタイミングでゴールすることだったように思うが、
最後までフィニッシュのところで落ち着けずにクオリティを欠いた遠藤康は
ヒーローにもなりえたところでヒーローになり損ねた。

延長戦の前半に入ってしまうと、
落ち着きを取り戻したレアルがボールポゼッションを高める展開となる。

やや持ち過ぎて周りとの呼吸が合っていなかったものの
ボールをキープできるトップ下のイスコの存在は鹿島陣内でボールを回し続ける事に寄与する。

鹿島は自陣でボールを動かすレアルの隙を衝いたファブリシオが
ボールを奪ってスカスカとなっているレアル陣内までドリブルで運び決定機を迎えるが、
カウンターを仕掛けたことによって
逆にオーガナイズを乱した一瞬の隙を衝かれてブロック間にクサビを入れられると、
ベンゼマにターンまでされてスルーパスを供給されてロナウドにラインブレイクを許した。

植田と昌子は外のマークを捨ててでも中のコースを切って
イスコ側にボールを誘導すべきだった。

延長戦に入ったことにより蓄積した疲労と集中力の欠如は
鹿島のディテールを甘くしたように思う。

それでもレアル陣内までボールを運んだ鹿島はセットプレーを得ると
マークを外した鈴木優磨がヘディングで合わせてレアルゴールに迫る。

このシュートが惜しくもバーを叩いたことで鹿島はチャンスを逸すと、
延長前半終了間際にはクロースのシュートミスに反応して
カットしたロナウドにハットトリックとなるゴールを決められて白旗を上げざるを得なかった。

最後は地力の違いが出たというところだったが、
そもそもそこまで接戦に持ち込まれようとは思ってもいなかった。

レアルを本気にさせることができたら、大敗しなければ、
とにかく決勝に進出したチームとして最低限の勝負ができれば開催国の代表としては及第点だろう、
その程度だった鹿島への期待感は試合時間を追うごとに増していった。

レアルから勝利するなど発すること自体が笑われる、
そんな空気がテレビの中からだけでなく自分の中にもあったのは偽りのない事実である。

しかし、鹿島の選手は勝利を信じて疑わなかった。

その強い気持ちが延長までもつれ込む接戦を演出したのだろうと思う。

この鹿島の奮闘は、鹿島の選手にとって素晴らしい経験となっただけでなく、
レベルが低いと指摘されるJリーグに対しても
世界との差を詰められているようには見えない日本代表に対しても
間違いなく刺激を与えるものであった。

フィジカルコンタクトで戦えない、ボールを扱う技術だけしかない、
世界と比較したときには自らの劣っているところばかりが目につくものだが、
もっと頭を使ってクレバーに戦うことができれば十分戦える。

鹿島の奮闘はその可能性を認識させるのに十分だった。

日本は世界のサッカーを知っているけれども、世界は日本のサッカーをよく知らない。

相手が知らないのは、知る必要性も感じていないからこそなのだけれども、
逆にそれは日本にとってマイナスに働くことなくアドバンテージにもなる。

鹿島の奮闘はサッカー選手だけに留まらず、見ている我々をも確実に刺激している。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 03:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ACL・CWC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月22日

バルセロナが必然の戴冠 大会の存在意義に警鐘を鳴らす1強状態


ヨーロッパ王者バルセロナと南米王者リーベルプレートの組み合わせとなった
クラブワールドカップ・ジャパン2015の決勝。

予想通りの組み合わせにはなったものの、
トリデンテが揃い踏みとなったバルセロナに対して
リーベルが分が悪いというのも大方の予想だったと思います。

リーベルとしては何とかしてトリデンテを封じ込めて
数少ないであろう反撃のチャンスに期待をかけたかったところだと思いますが、
その思惑もメッシの一撃によって砕かれたように感じます。

dss20151222001myboard.jpg


リーベルのプレッシングを回避するバルサのポジション循環

バルセロナが準決勝で対戦した広州は
前線がディフェンスラインとの距離をできるだけ開けないようにして
スペースを消す事でバルセロナに対抗しようとしたわけですが、
決勝の相手であるリーベルは広州のようにスペースを消すのではなくて
バルセロナにボールを持たせる時間を与えないように前からプレッシャーをかける事を選択しました。

スペースを消して待ち構えていても
細かなテクニックを有したバルセロナの選手にいつかは攻略を許してしまうと指揮官が考えれば、
後方にリスクを背負いながらも
バルセロナのゴールに近い位置でボールを奪おうとするのはひとつの手段として妥当だと思います。

そのためにバルセロナにとっては
与えられた時間を餌にしてピッチ上で次々とスペースを生み続けた準決勝とは
異なる試合の入りとなります。

後方から繋いでボールを運ぼうとするところに
リーベルはバルサのボールホルダーであるCBそして戻したGKのところまでプレッシャーをかけると
そのプレッシャーに連動してパスコースを消してバルサ陣内高い位置でボールを奪おうとしています。

リーベルのプレスによって
バルセロナは近い距離のブスケツとサイドバックへのパスコースを消されている事から
まずはインサイドハーフのイニエスタとラキティッチが下がってパスコースを作りますが、
リーベルもセンターハーフの選手を付けてくるため
バルセロナは更に高い位置から両ウイングのメッシとネイマールが下がってきてボールを受けますが
そこにもリーベルはサイドバックがマークに付いてきます。

dss20151222002myboard.jpg

リーベルは前線からのプレッシングを機能させて嵌めようとしていますし、
縦パスが入ってきた瞬間がプレッシャーを集中させて取り囲める箇所でもあるので、
メッシやネイマールと言えども前を向くのは困難な状況となります。

ただし、低い位置まで下がってくるメッシとネイマールに
リーベルのサイドバックの選手が付いてくるためにその背後にはスペースができる事になりますので、
バルセロナはウイングが下がってきたら
入れ替わるようにしてインサイドハーフがウイングの位置に上がり、
インサイドハーフの位置にはサイドバックが移動するといった形で
同サイドのユニット間でポジションを循環させます。

ポジションの循環がされるとリーベルはバルサの選手の移動に付いていかざるを得ず、
その対応のためにプレッシャーを一箇所に集中できずにプレッシングの機能性が落ちます。

そうしてプレッシャーを弱める事に成功したバルセロナは
人の密集していない反対のサイドへボールを展開させる事で
リーベルのプレッシャーを完全に回避します。

dss20151222003myboard.jpg

プレッシングをかわされる事となるリーベルはリトリートするしかありませんので、
バルセロナはセンターバックが目の前にできたスペースを使って
自らボールを持ち運んで前進するという事になっていきます。

バルセロナはそうしたポジション循環を利用するだけでなく
後ろではGKも含めて数的優位を作っていますし、
強くプレッシャーを受けてもなかなかボールを失わないキープ力やパスワークがありますので
リーベルのプレスの効果は非常に限定的であったと感じます。


トリデンテの攻撃力でリスク管理するバルセロナ

リーベルのプレッシングを外してボールを敵陣へと運んだバルセロナは
そこからサイドに展開してファイナルサード攻略を試みます。

バルセロナの基本的な崩しのメカニズムは、
ネイマールもしくはメッシがサイドに張ったところでボールを受けて
ピッチを広く使った上で仕掛ける態勢を作り、
相手のサイドバックをアウトサイドに引きつけて
センターバックとの間にスペースを作るところから始めますので、
そこまでは準決勝と変わらないと思います。

準決勝ではそこからインサイドハーフやサイドバックが
頻繁にスペースへのランニングを繰り返して仕掛けを補助していましたが、
前線にトリデンテが揃えばMSNのイマジネーションで十分に賄えます。

ワンツーパス、カットインドリブル、スルーパスなどなど
3人のイマジネーションによるコンビネーションに委ねられますが、
リーベルもそこは絶対に通すわけにはいきませんので粘り強く守備をして跳ね返します。

しかし、バルセロナは攻撃が実らなくとも、
基本的に相手陣内までボールを運んだら最終ラインを上げて
エリアを狭めて高い位置からプレッシャーをかけてボールを敵陣に閉じ込めようとしますし、
それがバルセロナの守備の仕方でもあります。

ファーストディフェンダーとなるブスケツがプレスをかけている間に
トリデンテ以外の選手は定位置につき
ブスケツがボールをコントロールさせずにパスコースを限定させたら
パスの受け手のところにすぐさまインサイドハーフやサイドバックがプレッシャーをかける事で
バルセロナは高い確率でボールを相手陣内に閉じ込める事を可能にしています。

前線にトリデンテが揃っていれば
ファイナルサードにおける崩し作業をトリデンテに依存できる分だけ
バルサのインサイドハーフやサイドバックは前掛りになり過ぎないですみますから、
それぞれがすぐに定位置につけるためにプレッシャーをかけやすい状態が作られていると言えます。

dss20151222004myboard.jpg

リーベルとしてはそのバルセロナの鳥かごから脱出をしなければなりませんから、
それぞれが中に絞ったポジショニングを取って選手間の距離を縮め
その上でワンタッチでボールを捌く事でブスケツの対応から逃れて
バルサ陣内に大きく広がるスペースへとボールを出そうとします。

dss20151222005myboard.jpg

そうしてリーベルはカウンターへと移っていくわけですが、
リーベルは鳥かごから脱出するに当たって
ボールをキープするのに選手が距離を縮めようと中に絞りをかけているため
スペースに飛び出す際には中からアウトサイドに広がるようにしてランニングしますので、
バルセロナは自陣にまでボールを運ばれる事になっても
アウトサイドに追いこむ事でリーベルの攻撃に制限をつける事はできていたように感じます。

センターバックがサイドに向かってカバーリング対応する事でサイドに追い込んで時間を与えず、
リーベルの攻撃をコースを限定させたクロスボールだけに絞り込んでいたため
リーベルのカウンターがそれ以上脅威となるまでには至らなかったと思います。


ゲームを支配するバルセロナの攻守分業

リーベルのカウンターを未遂に終わらせる事で
高い位置での回収がならずとも低い位置でまたバルセロナがボールを持つ事となります。

低い位置でボールを持ったバルセロナはまたボトムから作り直しをするわけですが
リーベルはカウンター攻撃を仕掛けようとした事で陣形が整っている時ばかりではありません。

陣形が整っていないためにプレッシングの連動が十分でないところに
バルサはメッシもしくはネイマールが自陣まで戻ってきてボールを受けると
そこから一気にスペースの広がる縦にボールを運んで攻撃のスイッチを入れます。

リーベルはカウンター攻撃から前プレという流れになっているため
後方にはスペースができていますし、
バルセロナは前線に選手を残しているため
一気に攻守を切り替えるとなると今度はバルセロナのカウンターが発動する展開となります。

dss20151222006myboard.jpg

この攻守分業できるのがかつてのバルセロナにはなかった
現在のバルセロナの特徴であると思いますが、
プレッシングをかけたいリーベルは分業というわけにはいきませんので
そのようにピッチを縦に長く使われると
その分長距離の移動になるため体力的な消耗は大きくなります。

体力的な温存の意味もあって高い位置からのプレスは控えるようになるリーベルが
ハーフウェイ付近に守備をセットするようになると、
バルセロナには準決勝同様に「時間」が与えられる事となり
後方のセンターバックのところでは余裕ができるわけです。

ただし、リーベルの選手間の距離が保たれているところに下手に縦パスを入れようものなら
守備の網にかかってカウンターという展開に持ち込まれやすくもなってしまいますので、
バルセロナは時間的な余裕ができたセンターバックから
ロングフィードを使ってボールを運び始めます。

ロングフィードのパスでボールを運べばボールを失うリスクが増す一方で
陣形を整える時間があるためカウンターを受けるリスクは小さくできます。

そのためリーベルはカウンターを仕掛けるわけにもいかず繋いでボールを運ぼうとしますが、
繋いで運ぶためには自陣でバルセロナのプレッシャーを回避しなければなりません。

が、結局はバルセロナのプレッシャーをかわし切れずに高い位置でボールを奪われると
そこから左右に揺さぶりをかけたバルセロナが最後はメッシのゴールで先制しています。

試合開始からスコアこそすぐには動きませんでしたが
ここまでの流れは必然的でもあり、
全てはバルサの掌の上で試合は展開していたように思います。


タイトルを掲げたバルサ 深みに嵌ったリーベル

バルセロナが先制した事によってリーベルはプランの変更を余儀なくされる事となります。

ボールを奪い取らなければ何も変わらない事から
それまでのようにハーフウェイに守備をセットして
ボールを持つバルセロナを待ち構えるというわけにはいかなくなります。

ボールをより高い位置で奪うためにはプレッシャーを強めなければなりませんし
ボールを持ったらできるだけ失わないようにしなければなりません。

しかしながら、リーベルは後半早々に
ボールを保持してバルセロナ陣内まで運んだところでボールを奪われると
ブスケツから一気にスペースに走るスアレスへとスルーパスを通されて
カウンターを受ける形で失点を重ねています。

また、ボールを失わないようにするためには繋ぐしかなく
繋ごうとすればバルセロナの前プレを回避しなければなりませんが、
バルセロナは高い位置で守備を集中させてボールを奪うと
更にMSNのコンビネーションからスアレスがゴールを奪い3点差とします。

この辺りのスコアの変化も
リードされたリーベルが戦い方を変えざるを得なかったことからすれば
ほぼ必然的に近い状況であったように思います。

リーベルは3点差とされてからも
気持ちを切らさないようにプレーしていましたがゴールを奪うには至らず、
バルセロナが3−0で勝利しタイトルを掲げるという結果になりました。

リーベルは善戦したと思いますが
バルセロナとは歴然とした力の差を感じざるを得ない内容だったように感じます。

力の差を見せつけたヨーロッパ王者に対して、
南米王者は2012年こそブラジルのコリンチャンスが優勝していますが
2010年、2013年とこの大会で決勝進出を逃すようになっていますし、
今大会でもサンフレッチェ広島が決勝に進出して不思議ない準決勝の内容だったと思います。

それだけに日本をはじめとしたアジアのクラブにも
ヨーロッパ王者と決勝で対戦できるチャンスがあるわけですが、
1強他弱の状況で争うタイトルにどこまで存在意義を見出す事ができるのかという部分で
強くなりすぎたヨーロッパ王者と反対に力を落とす南米王者の間にできた差は
大会の立ち位置を難しいものにしつつあるように感じます。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 16:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | ACL・CWC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月19日

ピッチに描かれた無限のスペース 翼が折れても強かったバルセロナ


FIFAクラブW杯ジャパン2015は
サンフレッチェ広島の健闘が大会を盛り上げましたが、
準決勝でいよいよ大会の大本命バルセロナが姿を現しました。

大注目のMSNのトリデンテを形成するメッシとネイマールが
コンディションの不良で出場が見送られたのは残念でしたが、
2人を欠いてもバルサの攻撃の機能的美しさを十分に堪能できた
中身の濃い試合だったように思います。

dss20151219001myboard.jpg


バルセロナのビルドアップを支える前線からの囲い込み

ネイマールの欠場は予めアナウンスされていたため予測はついていましたが
メッシがベンチにさえ入れないのは唐突の事だったので
日本のファンからしたらスーパースターを目の前で見られない
がっかり感は少なからずあったと思います。

しかし、いざ試合が始まって見ればメッシとネイマールがいるいないに関わらず
バルセロナのサッカーに引き込まれた人もまた多かったのではないかと感じます。

試合開始直後からボールを持ったバルセロナは
日本に来てもこれまでと変わらず後ろから繋いでボールを前進させようとします。

それに対して広州恒大は
まずはハーフウェイラインを少し越えた辺りを先頭に4−4−2で守備をセットすると
ピッチ中央にポジショニングを取るブスケツをトップ下のグラルがマークしていますので、
バルセロナはビルドアップにおいてブスケツを経由しない形を模索する事になります。

ブスケツをフリーで空けてしまえばバルセロナのビルドアップはイージーなものとなるので
まずはブスケツを消しておくのは当然の措置だったと思います。

ブスケツを経由できないバルセロナが
迂回するような格好でアウトサイドからボールを進めると
広州がサイドに追い込んでボールを奪おうとするため前が詰まる事となりますから、
序盤のバルセロナは近距離から1列飛ばすようにしてボールを運ぼうとしますが
広州に対応されてボールを失います。

しかしながら、バルセロナはボールを失った直後には
同サイドのウイングとサイドバックだけでなく
インサイドハーフにワントップ、アンカーまでもがボールサイドに寄せて
ボールを持った広州の選手を素早く囲い込んで
近くのパスコースを消してプレッシャーをかけています。

dss20151219002myboard.jpg

ボールを奪いながらもバルセロナのプレスの前にパスコースの無い広州は
狭められたエリアからボールを出すために前方にクリア気味に蹴らざるを得ず、
再びボールはバルセロナの元へと戻ってきます。

バルセロナのサッカーの特徴のひとつが
この前線でボールを奪い切る集団での囲い込み戦術による守備で、
狭いエリアに投入している人数を数えれば
相手よりも多くの選手がボールサイドにいる事が分かると思います。

サイドで数的優位を作って高い位置でボールを奪い返す、
もしくは蹴らせて低い位置ながらも再びマイボールとする、
そうしてバルセロナはまたボールを保持して攻撃を始めるわけです。

何度かボトムから作り直す事を繰り返す内に相手の守備の仕方がインプットされて
バルセロナのビルドアップはスムーズなものになっていきます。

広州はトップ下のグラルでブスケツをマークしていましたので、
最前線のワントップのエウケソンとはポジショニングが横並びにならず縦関係になる事から、
バルセロナは両センターバックが横に広がってボールを動かして
横幅を作る事で広州からのプレッシャーを無効化します。

後ろでボールを動かしては広州のワントップのエウケソンを片側に寄せて
右サイドのピケをフリーにするとピケ自らボールを持ち上がって前進しています。

dss20151219003myboard.jpg

ブスケツをマークする事で中央ルートは封鎖した広州ですが、
ピケへのマークを付けようとするとサイドハーフが持ち場を離れて前方に出てくるか、
トップ下のグラルがブスケツのマークを外すか、
センターハーフが中央にスペースを空けても前に出るかしかなく、
どれを選択してもその背後にリスクを負う事になります。

dss20151219003exmyboard.jpg

リスクを負わなければピケの持ち上がりを許すしかなく、
ピケが持ち上がったその時点でバルサはサイドバックのポジショニングを上げられていますので
バルセロナのビルドアップは次のステップに向かう事になります。


ビルドアップによってポジションの束縛から解き放たれるバルサの3トップ

サイドバックを押し上げたバルセロナはサイドバックで横幅を作ると
両サイドのウイングのセルジ・ロベルトとムニルは幅を広げる役割から解放される事になります。

ウイングが自由に動けるようになると
左のセルジ・ロベルトは主に下がってボールを引き出す動きをし、
右のムニルは最前線中央寄りにポジショニングを取って
スアレスとの距離を縮めて2トップに近い状態を作ります。

dss20151219004myboard.jpg

後半はムニルが下がる場面が増えましたが
前半はセルジ・ロベルトが下がってムニルが上がるパターンが多かったと思います。

ウイングの選手が下がってボールを引き出す事で
インサイドハーフのイニエスタとラキティッチに次いで中盤に3つ目のパスコースを作りますので、
広州は2人のセンターハーフだけでは対応が難しくなります。

かと言って、セルジ・ロベルトの本来のマーカーである広州のサイドバックが付いていけば
高い位置まで上がってきているバルセロナのSBアルバにスペースを衝かれる事になりますので、
人に付く対応では付き切れない広州は
選手間の距離をコンパクト保ってスペースを小さくして守ろうとしますが、
そうしてゾーンから出て来なくなれば
バルセロナのインサイドハーフは下がった位置でボールを受ける事で
広州からのプレッシャーを受けずに済みます。

下がって受ける事でプレッシャーのかからないイニエスタは
ボールを持って前を向けていますから状況はオープンで、
じりじりと広州のブロックに迫っては狭いエリアを通す精密なスルーパスを
ディフェンスラインの裏に出してきます。

dss20151219005myboard.jpg

プレッシャーをかけなければいつかはやられる事を理解した広州は
中盤の選手が前に出てプレッシャーをかける事でバルセロナの攻撃をクローズしようとしますが、
精度の高いスルーパスを通されかけた事で広州のディフェンスラインは
スアレスとムニルの飛び出しが怖いのでラインを上げる事ができず、
プレッシャーをかけようとする中盤との間にスペースができるようになります。

dss20151219005exmyboard.jpg

一方最前線ではサイドバックで横幅を担う事で
ムニルが中に絞れてスアレスと共に広州の最終ラインを背負う形となっていますので、
ポジションから解放されるスアレスが
広州の中盤と最終ラインの間にできたスペースに下りてきてボールを受けます。

dss20151219006myboard.jpg

スアレスが下がるスペースを消そうとしたら広州は最終ラインを上げる必要がありますが、
ラインを上げたら上げたでスアレスは今度は高く上げたラインの背後に飛び出す事をしますので
広州はどのような選択をしても裏をかかれる状況になっていたと思います。


無限の連動を実現する状況判断能力と足元の技術

後ろから相手陣内深い位置まで繋いで運んだら
バルセロナにとってのゴールを奪うための最終局面を迎えます。

ファイナルサードを崩すバルセロナの武器はもちろんトリデンテの個の力ではありますが、
ボールをゴールに入れるまでの御膳立てをするに当たって
カギとなっているのがスペースランニングだと思います。

例えば、中央でスアレスが下がってボールを受ける動きに相手のCBが付いてきたら
その背後にできたスペースに対してはセルジ・ロベルトらがランニングをかけていますし、
高いポジショニングを取るサイドバックにボールを入れて
サイドに攻撃の基点を作って相手のサイドバックを外に引きつけて
ゴール前に残るディフェンスラインの選手との間にスペースができたら
すかさずイニエスタやラキティッチがランニングをかけています。

dss20151219007myboard.jpg

バルセロナの先制点の場面でも
ボールを持ったイニエスタがジョルディ・アルバにボールを預けると共に
広州のSBとCBの間にできたスペースにパス&ゴーで走ったために
マーカーであるパウリーニョが最終ラインに吸収されて
バイタルエリアを守るのが鄭智だけとなってスペースをカバーし切れず、
中央でラキティッチに時間とスペースが与えられた結果強烈なミドルシュートを打てて
GKがこぼしたところをスアレスが押し込んでいます。

また後半早々のバルセロナの追加点の場面では
スアレスが下がってボールを受ける動きで広州のCBを引き出したら、
イニエスタにボールを戻してから
スアレス自ら創ったスペースに走り込んで自作自演の形でゴールを決めています。

広州のCBとSBはスアレスにスペースを衝かれないよう中に絞るべきでしたが、
セルジ・ロベルトがフリーランをかけて広州のSBは足止めがされていましたので
それも難しい状況にされています。

更に3点目のPKを呼び込んだムニルの突破の場面でも
高い位置でブスケツがボールを奪い返したところからになりますが、
右サイドでボールを持ったムニルがSHを引きつけて
1列になっていた相手のSHとSBの間にスペースができると
自らスペースに走り込みながらアウヴェスとワンツーでパス交換する事で
広州のSBを引き出して空けたスペースに更に深く入り込んだため倒されています。

得点の場面はハイライトや動画等で見てもらえればと思いますが、
ボールを持っている持っていないに関わらず
前半から様々な形でのスペースランニングを繰り返した結果のゴールだったと思います。

ランニングをかける選手、位置、ボールを伴ったものかどうかは状況によって異なりますが、
バルセロナはボールで相手選手を引きつけてポジショニングを移動させる事でスペースを創出したら
その創り出したスペースにすかさずランニングをかける事によって
更に相手を動かしてまた新たなスペースを創り出しているわけです。

特に先制点の場面がそうなのですが、
オフザボールの形で中盤以降の選手が前方の選手を追い越していくとなると
フリーとさせるわけにはいかない広州は
センターハーフなりサイドハーフが付いていくしかありませんが、
そうする事で中盤の選手が最終ラインに吸収されるような形となるために
バイタルエリアは脆弱となります。

あちらを埋めればこっちが空き、こっちを埋めればあっちが空く、
つまりは、連動が無限に続くように
次々とスペースが作られるのがバルセロナのサッカーであると思うのと同時に、
それを当たり前に実現する状況判断能力の高さに加えて
滞りなくプレーできるだけパスとボールタッチ等の基本的な足元の技術が卓越している事が
他のチームにはなかなか真似できないところだと思いますし
バルセロナのサッカーが美しいと言われるところであると思います。


長旅でも高いパフォーマンス見せたバルセロナ
ひとり低いパフォーマンスに終始したアウヴェス


スアレスのハットトリックでほぼ試合を決めたバルセロナは
それ以降は徐々にペースダウンさせていたように思います。

スペースランニングで運動量を消費する形ではなく
途中交代でピッチに入ったサンドロ・ラミレスらが
ボールを持ったらフェイントからそのままシュートまで持って行って
個人で打開を試みる形でのチャンスメイクが増えていったように感じます。

ペースは落としていますがメリハリはついていて、
ブスケツを中心に相手ゴールに近い位置でのボール回収ができていましたから
広州にゴールを脅かされる場面というのは数える程度しかなく、
その後もバルサが広州ゴールを脅かす場面の方が多かったと思います。

そして試合はスコアを保ったまま時間が経過し
バルセロナが3−0で勝利する結果となりました。

メッシとネイマールが試合に出られなかった事は残念としか言いようがありませんが、
個の能力の高い彼らが欠場した分
かえってチームの組織としての力を存分に見る事ができたように感じます。

長い距離の遠征試合の初戦でありながらも
ピッチ上で表現してもらいたいと思う事を当たり前のようにこなしてしまう様はさすがでした。

ほとんどの選手が質の高いパフォーマンスを提供してくれただけに
ダニエウ・アウヴェスの質の低いプレーはチームで浮いていたように思います。

攻撃では後半開始早々にラキティッチがオフザボールのランニングをかけて作った
中央のスペースを使わず縦にボールを運んで前に詰まっていましたし、
守備では広州のカウンターの場面で相手に縦の突破を容易に許したり、
自陣ゴール前ではボールコントロールがままならず
相手に奪われかけてあわやのピンチを招くなど、
バルセロナのピンチのほとんどはアウヴェスのサイドからのものでした。

バルサの一員らしからぬプレーは長旅の疲れによるものだと思いたいところで、
決勝では準決勝とは違った姿のアウヴェスを期待したいところではあります。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 13:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ACL・CWC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする