2016年07月14日

災い転じて福 大黒柱の負傷交代がもたらしたニュートラル

波乱の展開が続いたEURO2016の決勝。

地元開催の期待に応えて激戦の山を登ってきたフランスに対するは、
90分での勝利は準決勝のウェールズ戦だけながらしぶとく勝ち上がってきたポルトガル。

試合前の評価は地元フランス有利と見る向きが大勢を占めていたように感じますが、
延長戦までもつれ込む接戦ではあったものの
結果は予想を覆してポルトガルが勝利しタイトルを獲得しています。

エースで大黒柱のクリスチャーノ・ロナウドを早々に負傷で欠き厳しい展開を強いられたポルトガルが
ホームアドバンテージのあったはずのフランスから勝利できたのはなぜなのかを探ってみたいと思います。

dss20160714001myboard.jpg


試合開始直後から積極的にボールをチェイスしたフランスに対して、
ポルトガルは相手にボールを持たせる事自体は許可する形でハーフウェイにブロックを作り
ボールを奪ったらクリスチャーノ・ロナウドの個の能力を活かしたいというところだったと思います。

ポルトガルはまずはフランスにスペースを与えないよう選手間の距離をコンパクトに保つと
相手が自陣内までボールを進めてくるのを見計らってからプレスを開始していますので、
ボールを奪う位置は上がらずに必然的に低くくなります。

ボールを奪う位置が低くなっても前線のクリスチャーノを走らせる事で解決できそうではありますが
走らせるためにはロングパスを出すタイミングと精度を求められる事に加えて
フランスはその場でボールを回収しようとしていますから
ポルトガルはクリスチャーノを走らせる走らせないに関わらず
まずはボールをキープしない事にはなかなか反撃へと移ってはいきません。

ポルトガルというチームを考える上ではクリスチャーノの存在は絶対であり
一にも二にもクリスチャーノの個の能力を生かしたいわけですが、
クリスチャーノの守備面での負担軽減と
逆に言えば負担を負わせることこそリスクであると考えれば
トップに配置するのがベターであると考えるのは自然だと思います。

但し、トップに配置するにしても、クリスチャーノに対して
1対2の状況を作られたりスペースを消されれば長所を消される可能性が高くなることから、
ナニを並べて2トップにする事によって相手のセンターバックと同数にして
長所が活かされやすい状況を作っていると言えると思います。

攻撃ではその2トップを後ろからサポートしながら、2トップが守備に戻れない事を想定して
守備のタスクを負える選手を配置したのが1.5列目に置かれたトップ下になるかと思います。

dss20160714002myboard.jpg

より強豪との対戦になる事から
勝ち上がるに連れてこのトップ下に守備的な選手を配置したのは
攻守のバランス感覚の見地からも当然ではなかったかと思います。

2トップ以下の中盤の4選手をフラットの形ではなく
トップ下を頂点にした菱形のロンボにすることで
2トップが不在の状況でも相手のボールホルダーに対するプレッシャーの付与と
コンパクトスペースの形成を可能にし中央を封鎖した守備ができます。

また、選手間の距離はコンパクトに保たれている事から
ボールを奪えた時には局地的に数的優位の状況が生まれている可能性が高く、
ボールを繋ぐのに十分な人を確保できてボールキープを可能にすれば
前線のクリスチャーノを活かせる道が拓けてきますから、
ポルトガルが前線を2トップにして中盤をロンボにしていたのは
クリスチャーノから逆算して導き出した最適解だったように思います。


しかしながら、ロンボの布陣はひと目見て分かるように
中央は封鎖できるけれどもアウトサイドに人がいないという欠陥があります。

ボールを持つフランスは前半序盤から
このロンボの欠陥を炙り出すようにボールを動かす事でポルトガルゴールに迫っていたと言えます。

フランスはコシェルニとウムティティの両センターバックと
ポグバとマテュイディの両センターハーフで作るスクエアでビルドアップすると
アウトサイドにワイドに広がるサイドバックにボールを預けています。

ロンボはアウトサイドに人がいないため
ポルトガルがフランスのサイドバックにプレッシャーをかけようとすると
ロンボを構成する左右のインサイドハーフが対応に当たる必要が出てきますが、
そうしてサイドに引き出されれば封鎖していたはずの中央への入り口がポッカリと穴を開けます。

dss20160714003myboard.jpg

ポルトガルのアンカー周りのスペースが露わになると
フランスはサイドバックに預けたところから中央へと侵入し、
ポルトガルのアンカーのウィリアム・カルバリョの左右に
トップ下のグリズマンと両サイドハーフのパイェもしくはシソコがポジショニングを取って
数的優位を作る形でクサビとなるボールを受けます。

dss20160714003002myboard.jpg

ポルトガルはこのアンカー周りのスペースを使われまいとして
フランスのサイドハーフに対してはサイドバックの選手が前に出て対応しますが、
前に出ることでサイドバックの裏にはスペースを作ってしまうことになり
オーバーラップしてくるフランスのサイドバックに狙われます。

dss20160714003003myboard.jpg

ポルトガルはサイドバックのポジショニングを出し入れすることで
背後のスペースを衝かれずにアンカー周りのスペースにも蓋をしていたようには感じますが、
フランスはそうしてボールを進めて攻撃をしたら
ボールを失ってもポグバとマテュイディのフィジカル能力によって
その場で回収できたらすぐさまポルトガルディフェンスの背後へボールを送り
序盤からグリズマンが何度か決定機を迎えています。

ロンボ対策と高い位置でのボール回収によって
フランスが明確にポルトガルの守備を攻略するプランを有していたところから鑑みれば、
ポルトガルがクリスチャーノの能力を発揮させるよりも前に
フランスが先制する可能性の方が高かったのではないかと推測されます。


ところが、幸か不幸かポルトガルはこの状況を放棄せざるを得ない状況に陥ります。

クリスチャーノがパイェのタックルで負傷すると
テーピングをして試合への出場を試みるも無念の交代を余儀なくされます。

ポルトガルはクリスチャーノに代わってクアレスマを投入して右サイドハーフに配置すると
ナニのワントップにした4−1−4−1へと布陣を変更しますが、
エースでキャプテンでまさにチームの大黒柱だったクリスチャーノを欠いた事は
戦力的に大幅なダウンであったことは誰の目にも明らかだったと思います。

しかし、絶対的エースを起用できなくなったことで
そこから逆算したチームを作る必要性がなくなりある意味でフラットな状況になった事は
ポルトガルが勝利する上でのターニングポイントになったように感じます。

ポルトガルは布陣上のギャップを取り払うことでサイドに人がいない状況を解消すると
インサイドでもポグバとマテュイディにはアドリエンとレナト・サンチェスが
トップ下のグリズマンにはアンカーのウィリアム・カルバリョと
それぞれのところで人数を同じにして数的不利に陥る状況を回避をするようになります。

dss20160714004myboard.jpg

それによってボールを進めるための糸口を失ったフランスは
サイドハーフの下がってボールを受ける動きでポルトガルのサイドバックを釣り出したら
ワントップのジルーをサイドに流れさせてボールを前に運ぼうとしますが、
下がってしまったサイドハーフとポジショニングが低いままのサイドバックにより
運んだ先でジルーは孤立してしまいます。

dss20160714004002myboard.jpg

効果的にボールを運ぶルートを確保できないフランスは
ジルーの高さやシソコのフィジカルを使った
ごりごりの力業で強引ながらも迫力ある状況打開を模索しますが、
それまでからすると著しく論理性に欠けた攻撃になってしまっていたというところで、
クリスチャーノの負傷退場はポルトガル以上にフランスを混乱させたように感じます。


ポルトガルからしたらクリスチャーノの負傷交代は
「災い転じて福と為す」というところだったと思います。

それでも、時間が経過して状況の変化が見えてくるようになると
フランスはポルトガルの変化に即してボールの進め方を変えています。

フランスは特に後半になるとインサイドハーフがやや引いたところでボールを受ける事で
ポルトガルのインサイドハーフを前方に引き出し
その背後にできたスペースにサイドハーフを落としてボールを受けさせると、
ポルトガルのサイドバックが付いてくることによって
更にその背後にできたスペースをポジショニングを上げたサイドバックに衝かせるようになっています。

dss20160714005myboard.jpg

それによりポルトガルディフェンスを押し下げたら
始点となったインサイドハーフが上がってきて
ポルトガルのアンカー周りにできるスペースを衝くという事を
後半のフランスは両サイドで試みています。

dss20160714005002myboard.jpg

フランスは前半ポルトガルが4−1−4−1にした直後にも同じことをしていながら
サイドバックが相手を手前に引きつけようとしてポジショニングが上がっていなかったために
相手のサイドバックの背後を衝けないところもありましたが、
前半の終盤から後半に入るとボールを受けるために下がるサイドハーフの動きに合わせて
サイドバックもポジショニングを上げてきたため
対応するポルトガルはサイドバックと共にサイドハーフも守備に追われます。

ポルトガルはサイドハーフがフランスのサイドバックへのマークの負担を負えば
ボールへプレッシャーをかけるのはワントップのナニとインサイドハーフの選手に限定され、
インサイドハーフがプレッシャーを与えるために前に出れば
その背後にスペースができるという部分で対応が難しくなります。

フランスが後半パイェに代えてコマンを投入し
コマンがこのサイドバックとサイドハーフとインサイドの
3つのポイントをひとりで移動してくると
守備をするポルトガルにとってはカオスに近い状況だったように思います。

dss20160714006myboard.jpg

そこでポルトガルはアドリエンに代えてモウチーニョを投入すると
インサイドに蓋をする事を優先させて守備をするようになります。

モウチーニョが右のインサイドハーフを務めるようになってからは
ボールホルダーに釣られないようにステイを選択したため、
フランスはボールを前方に進めるために
マテュイディがサイドに張り出すようなポジショニングを取っては
タッチライン際の前方のエヴラやコマンへとボールを入れるようになり
サイド攻撃を増やす事になっています。

dss20160714007myboard.jpg

しかし、グリズマンが動けばアンカーが動かされてスペースができれば
サイドからコマン、後ろからもポグバやマテュイディやシソコが入ってくるというように
フランスのインサイド攻めの封鎖に至るような事はなく、
ポルトガルはいたちごっこを強いられます。


劣勢のポルトガルは後半レナト・サンチェスに代えてエデルを投入します。

クリスチャーノを代えたところで1枚カードを使って
更にモウチーニョを投入していた事から既にカードが1枚しか残っておらず
ポルトガルは勝負を賭けたわけですが、
そのエデルが延長戦に入ってから決勝ゴールを決めていますから
フェルナンド・サントス監督の賭けは結果オーライだったと思います。

ここまでのところボールを持ったフランスに対して
守備対応するポルトガルの構図ばかりを書いていたのは
その攻防が複雑且つ変化をしていたからであって、
反対にボールを持ったポルトガルの攻撃というのは
良く言えば一貫性があるも悪く取れば変化に乏しいものだったと言えます。

クリスチャーノを欠いたポルトガルは
前半ボールを保持した際にはキープして全体を押し上げてフランスを自陣に引かせますが、
フランスにコンパクトな4−4−2のブロックを作って待ち構えられてしまうと
クサビとなる縦パスを入れるところで後ろから前からプレスをサンドされる形となって
ボールを失う状況に陥っています。

dss20160714008myboard.jpg

そこで、前半の途中から、特に後半に入ってからは
相手を引かせるためにボールをキープするのではなく、
ボールをGKにまで戻しながらのらりくらり後ろで動かす事によって
フランスのプレスを自陣に引き込もうとしていたと思います。

コンパクトスペースを作られては攻撃が難しくなるため
フランスを手前に誘い込んだところでディフェンスラインの前後にロングボールを蹴ることで
陣形を間延びさせてボールを動かしやすい状況を作る事がその目的だったと思います。

dss20160714009myboard.jpg

ポルトガルはそれをし続けてフランスを全体的に間延びさせる事で
その間間と背後にできるスペースを使って攻撃を繰り返しています。

それだけに単調で変化に乏しく、
フランスをヒヤリとさせる場面は作れてはいたものの
その回数は指で数えられる程度だったように思います。

しかし、そうしたポルトガルの攻撃は致命傷には至らなかったとは思うものの
ボディーブローのようには利いていたと思います。

疲労などその他のファクターがあるため必ずしもそれだけとは言い切れないけれども、
エデルが延長戦に決勝ゴールを決めた場面でスペースが与えられていたのは
全くの偶然ではなかったようにも感じます。

そのサッカーがクリエイティブではなかった事や
日程やレギュレーションに恵まれた事もあって
このポルトガルの勝利を評価しない向きもあるとは思います。

しかしながら、レギュレーションや日程は大会前から決まっていたものであれば、
ポルトガルは優勝候補の筆頭に挙げられるような実力はなく
あくまでダークホース的存在であったことからすれば
誰もが見ていて素晴らしいと感じるようなサッカーをして勝つ事を望むのは要求が過ぎると思います。

様々なところで強運を発揮したのは事実だと思いますが、
強豪国から比較すれば総合力では見劣るのを自覚して
今できる事を追求し続けたからこそ勝ち得た勝利であって
それに対してケチをつける必要性はどこにもないと感じます。

勝利至上主義であると捉えられるのかもしれませんが
個人的には正しい自己分析による身の丈に合った分相応な勝利であると思うところで、
純粋にポルトガルの優勝を祝福したいと思います。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 18:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外クラブサッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月27日

インサイド対アウトサイド

ヴィッセル神戸とガンバ大阪による関西ダービーは白熱した攻防を期待しましたが、
これからというところで退場者が出て試合に水が差されてしまったように感じます。

dss20150727001myboard.jpg


インサイドを攻略するガンバ

これまでと同様に3バックで試合に臨んできた神戸に対して
ガンバは少し布陣をいじってきています。

普段はボランチとして下がった位置からボールを配給している遠藤が
宇佐美とリンスの2トップの下にポジショニングを取ると、
サイドの大森と阿部はアウトからインサイドに寄っていますから、
この日のガンバの布陣は4−4−2ではあるものの中盤の形がロンボということになります。

ガンバがそのように中盤を変形させてきた理由は
攻守においてインサイドへ人の投入を狙ったからだと思います。

神戸のシステムは、ガンバがボールを持つと5−4−1の陣形になりますから
宇佐美とリンスの2トップに対しては3バックで数的優位を保って守れるのですが、
この数的関係性に遠藤が加わってくるとその論理は崩される事になります。

dss20150727002myboard.jpg

神戸としては3枚目のセンターバックの対応、並びに前方のボランチで挟む対応になりますが、
ガンバは中盤の底に今野、内寄りに大森と阿部を配していますので
神戸のボランチである森岡とチョン・ウヨンの2人は前方だけで手一杯ですから、
カバーリングで余らせているセンターバックが遠藤の対応をせざるを得ない。

dss20150727003myboard.jpg

そうなると神戸はセーフティにひとり余らせての守備ができませんから、
つまりは、ガンバは中盤のインサイドで数的優位を作ることによって
神戸の守備論理の破壊を画策したと言えます。

先制点の場面では、神戸のセンターバックの高橋祥平は
マークよりもカバーリングを優先させてしまって遠藤にフリーで打たせてしまっていますから、
神戸が対応ができていなかった事からすると
インサイドから攻略を試みたガンバの狙いは当たったと言えます。


アウトサイドに活路を求める神戸

遠藤の位置を上げる事によって神戸の守備論理を破壊するという事は
反対にガンバがボールを持っていない時にも使えます。

今度は神戸がボールを持った時の安定したビルドアップに対する破壊です。

神戸は3バックなのでセンターバック3人でビルドアップしますから、
最前線が2トップのガンバは数的にも足りないですし
宇佐美とリンスでは追い切れない予測が立ちます。

そこに遠藤がポジショニングを上げて前線を同数にしてチェイシングする事で
神戸は後ろでボールを動かしにくくなりますから、
ガンバは近くのパスコースを切ってコースを限定して
パスを入れてきたところでボールを奪いやすくなります。

ただし、近くのパスコースを切って狭めたエリアに誘い込める時ばかりでなく
神戸はウイングバックにパスを通す事によってピッチをワイドに使ってボールを運びます。

dss20150727004myboard.jpg

そうするとガンバはアウトサイドをカバーしきれず
後ろからサイドバックが対応に引っ張り出されますので、
その背後にスペースができたところに神戸はマルキーニョスが流れてくる、
または中盤から森岡がポジショニングを上げてくるという形で
基点を作ったサイドから更にガンバ陣内深い位置までボールを運んできます。

自陣に引くガンバに対して神戸の攻撃は基本的にはクロスボールとなりますが、
ガンバはコンパクトにして中央の密度を高めてクロスを跳ね返す対応を取っていますから
アウトサイドを棄てていたとまでは言わないまでも
ある程度アウトサイドを使われる事は仕方ないと考えていたように感じます。

インサイドを攻略してきたガンバに対して神戸はアウトサイドからという事で、
両チームの特徴が色濃く出始めていたところにアクシデントが発生します。


アクシデントで限定される神戸

前半24分にルーズボールの争いで
相馬が阿部に対してアフター気味にスパイクの裏から行ってしまった事で1発退場になり
神戸は10人での戦いを余儀なくされます。

ボールに行った結果の衝突でしたし、右利きの阿部に対して相馬は左利きですので
ぶつかった際の脚の噛み合わせも悪かったようには感じますが、
必ずしもマイボールにしなければならなかった位置と状況ではなかったですから
行き過ぎた不必要なプレーだったように思います。

この相馬の退場によって神戸は4−4−1に布陣を変更せざるを得なくなります。

4−4のブロックをコンパクトに保つ事によって守備の計算は立つ事になりますが、
この時点で神戸はリードされていますので相手からボールを奪わなければならない事からすると
最前線のレアンドロだけではチェイシングが足りないですから、
2列目から前に出て相手を牽制する事になると今度はコンパクト性を保つ事が困難になります。

ガンバは、神戸が4バックに変わった事によって
今度は遠藤がポジショニングを下げて後ろでボールを回し始めますから、
神戸はなかなかボールが奪えないという事になります。

dss20150727005myboard.jpg

ようやく反撃に移れたにしてもボールを奪う位置が低く
ガンバは後ろに人を残していますから神戸は素早い攻守の切り替えができず、
相手陣内までボールを運べた時には時間をかけさせられて中を固められているために
結局のところ神戸はピッチを広く使った攻撃を繰り出すしか突破口が見つからないわけです。

そこで左サイドバックを高橋祥平から安田に代えて
サイドからのクロスボールによる攻撃を機能させようとするわけですが、
それしかなかったというのが正直なところだったと思います。

ところが、神戸はそうした攻撃からコーナーキックを獲得すると
前半ラストのプレーで同点に追いついてしまうからわからないところ。

ただし、基本マンマークでゾーンをミックスさせてセットプレーの守備をしていたガンバは
試合の序盤にもこのゴールと同じく藤春がマーク対象者である渡邉千真に対応できず
ニアに入られてバーを直撃されていましたから、
偶発的に生まれてしまったゴールとも言い難かったように思います。


背水の神戸に迫るガンバ

前半の間に追いついたとは言え
1人少ない神戸にできることは限られたままではあります。

しかしながら、ハーフタイムを挟んで臨んだ後半
陣形は前半から変わらず4−4−1になりますが、
神戸はガンバがボールを前に進めてくると
ボールが入ってきたところに対してのプレッシャーをより厳しくしています。

前半は4−4−1で自陣に撤退して
スペースを消す対応をしましたが反撃がままならなかったですから、
後半は後ろからのプレッシャーを強めてボールを奪う位置を少しでも上げて
奪ったらすぐさま攻撃へと移れる態勢を作ったというところだと思います。

dss20150727006myboard.jpg

そうするとガンバは2トップにボールが入りにくくなりますから
リンスに代えてパトリック、阿部に代えて倉田と動く事になります。

ガンバとしては神戸がボールに食いついてくるので
宇佐美とパトリックが攻撃の基準点から動いて神戸の守備を引き出して
空けたスペースを使おうとしたのだと思います。

dss20150727007myboard.jpg

これで両チームの攻防は整った事になりますが、
神戸はマルキーニョスから三原に代えてタイトな守備を強めてはいましたが
反撃に移ってはいても周りとレアンドロとのタイミングが合っていなかったですし、
攻撃の人数が足りずゴール前ではやはりレアンドロが孤立する場面も多かったですから、
徐々に守備の面での綻びが隠せなくなってきます。

すると、最終的には遠藤がもう一度ポジショニングを上げる事によって
神戸は最終ラインのところで完全に数的不利を起こしてしまって
宇佐美にフリーでシュートを打たれてゴールされていますから、
神戸からすると最も大きなダメージは1人少なくなった事ではありましたが
最後まで遠藤の対応に悩まされたダービーマッチだったのではないかと感じます。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 14:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外クラブサッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月10日

巧みだった鹿島の攻撃 布陣変更の仙台に両面の副産物

Jリーグ2013 第2節

鹿島アントラーズがホームでベガルタ仙台と対戦。

試合は、鹿島がダヴィの2ゴールなどで
3−2で仙台に勝利した。

開幕戦はアウェイで鳥栖とドローに終わった鹿島と
こちらは開幕戦をホームで甲府と引き分けた仙台、
東日本大震災で被害の大きかった地域を本拠とする2チームが
震災から2年が経とうとするこの日に対戦。

試合前には黙とうが行われるなど
両チームにとっても特別な意味を持った試合で負けられないところ。

鹿島 仙台 フォーメーション


順序立てられて理に適っていた鹿島の攻撃

ボールが行ったり来たりの前半序盤に先にボールを収めた鹿島は
柴崎が下がってセンターバックからボールを受けてボールを動かしていくと、
ボールを動かす柴崎に
小笠原、ジュニーニョ、野沢とパスコースを作る。

これに対してこの日の仙台は今シーズンから取り入れ始めた
4−3−3の布陣で守備をセットするため、
鹿島が柴崎にパスコースを3つ作っても
仙台は中盤3人で数的同数を作り
そこに最終ラインからディフェンダーが前に出てチェックに来ると
鹿島に対して数的優位の状況を作れるので
柴崎がボールを入れたところというのが
仙台のボールの奪いどころとなる。

仙台のボールの奪いどころ

ただ、ボールを奪った仙台がGKにまでボールを戻したりすると
鹿島は2トップがボールを追っかけてくるため
仙台はGKからロングボールを蹴らされるし、
またセンターバックでボールを持っても
鹿島ディフェンスの背後へ飛び出しを図る赤嶺とウイルソンへ
ロングボールを供給するといった形での攻撃となるため
仙台はボールを落ち着かせる事ができず
主導権を握るところまではいかない。

なので再び鹿島がボールを持つと、
中央からボールを進めるのが難しい鹿島が取る手段は
ひとつは仙台と同じく
ダヴィと大迫による仙台ディフェンスの背後への裏抜けに
後方からロングパスを送る事と、
大迫がサイドに流れる事によってサイドでボールの受け手を作って
サイドハーフ、サイドバックの選手と共にボールを動かす事となる。

ロングボールに対してダヴィと大迫のオフザボールの動きも良く
ディフェンスラインの裏への飛び出し自体が脅威になっていたし、
大迫がロングボールを収められて高い位置で起点を作るなどした。

また、大迫のサイドへ流れる動きであったり
下がってボールを受ける動きというのは仙台の守備を撹乱しており、
大迫のオフザボールの動きが
セットされた仙台の守備を乱すスイッチのような役割になっていた。

鹿島はロングボールとサイドからのアプローチを試みる事で
仙台に縦と横を幅広く意識させる事をしてから
再び中央からボールを運ぼうとすると、
仙台のディフェンス陣は大迫とダヴィの裏抜けを意識することから
前に簡単に出てこれなくなる。

そうなると仙台にあったアドバンテージが消えることになり、
鹿島はボールホルダーの柴崎のボールの持ち方であったり
ボ−ルを受ける小笠原、ジュニーニョ、野沢のポジショニングによって
逆に仙台に対して数的アドバンテージを有する事ができる。

鹿島の攻撃

数的関係は前半序盤も同じだし、やっている事は同じなのだけれど、
仙台の最終ラインに縦へのケアへの意識をさせるだけで
最終ラインの選手が前に出てくるのを自重させて
鹿島は中盤でスムーズにボールを動かす事が可能になり
柴崎からパスを受けた野沢のミドルシュートなどを引きだした。

つまりのところ、仙台の陣形からも
まともにかかっては中盤中央を突破するのは難しい、
ならばロングボールとサイド攻撃を仕掛ける事によって
仙台の選手に縦と横への意識を十分に植えつけてから
中盤中央を攻略するというやり方で、
鹿島の攻撃というのは順序立てられていて理に叶っていたように思う。


リャンを攻撃のアクセントにする仙台

対する仙台の方は
まずはロングボールを使って攻撃を仕掛けていく。

ウイルソンや赤嶺に直接ロングボールを送ったり、
片側サイドに鹿島のラインを寄せておいて逆サイドにスペースを作り
逆サイドで高い位置でポジション取りをするサイドバックへと
ロングボールを使って攻撃をしていく。

そういったロングパスを用いての攻撃が一段落すると
繋いでいく仙台のビルドアップの仕方は、
リャンとウイルソンが下りてきて中盤中央でボールを動かし
その間に松下がサイドにポジション取りをすると
赤嶺、太田が中へ入ってくるといった形で、
ポジションに縛ってボールを動かすのでなく
ボールを動かすのを得意とする選手にボールを動かしてもらって
それに付随してポジションがずれて流動的になる。

仙台のビルドアップ

ポジションが流動的になり選手を捕まえにくくなるのを利用して
ボールを動かしている間に
リャンがスルスルと上がっていって
鹿島ディフェンスの背後へ抜け出しを図る、
また鎌田から縦パスを入れてそれを鹿島の最終ライン前で赤嶺が受けて
赤嶺をクサビにして上がってきたリャンに戻して
リャンがミドルシュートといった形など、
後ろでボールに触ってから上がっていくリャンを
仙台は攻撃のアクセントとしていた。

攻撃のアクセントとなるリャン


試合の展開

そのリャンの飛び出しによって仙台の攻撃が活性化を見せた直後
先制したのは鹿島の方で、
ジュニーニョが個人技で左サイドを突破して
放ったシュートがクロスバーを叩き
そのこぼれたボールを野沢が放ったミドルシュートが
仙台DFに当たってゴール前に流れたボールを
ダヴィがヘッドで押し込む。

前半を鹿島の1点リードで折り返した後半開始直後に
仙台は自陣でボールを奪ってカウンターから
ウイルソンのクロスを赤嶺が空振りしたボールを
拾った太田が絶妙なターンで青木をかわして放ったシュートが
鹿島ゴールに吸い込まれて仙台が同点に追いつく。

ところが、その直後に
鹿島は西のクロスをゴール前で受けた大迫が
こちらも絶妙なターンで渡邉広大をかわしてシュートし
ゴールを決めて再びリードする。

更にその1分後には
野沢の折り返しにニアでダヴィが押し込んで
鹿島が突き放しに成功する。

仙台は67分に鹿島の攻撃を受けて凌ぐとカウンターを仕掛けて
途中出場のヘベルチがドリブルで持ち上がって出したスルーパスに
ウイルソンが抜け出して落ち着いて決めて1点差に迫るも、
鹿島はカウンターから2失点したという事で
ある程度仙台にボールを持たせて守備を整えて
ボールを奪ったらカウンターという攻撃方法に切り替えて
リスク管理をして逃げ切ったというのが試合の流れではある。


4−3−3にする事によってできた仙台の穴

前半の鹿島のゴールはジュニーニョの個での突破が
ゴールを割るきっかけとなったように思うのと、
仙台のゴールは2得点共にカウンターによってもたらされた形ではあるが、
後半の鹿島の2ゴールに関しては少しばかり規則性も感じたところ。

2点ともに仙台は左サイドを攻略されていて
その背景には、仙台が4−4−2から
4−3−3に布陣を変えた弊害があったかなと思う。

4−4−2を採用している時は
サイドはサイドバックとサイドハーフが受け持つ形となるが
4−3−3となるとサイドバックとウイングによって
サイドを受け持つ形となる。

ところが、仙台の場合、右サイドは普段からハーフも務めて
守備力もある太田吉彰なので不安はないものの
左ウイングを務めるのは
ストライカータイプの赤嶺という事で守備力がどうしても落ちる。

それを補うために中盤にアンカーを置いて
リャンや松下がサイドをフォローしやすい環境にはなっているが
鹿島に左サイドでプレーされて寄せられてから
サイドチェンジをされたりすると
どうしてもカバーし切れない部分が出てくる。

仙台の守備

なので、赤嶺とマッチアップする事になる西大伍が
度々フリーとなる事ができる状態が
鹿島の右サイド・仙台の左サイドにはあり、
その西がフリーで余裕を持って中に入れたボールを
受けた大迫が素晴らしいターンで切り返して
ゴールしたというのが鹿島の2点目だった。

3点目は赤嶺は途中まではボールホルダーの野沢を追いかけ
ある程度追いかけたら野沢のマークを田村直也に引き渡そうとするも
田村は最終ラインを崩さずに前に出てこない。

ボールホルダーの野沢に
鹿島は前から大迫、後ろから小笠原がヘルプに来るのに対して
仙台は前述の田村にリャンがヘルプするも
CBの石川やアンカーの鎌田がスペースを埋める程度で
サイドで鹿島と仙台の間には3対2の数的関係ができる。

この状態で鹿島は更に西がサイドを上がってくるのに対して
赤嶺が守備に付いてくるということがないので、
対応していた田村とリャンは数的不利の中
更に西の存在が目に入ってきたはずで対応しきれず
小笠原、大迫と繋がれたボールは前線へ飛び出した野沢へと再び渡り
仙台は石川が出ていかざるを得なくなり
石川が空けたスペ−スにダヴィが入ってきてゴールしたというのが
鹿島の3点目となった。

鹿島の3点目


昨シーズンからの仙台を見ていると、
4−4−2の形で守備をセットして
最終ラインを高く上げてコンパクトにする事で
堅い守備組織を作ってきたが、
その分、形式ばったところがあり
攻撃においてはサイドからクロスを入れて合わせるという形が多かった。

中央で合わせるのがヘッドに強い赤嶺やウイルソンということで
そういった攻撃によってゴールも生んできたが
攻撃が単調であった事は否めなかった。

その昨シーズンを経て
今シーズンは攻撃に多様性を持たせようということだろうか、
4−3−3にフォーメーションを変更してきており
この鹿島との試合を見ても中盤でのボール回しや
リャンの飛び出しなど攻撃に変化が見られて
昨シーズン以上に攻撃面で見応えが出てきたように思うところで
そこはプラスになっている。

ただ、開幕前から不安に感じていたのは
4−3−3にすることによって
昨シーズンまでの堅守を保てるのかという部分で
その不安がこの鹿島戦で顔を覗かせたのではないかと感じた。

確かに角田や富田といった主力選手を欠いており
ベストメンバーを組めない、またACLとの掛け持ちなど
仙台が現在マイナス要素を抱えているのは間違いないところで
そのマイナス面が足を引っ張っているとも言えなくはないが、
試合を見る限りは赤嶺の裏のスペースは穴になっており
4−4−2では無かったマイナス面が
仙台に存在していることもまた確かであるように思う。


鹿島アントラーズ2013コンフィットシャツ#9大迫





鹿島アントラーズ2013コンフィットシャツ#20柴崎





ベガルタ仙台2013コンフィットシャツ#24赤嶺





ベガルタ仙台2013コンフィットシャツ#10梁勇基





banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村
posted by ピーター・ジョソソン at 14:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外クラブサッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする