2016年11月17日

山が動いた日 勝つための新たな組織の構築

W杯アジア最終予選で首位を走るサウジアラビアとの大一番に挑んだハリルジャパン。

コンディションの上がらない主力をスタメンから外す大鉈を振るって臨んだ試合は
ハードワークの対価に見合う勝ち点を与えられたと感じます。

ハリルホジッチ就任以降のベストゲームと言える内容となった試合が
どう展開されたのか見ていこうと思います。

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カメレオンになりつつある日本

前回のオーストラリア戦での日本は
相手にボールを持たせた上で守備をセットして自陣に待ち構えたのに対して、
今回のサウジアラビアとの試合では前からどんどんプレッシャーをかけています。

ボールのコントロールで器用さに欠けていたオーストラリアとは異なり、
持たせたら厄介であると判断したサウジアラビアに対しては
プレッシャーをかけることによってボール保持のための時間とスペースを削った。

ボールを保持したスタイルのサッカーでなかったオーストラリア戦直後のハリルジャパンに対しては
その消極的姿勢を非難する声もあったかと思いますが、相手があるということも忘れてはいけない。

日本人の特徴からしても、いつでもどんな相手でもボールを保持したサッカーをしたいけれども、
現時点でそこまでの技術やスキルを有していない以上
相手の状況を視野に入れたサッカーが必要になる。

ハリルホジッチが相手を分析した上で戦術を変えられる引き出しの多いタイプの指揮官であることは
アルジェリアを率いて躍進を果たした2014年のW杯で実証済みです。

オーストラリア相手にはリトリート戦術を、サウジアラビアにはプレス戦術を、
相手の特徴に沿ってそれぞれ異なる形の戦術をチームに付与しているところを見る限り
ハリルジャパンは日本サッカー協会が示している目標に向かって歩は進めていると感じます。


前後で異なる守備をしたサウジアラビア

プレス戦術で試合に臨んだ日本は
ここで勝てなければ2位以内が厳しくなる危機感も手伝って球際ではこれまでにない激しさを見せた。

オランダ人監督ファン・マル・ヴァイクに率いられたサウジアラビアはボールを大事にする傾向があるため
プレッシングがかわされてピンチを迎える場面はあったものの
日本は激しい球際と連動するプレスによりボールを奪うと攻守を切り替えて縦に速く攻めた。

サウジアラビアはトランジション時だけでなくセットされた守備においても
前線はプレッシングでありながら最終ラインはリトリートを選択しており
前後で守備の仕方が統一されていなかった。

前後が一体化しない守備はセオリーからは逸脱しており当然その間にはスペースが生まれるため、
日本は清武弘嗣や前線から下がってくる大迫勇也がバイタルエリアでボールを収めるシーンが多かった。

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サウジアラビアの最終ラインが
清武や大迫のところで潰すのではなくリトリート対応した真意は分からないも、
その理由を考えれば最終ラインに穴(スペース)を作らないことを優先したからではないかと思う。

仮にバイタルで日本の選手にボールを受けさせるようなことになったとしても、
中を閉じることによってボールをサイドに誘導し
日本の攻撃をクロスボールに限定させることができるのであれば
高さがあるわけではないのでオッケー。

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日本の場合サイドハーフが頻繁に中に入ってくるため、
かえって前に出て潰し損ねて最終ラインに穴を作って
サイドからのダイアゴナルランで穴を衝かれてピンチを拡げられるよりかはマシ、
そう判断されたようにも感じる。

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確かに日本は前半終了間際のPKを獲得するまでの間
チャンスメイクはすれどゴールは奪えておらず、
前後で異なる戦術を用いてきたサウジアラビアに守備選択の正当性を与えたようにも思う。

しかし、前線のプレスに対して後ろがリトリート対応のサウジアラビアの守備は
自陣に押し込められた日本にエスケープする機会を与えてくれる。

清武や大迫にクサビを打つことによってプレッシャーを回避した日本は
前を向いてエスケープしたら素早く縦に攻めるカウンターを仕掛ける。

またボールを失ったとしても、相手陣内まで運ぶのに伴って全体を押し上げてリスタートにも対応し、
サウジ陣内でプレス戦術を徹底した日本はポゼッションを高めた。

後ろがリトリート対応してしまえば前線からのプレスは機能性を損ねるし、
その反対に前線による単独のプレスはリトリート守備を難しくもするわけで
基本的に前後で統一されない守備を選択することはありえない。

だからこそ、チグハグな守備をするサウジアラビアに対して日本は解答を示す必要があったが、
球際の激しさとは反比例するかのようにフィニッシュシーンでは迫力を欠き
PKに至るまでゴールが叶わなかったのが現実である。


解決したい「大迫周り」

相手が前後で異なる対応をしたことによって
日本はバイタルでボールを受けやすく何度もチャンスを迎えていた。

バイタルでボールを受けてターンまでさせてもらって前を向けたのであれば
あとはゴールまで導線を引くだけだったが実際にはPK判定が助けたのであって
日本は自力で導線を引くことはできなかったことになる。

ゴールから遠ざかる原因となっていたのは
サウジアラビアの守備対応というよりも日本の攻撃の機能性の悪さであり、
そこには大迫を巡る理解の問題が横たわっていたと感じます。

サウジアラビアの最終ラインはリトリートすることによって穴ができにくかったけれども、
センターバックが原口へのカバー対応をすることによってポッカリとスペースを空ける機会もあった。

そうした機会に大迫はスペースを衝かず
手前でボールを受けようとしてチャンスを潰している。

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また、この日はポストプレーで存在感を見せた大迫ではあるが、
縦に飛び出すタイミングでロングフィードが飛んでこなかったり、
ドリブルで縦に侵入してきた原口とコースを被らせてお互いが窮屈になるようなところがあれば、
久保裕也からのクロスをニアで受けようとしながら希望するグラウンダーのパスが供給されないなど、
フィニッシュシーンにおいては連係不足を露呈させている。

大迫自身の問題だけでなく、周囲の大迫に対する理解も不足していたという印象で
相互理解が足りていないのは明らかだった。

大迫が招集されて起用されるようになってからの日が浅いことからすればそれもやむを得ず、
プレー回数を増やしていくことで本人そして周囲の理解が深まる期待はできます。

今回のパフォーマンスを継続できればおそらくはコンスタントに起用されるようになると思われるので、
既にホットラインとして確立できている清武以外との相互理解を図ることが
大迫にとってもハリルジャパンにとっても今後の課題となってくるように感じます。


チームとゲームをマネジメントしたハリル

清武がPKを決めたことにより1点リードして折り返した日本は
後半頭から久保に代えて本田圭佑を投入する。

本田投入の意図はより守備の安定を図ることと
ボールをキープすることでうまく時計の針を進める事であり、
それを期待したのは後半の日本が前半とは異なるスタイルへと転換したからだと思います。

前半の日本はプレス戦術の徹底を図り相手から時間とスペースを削ったが、
後半になると相手に対するプレッシャーは怠ることなくかけながらも
そのプレス位置を下げてサウジアラビアに時間とスペースを与える対応をしています。

前半激しくプレスした守備を90分続けようとしたら
おそらく終盤ヘロヘロになる予測がついていたことからしても、
適切なチェンジペースを行ったと言えます。

相手にボールを渡した状況でプレッシャーをかけ続け、
ボールを奪えた際にはカウンターを仕掛ける。

縦に速く攻めて追加点を伺いながらも、
逆に相手からのプレッシャーをいなしてボールをキープして時間をかけた攻撃も仕掛ける。

そうしたサッカーをするためには久保よりも本田の方が適任だったという事はあります。

ただし、後半途中からは清武に代えて香川真司を投入する采配を揮ってもいるように、
その交代はチームの機能性ということ以上に
チームの中心だった本田や香川に対してのメッセージ性もあったように思います。

「スタメンから外したからといって不要な選手というわけではない」

ハリルホジッチのそうしたメッセージが込められた起用でもあったように感じます。

長年スタメンで固定されてきた選手がクラブでの出場機会を減らし、
現在の日本代表に停滞が繰り返される未来しか描けない現状からすれば
選手起用の序列の見直しは避けられない。

しかしながら、チームを運営する上で中心選手を外す決断をするのは口で言うほど簡単ではなく
指揮官の対応次第では2度と戦力にならない可能性だってあれば、
断行するハリルホジッチにも既存の完成している品質を落とすかもしれない変革には勇気が必要である。

そうした困難な状況において苦渋の決断をし、
外した選手をベンチのまま終わらせるでもなければ
後半の遅い時間帯でなく早めに投入することでチームに必要な選手であることを認識させた。

それが良い方向に向かったとまでは言い切れないまでも、
本田と香川は盟友である長友とともに3人でチャンスメイクをして
決勝ゴールとなった原口のゴールを御膳立てしてみせた。

序列の見直しを図った最初の試合で波風を立てずにチームを機能させて勝利を掴んだという点で
ハリルホジッチはうまくチームをマネジメントしたと言える。

これからを考えるのであれば、
既に30歳を超えている本田圭佑を中心に据えるべきでないことは誰もが感じていたことだろうと思う。

ただし、完全にフェードアウトさせるのではなく
チームの中心からバックアップする存在へと立場を変えてもらい
新たに勝つための組織作りに着手するのはチームを運営する上では健全な姿であり、
今それがようやく始まったのだと言えます。

そのまま無失点で終えることができていれば
チーム内、そしてゲームとしっかりとマネジメントできたと胸を張って言えたところですが、
最後に1点返されてなおかつ攻められたところは反省点だと思います。

選手は十分に理解していると思いますが、
今後に向けた戒めとして最後に苦言を呈しておきたいと思います。






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posted by ピーター・ジョソソン at 19:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ハリルジャパン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

数的優位は適切に

今度の火曜日に行われるW杯アジア予選サウジアラビア戦の前の
ひと叩き的な位置づけで行われたオマーンとのフレンドリーマッチは日本が4−0で勝利しました。

オマーン戦に臨んだ日本のスターティングメンバーを見てもわかるように、
この試合では出場機会に恵まれていない海外組の選手の錆落としと
新戦力組が戦力となりうるか見極める場としての役割を期待していたため、
チームとしての内容がどうであったかを必要以上に取り上げる必要もないとは思います。

錆落としと新戦力のテストをしながら、攻撃では4ゴールを挙げて守備は零封した、
その結果は及第点と言えるものだったのではないでしょうか。

ただし、錆落としとテストを見越して格下とのマッチメイクがされていたことからすれば
当然に勝つことは求められていたと思いますし中身の充実も期待されたところだと思いますから、
少しだけ掘り下げて試合を見ていきます。

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5バックのオマーンと対峙する日本

ボールを持とうとする日本に対して
オマーンは後ろを5バックにして5−4−1の陣形で試合に臨んでいます。

5バックでセンターバックを3人にすることは
真ん中の人数を増やすために守備する上での強度を高めることになる、
その反面で後ろに人数を割くことにもなるため最前線もしくは中盤の人数を減らすことになる。

双方が同じ人数で試合をする以上はどこかを増やせばどこかが減ることになるのは自明の理であり、
オマーンは後ろを重たくした事によって最前線の人数を減らしていることから
日本のボールホルダーに対するプレッシャーが十分でなく、
後ろでボールを動かす吉田麻也と丸山祐市には時間とスペースが与えられた。

ただし、オマーンの守備は、
日本がボールを前へと運ぼうとすれば「縦パスは通しませんよ」となっているので、
絶えずマークを背負う状況となる本田圭佑や清武弘嗣や齋藤学の足元には
強いプレッシャーがかかることになります。

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そこへ無理に足元に縦パスをつければ、
「待ってました」とばかりにオマーンのオーガナイズされた守備に囲まれるにもかかわらず、
日本は本田の足元に付けようとするから囲まれてしまう。

ボールを持った日本がそうした状況を解決するのに当たって、
まずは背後を狙って相手の守備を引き伸ばすといった下作業を入念に行わないところがあります。

この日ワントップに起用された大迫勇也は頻繁に背後への動きを繰り返していたものの、
タイミングが合わなかったためか吉田がなかなか出さない。

ボールを失うことを恐れているのか
前線の動きに対して吉田が躊躇して出さない場面はこれまでにも見受けられますが、
相手の背後を衝くためのボールが大迫に通るか通らないかと言ったら通った方が良いけれども
試合の序盤には相手の背後を衝く姿勢が必要であると思います。

それを躊躇して、相手が狙いを定めているところにボールを送ってしまうようでは
結局は相手の守備を助けてしまうことになる。


試合を好転させたハリルの修正

シンプルに長いボールを出さずに近距離でボールを動かそうとする、
そこでも日本はオマーンを手助けしてしまっていたところがあります。

オマーンが後ろを5バックにしているために最前線が1人となっている、
その状況でボールを動かすのであれば、
距離を開けてボールを動かせば吉田と丸山の2人だけでセーフティに回せたはず。

しかしながら、オマーンが1トップで来るのか2トップで来るのかわからない状況にあったので
おそらくボランチの片方1人は後ろに下がっていつでも数的優位を作れる状態にしておこうと
事前に示し合わせをしていたのだと思いますが、
日本は試合開始から永木亮太が最終ラインまで下がって吉田と丸山とともにボール動かそうとした。

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相手が1人であるならば2人で対応すれば十分なところで
日本は3人目が手を貸す形でボールを動かそうとしていたわけで、
セーフティに動かそう、約束事を守ろうとするばかり
相手の状況がどうであるかということが抜け落ちていたように思います。

そこで、ハリルホジッチは前半7分前後の段階で
ピッチ横から永木に後ろに下がらないように指示を出していますが、
結果的にこの永木のポジショニングの変化が日本を好転させたと言って過言ではありません。

後方でのボールを回しを吉田と丸山に任せて永木が前線に上がり
パスの出し手からパスの受け手となることによって
ピッチ上でボールを持つ日本と守備をセットしたオマーンとの関係性は以下のようになります。

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日本の選手が、オマーンの中盤を構成する4人の選手の全ての間に入り込むため
オマーンの選手は各自が2人の選手を視野に捉えなければならない状況に陥る。

ボールホルダーに対して絶えずパスコースが2つある状況で
オマーンからしたらボールを持つ日本が右の選手にパスを出してくるのか左の選手が的が絞れず、
ボールをカットして反撃へと繋げることが困難になることもさることながら身動きが取れない。

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永木のポジションが上がり、この状況が作られたことによって
最大の恩恵を受けることになったのがトップ下で真ん中に位置する清武です。

動きのとりにくい相手を尻目に、
定位置である相手のCMF間から少し下がった位置であったりサイドだったりと
空いているスペースを探してはポジショニングを移動することによって
マークから外れてプレーをイージーにしています。

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日本が前半に挙げた大迫の2ゴールは共にフリーとなった清武が起点となっていることからも、
その状況を与えた永木のポジションの変化はこの試合において重要な影響をもたらしたと言えます。

本来ならばハリルホジッチが外から修正するより先に
選手自らが気づいて修正すべきであって
それが日本に足りていないサッカースキルだと思います。

初スタメンでいきなり求められても困るというのが
もしかしたら永木の正直な感想かもしれませんが、
ボランチであるならば状況を素早く読み取る判断能力が必要だと思います。

日本の先制点の起点となった清武にボールを渡したのが
特長とする高い位置でのプレスからだったところを見ても、
永木は日本では希少なボールを奪える選手でありながら
パスの出し手にもなれる可能性を秘めている選手だとは感じますので、
その両方のパートで質を上げるとともに判断スピードの向上も期待したいところではあります。


適切な数的優位の作り方

ハリルホジッチが永木の位置を修正することによって
清武がよりプレーしやすくなってゴールの生まれた日本に対して、
オマーンは直面している問題を積極的に解決しようとしなかった。

この試合が勝敗を目的としていないフレンドリーマッチであるためか
実験的要素が強いからかは分かりかねますが、
オマーンは清武を止めるための手立てを積極的には打ってきませんでした。

オマーンの守備の問題は、その5−4−1の布陣に
永木がポジショニングを変えた日本の陣形と噛み合わせれば一目瞭然です。

大迫、本田、齋藤で構成する日本の3トップに対して
5バックで対応してしまっていることです。

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数的優位を作ってセーフティに守りたいのであれば
3トップに対しては1人多い4バックで対応するのが一般的であり、
5バックで対応するのであればボールが中に入ってきた際には
その中の1人がトップ下の清武にマンツーマン気味に付いて然るべきだったと思います。

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ところが、清武への対応は中盤に任せてしまっているために、
5バックで3人に対応する格好となって人余りの状況になっている最終ラインに対して
中盤では数的不利の状況に陥ってしまっている。

そこのところを後半に修正してくるのかと思いきやして来なかったため、
日本が後半に時間を追って大迫と本田、永木、清武を下げて
岡崎慎司と浅野拓磨、小林祐希、久保裕也を投入し顔ぶれを変えても
両チームに横たわる基本的な関係性に変化は見られず、
新戦力の久保も最終ラインから離れることによって活き活きとプレーできた。

しかし、清武を下げたことで
前線を1トップ+トップ下の縦関係から2トップ気味の横関係の並びにすると、
かえってオマーンの3バックシステムに正当性を与えてしまった。

3トップで相手の5バックを背負って清武をフリーにした前半と違って、
日本の2トップに対するオマーンが3バック、サイドも含めれば4トップに対する5バックと、
過剰になっていたオマーンの最終ラインの人余りの状況が改善してしまうこととなり
日本としては相手に都合の良い環境を作ってしまったように感じます。

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齋藤から原口へとスイッチしたハリルホジッチには
リードしている状況から相手を自陣に引き込んで前方にスペースを作った上で
原口、岡崎、久保、浅野のスピードで相手の背後を衝きたかったのではないかと感じますが、
不要なまでに後ろを重たくしていた相手に対してはそれが少々裏目に出たところもあったように感じます。

後々に久保を右サイド、浅野をワントップ、
岡崎をトップ下の位置に配置替えをして機能させようとしていましたが、
清武のようには岡崎がボールを捌けずにパフォーマンスも低かったため
後半は機能性を落とした日本の姿があったように感じます。

そこは少し実験が過ぎたところはありましたが、
全体的には本田や清武の実戦感覚の把握もできたと思いますし、
永木、久保、小林祐希と新戦力が特長をアピールもできたので
及第点と言える親善試合ではなかったかと思います。






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posted by ピーター・ジョソソン at 12:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ハリルジャパン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

瀬戸際で見せた奇術師の顔

試合終了間際の山口蛍のゴールで辛うじてイラクを振り切って勝ち点3は獲得したものの、
クリエイティブに欠ける攻撃手法とギリギリの結果は
指揮官ヴァイッド・ハリルホジッチの手腕への懐疑的な見方を止めるどころか加速させたように思います。

それだけに引き続き周囲から厳しい目が注がれるオーストラリア戦は
イラク戦から内容または結果の改善が求められたところ。

その中で出した1−1のドローによる勝ち点1という結果と内容は
指揮官の続投に値するものだったかどうか検証していきたいと思います。

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ワントップに本田圭佑が起用されたワケ

この試合に臨む上でまずハリルジャパンに求められたのは
選手をどうやりくりするかということだったと思います。

アジアの選手とは体格やプレースタイルの異なるオーストラリアが相手だけに
テクニシャン以上にフィジカルコンタクトで戦える選手を起用したいところだったのに加えて、
岡崎慎司に長友佑都そして累積警告で出場できない酒井宏樹と
この試合を前にして起用できない選手が出てきてしまった。

選手起用の選択肢が狭まりやりくりが試される中でハリルホジッチが出した答えは
本田のワントップ起用と酒井高徳の右サイドバックへのコンバートと槙野智章のスタメン出場でした。

サイドバックに関しては酒井宏樹と長友が不在となって補充もされないとあれば
酒井高徳を右サイドにコンバートするしか手はなかったですし、
高さのある相手を考慮すれば槙野か太田宏介か自ずと答えは出せます。

問題は岡崎の出場が微妙だったワントップのポジションです。

考えられた選択肢は、出場に問題のない浅野、小林悠、本田のいずれかを選択するか、
もしくはコンディションが万全でなくとも岡崎を起用するか、
そもそもトップを置かないゼロトップにするかだったと思います。

順当ならば代役は浅野拓磨となるところですが、
スピードを生かすためにも切り札のジョーカーとして手元に残しておくためにも
浅野は後半途中から起用した方がベターだったと思います。

また、ここまでの予選ではコンディションの良くない選手を起用したがために
チームのパフォーマンスを落とすことにも繋がっており、
万全でない岡崎を起用することには抵抗があったように感じますし
新しい戦術をチームに落とし込む時間がないことからするとゼロトップも選択しにくい。

となると、やはり代役を立てるしかないところに行き着くように思いますが、
そこで考えなくてはならなかったのはワントップに求める役割です。

ボールを持った時のFWというのは相手の背後に対して脅威を与える役割と共に
相手を背負ってボールをキープし味方が攻め上がるための時間を作る役割があります。

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できることならどちらの役割も担える選手が理想ではあるも無い物ねだりしても無いものは無いので、
ワントップにどのような仕事を求めるのか優先順位をつけなくてはならない。

この試合の日本は自らボールを持つのではなく
相手にボールを持たせてハーフウェイまで引いたらコンパクトに守備を整えて
入ってきたクサビのパスを潰してボールを奪ってカウンターを仕掛けています。

つまりのところ、プランBのサッカーがこの日のハリルジャパンの選択であり、
守備から攻撃へスムーズに移行するためにも
前線で相手のディフェンダーを背負えて時間を作れるタイプのワントップが必要でした。

そうしたときに相手の背後への飛び出しを得意とする浅野や小林悠では適任とは言えず、
白羽の矢が立ったのが2012年以来のコンバートとなる本田圭佑だったわけです。

フィジカルで負けない本田が前線でタメを作ったら香川がフォローしてボールをキープし
時間を作っている間に両サイドの原口と小林悠が背後へ飛び出す、
この日の日本が描いたゲームプランを遂行するためには本田が適任だったし
本田しかいなかったように思います。


ハイボールを蹴らせない低いプレスライン

しかしながら、日本がボールを奪う位置を高くすれば
前線で時間を作ることに躍起にならなくてもよいはずで、本田でなくともよかったはず。

奪う位置を上げて両サイドが前線に飛び出すための距離を短くしてやれば
何も本職ではない本田をトップで起用する必要はなかったわけです。

日本はこれまでもボールを持たない時にはできるだけ高い位置でのボール奪取を模索してきましたし
それを「是」としてきたところもあったと思います。

現に識者の間でも、オーストラリア戦後には
相手にボールを持たせるのであればもっと高い位置からプレスをかけて
積極的に守備をすべきとの声が挙がっていたと思います。

守備をするセオリーに照らせばそれは正しいと言えますが、
果たして日本がプレスの位置を上げればどうなるだろうか。

プレスの位置を上げてボールを保持する相手から時間を奪ってしまったら
おそらく追い込まれるオーストラリアは繋ぐのを諦めて前方にボールを蹴り出してくる。

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しかし、高さのない日本はハイボールの処理に不安を抱えおり、
相手にボールを蹴らせることが得策とは言えない。

だからこそ、相手にボールを持たせら無理に追い込もうとせずにハイボールを自重させ
できるだけ足下でボールを繋がせてミスを誘う、
そのためにもボールを奪うためのプレスラインは無闇には上げない。

つまりのところ、プレスの位置が低かったのではなくて
確信をもって上げなかったというのが正解だったように感じます。

おそらく相手が足元でのボールコントロールに長けたよりレベルの高い相手であれば
ミスを誘おうにも誘えないので待ち構える守備を日本は選択できない。

しかし、ここまでのオーストラリアの試合を分析すれば
意識的にボールを持とうとする気概は感じるもののそれほど巧みであるわけではないので、
ハイボールを蹴らせないようにして
オーストラリアにボールを持たせた方が得策であると考えたと思います。


確信を持ってオーストラリアを「罠」にかけたハリル

だからといってただ待ち構えるのではなく、
日本はトラップを仕掛けた上でオーストラリアを待ち構えたわけです。

ハーフウェイまで全体を引いた日本は
オーストラリアのアンカーのマイル・ジェディナクの場所を基準に
本田そして香川真司がチェイスを始める。

ジェディナクへのコースを消しながらセンターバックにチェイスするため
パスコースの少なくなるオーストラリアは低い位置で幅を広げるサイドバック
またはCBとSBの間に降りてくるインサイドMFにボールを預けて次への展開を模索する。

ここで特徴的な動きをしていたのはトップ下の香川です。

最前線右でチェイスのスイッチを入れる本田に連動してジェディナクへのコースを消すと、
ボールが左に振られた際に香川は
相手のCBではなくインサイドMFの13番アーロン・ムーイへとプレッシャーをかけています。

またそれに呼応して右サイドMFの原口は相手のSBとムーイの間に立ってSBへのコースを消すと
やはりムーイに対してプレッシャーをかけているため香川とともにムーイをサンドするような格好となる。

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つまりは、日本はボールホルダーであるオーストラリアのCBに対して
ムーイへのパスコースという餌を意図的に与えながら、
すぐにその道を遮断することによってボールを奪おうとしたわけです。

そうした日本の狙いは前半5分に奏功し、ムーイを餌に罠にかけてボールを奪ったところから
クサビを受けた本田を相手が潰しに前に出てこなかったこともあって
難なく原口元気へとスルーパスが出されると先制ゴールが生まれた。

先制以前と以後で変わらない香川らの動きから判断しても
偶然生まれたものではなく完全に狙ったものであって、
ハリルの仕掛けておいた罠にオーストラリアは真正面から嵌まり込んだと感じます。


回避される「罠」

右サイドに下りてくるムーイへの安易なパスは危険と認識したオーストラリアは
左のインサイドMFマッシモ・ルオンゴを使ってボールを前に運ぼうとするも、
日本は中盤をスライドさせると山口が前に出てきてカバーする。

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幅をとる役目のサイドバックに預けようとすれば
今度は日本のサイドMFの小林悠と原口がそれぞれプレッシャーをかける。

そのためにオーストラリアはパスコースはあるのだけど
パスを出せばすぐさまプレッシャーを受ける状況に陥ります。

そこで、オーストラリアは少し無理をする形で逆サイドに展開させたり、
狙われるムーイがポジショニングを上げる、
またはムーイとルオンゴとでポジションチェンジを図ったりするなど、
ビルドアップにアイデアを持ち込んで日本のプレスの的を絞らせないようにしてボールを動かそうとする。

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ここで頑なに蹴らなくなっているところにオーストラリアの変化を感じとれるわけですが、
蹴らないためにハリルの術中からなかなか逃れられませんでした。

日本が加点することもなかったので前半の間はそれ以上状況に変化はなく、
変化が起こったのはハーフタイムを挟んだ後半になります。

後半のオーストラリアはサイドバックがポジショニングを上げると、
アンカーのジェディナクの位置を動かしてくるようになる。

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この相手の変化によって日本はサイドMFがオーストラリアのサイドバックに押し込まれ
インサイドでは捕まえるべき選手を見失うようになりボールの奪いどころが曖昧になると
オーストラリアにPKを与え失点することになる。

ムーイとルオンゴが左右でポジションを入れ替えたことに加えて
ジェディナクがポジションを移動し始めたことで誰が誰を捕まえるか混乱すると、
日本は長谷部誠がムーイを捕まえるために前に出るが
その背後で山口蛍はスライドを怠りカバーをしなかったため
オーストラリアのトップ下の23番トム・ロギッチに長谷部の背後のスペースへと侵入される。

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前半の間の長谷部と山口の位置が左右逆だった時には
山口が前に出て長谷部がスライドしてカバーするというように
それぞれの特長にあった役割が分担されていたものの、
この場面では左右が逆になっていたことからそれぞれの特長が活きなかったところがあります。

そのために日本はロギッチとの距離を近くしていた右SB酒井高徳が潰すために前に出るも
前にボールを送られてしまってポジショニングを上げていた左SBスミスに背後を取られる。

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後半のオーストラリアはサイドバックの位置を上げていたため小林悠のプレスバックも間に合わず
日本はスクランブルとなってゴール前に人を集めるも、
ファーサイドに逃げた9番ユリッチをフリーにしてしまって急いで戻ってきた原口が倒してしまった。

左サイドルートは香川と原口でサンドして封鎖し、右サイドルートは山口が潰したら
長谷部が右に左にスライドして中央のロギッチへのルートを封鎖していたのが、
後半にオーストラリアがサイドバックの位置を上げてジェディナクの位置を動かしてきたことで
日本の罠が発動しなくなったことがきっかけとなって
するべきことを見失ったことが失点に繋がったように思います。


動いてしまった試合で高さへのマネジメントをしたハリル

同点になると、日本、オーストラリアともに
ロングボールに端を発したトランジションの攻防となります。

ロングボールを蹴って全体の押し上げを図りボールを収める、
またボールを収められなくとも高い位置でプレッシャーをかけてボールを奪ってゴールに迫る。

但し、全体の押し上げを図っているため背後に大きくスペースを作るようになると
オーストラリアはロングフィードのボールを蹴ってくるようになる。

ジアヌに代えてロビー・クルーズを投入し日本の背後へ脅威を与えてきたオーストラリアに対して
日本もトランジションで対抗するも肝心なところでミスが目立ち不発に終わったことで、
左右にボールが行き交う状況でボールを収めたのはオーストラリアでした。

オーストラリアがサイドバックの位置を上げているためサイドMF原口と小林悠が押し込まれる日本は
長谷部と山口の横にスペースに蓋をするために香川がポジションを下げますが、
それにより前線が本田ひとりだけとなるため
日本は前方に広大なスペース提供することになりオーストラリアの攻撃に晒される。

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オーストラリアはここで満を持してユリッチに代えて日本の天敵ティム・ケーヒルを投入すると
終盤にはムーイに代えてマシュー・レッキーを投入し嵩になって攻撃を仕掛ける。

日本としてはボールを奪ったらカウンターを仕掛けたいのだけれども
自陣に入り込んでいるオーストラリアの選手の数が多く
すぐにプレッシャーを受けることからボールキープすることがままならなければ、
本田に預けようにもコースが1つしかないために読まれてしまっている。

日本は終盤になって負傷した小林悠から清武弘嗣、
そして本田に代えて浅野を投入してボールを奪ったら相手の背後に飛び出すことによって
オーストラリアのボールポゼッションから脱出を試みる。

浅野の飛び出しはほとんどがオフサイドとなってしまったものの
相手に対して背後へ脅威を与えることに成功しており
もっと早くに投入すべきだったようには感じます。

それを早期に決断しなかったのは
危険な間延びを回避する事と交代枠を残しておくことにあったと思います。

オーストラリアのポゼッション状態を脱出するのに当たって、
縦に速く急いでしまえば相手が前方に残った状態で日本は前後が分断されるので
もしその攻撃でボールを失うようなことになれば守備に戻るのが遅れて危険を招くことになる。

だからこそ、日本が攻撃するためには相手を一旦引かせたく
そのためには前でボールを収められる本田を簡単に外すわけにはいかなかったように感じます。

そしてアディショナルタイムに原口に代えて丸山祐市を投入して
スコアを保ってドローのまま試合を終えるわけですが、
おそらく日本がリードされている展開でもなければ丸山の投入は確定していたと思います。

終盤のオーストラリアの放り込みに対して
高さで簡単に負けないようにするためにも必ず丸山枠を残しておきたかったところで、
負傷者の出ることも想定した結果、交代が遅れたところがあったように感じます。


あとがき

すでに1敗している日本にとっては勝ちたい試合だったけれども
アウェイで首位オーストラリアとの試合であったことからしたら納得できる結果だったと思います。

結果は概ね納得できるものであるならば内容はどうだったのかが問われるところですが、
ボールを持たないで引いて守備をするこの試合の日本の振る舞いに対して
批判の声はやはり挙がっているかと思います。

しかし、この試合でのハリルホジッチは
ボールを保持するスタイルへの転換期にあるオーストラリアの弱点を見抜いた上で
能動的にボールを持たない選択を日本にさせています。

それはボールを持つオーストラリアに対して「罠」を仕掛けておいたことからも明らかです。

1−1のドローという結果が満足できないならば理解もできますが、
分析して相手のウィークポイントを突きながら日本のウィークポイントには蓋をした
その中身のどこに批判するべきところがあっただろうか。

うまくいかないからといって全てにおいて批判ありきの姿勢では
日本サッカーは進歩していかないように感じます。

日本人が思い出さなければならないのはザックジャパンの失敗で、
いくらボールを回せたとしても
それだけでは違った展開にされたときに大きな問題となって日本に降りかかるからこそ
プランAだけでなくBも用意しておかなければならない。

今の日本代表のメンツで、かつてのバルセロナのようにボールを回し続けられるのかと言えば
そのような展開で試合を進めることはできるかもしれないけど90分通しては無理であって、
日本の得意とする展開に持ち込めない時にはそれ相応の処し方をしなければならない。

ここのところのハリルジャパンは前線で核となる選手が試合に出場できておらず
肝心なプランA部分で錆びつきを見せているのが気になりますが、
プランBでオーストラリア相手に勝ち点1もしくはそれ以上の結果も得られたかもしれなかったことは
これまでひとつのことしかできなかっただけにポジティブに考えてよいと思います。

今後ハリルホジッチは日本代表の指揮官として
請け負ったタスクであるプランBの構築を進めるとともに
プランAの錆落としに対しても解決策を示さなくてはならないですし、
変化する状況を選手自身がピッチの中で判断できるよう
スキルを高める手助けをしなければならない。

やらなければならないことは山積していると言えますが、
少なくともこの2連戦において
ハリルホジッチの解任を判断するまでの材料は示されなかったと感じます。






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posted by ピーター・ジョソソン at 16:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ハリルジャパン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする