2016年06月01日

ビッグイヤー獲得ならずも 際立った右脳的シメオネの左脳的采配

オフにEUROを控えているのでこれで最後のイメージはありませんが、
今シーズンのヨーロッパサッカーの最後を飾るUEFAチャンピオンズリーグ・ファイナル。

一昨シーズンに続いてのレアル・マドリーとアトレチコ・マドリーによる
マドリード・ダービーとなっただけに目新しさはありませんが、
PK戦までもつれ込んだ決勝の模様を見ていきたいと思います。

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オールラウンド対スペースコントロール

大方の予想通りに守備を整えるアトレチコに対してボールを握るレアルで展開する試合。

アトレチコのコンパクトな4−4−2の陣形を前にしてボールを持ったレアルは
両サイドバックのポジショニングを上げて横幅を作ると両センターバックも開いて距離を置き、
その間でカゼミーロとモドリッチとトニ・クロースから成るインサイドハーフが
主にボールを動かす役割を担って後ろからビルドアップしていきます。

レアルとしては整った陣形を崩すためにも
そこからクリスチャーノとベンゼマとベイルの前線の3トップに
クサビとなる縦パスを入れていきたいところですが、
選手間の距離を等しく保っての中央圧縮と左右のスライドさせる守備をする
アトレチコのコンパクトな陣形はそれを許してはくれないので、
主に横幅を使ってボールを動かして縦に運ぶための隙間を拡げる作業をしつつ
時間の作りやすいサイドから縦にボールを運ぶ事になります。

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アトレチコからすると中を閉める事でレアルがサイドに逃げたら素早く全体を横にスライドさせて
スペースを狭めたところに人を投入する事でボールを奪おうとするわけですから、
レアルが縦に入れてきたタイミングがボールの奪いどころとなり攻守交代の機会となります。

レアルからボールを取り上げる事ができたアトレチコは
ボールをキープするのにはショートパスを使いますが
運ぶに当たってはロングボールを蹴ります。

ロングボールを蹴ればボールを失う可能性は高くなるものの
蹴る事で全体の押し上げを図れればアトレチコは整った陣形を崩さなくてすみます。

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選手個々の質ではレアルに敵わないアトレチコにとっては
4−4−2の10人から成る組織をひとつにしてドライブさせる事で
スペースを支配するのがその対抗する手段でありますから、
例えボールを失う可能性があったとしても
基本的には陣形を崩さずに運べるロングボールを選択します。

ロングボールを蹴ったら全体を押し上げ、
ボールを失ったら押し上げたゾーンによりプレッシングをかけて
できるだけ高い位置でボールを回収してアトレチコは相手ゴールに迫ろうとします。

そうしたアトレチコの思惑に対して、
イーブンボールであると言えども自陣に押し込められる格好となるレアルが
ボールを前方に運ぶためには
ロングボールと共に押し上げられたアトレチコのゾーンを突破しなければならない。

そこでレアルはワンタッチで素早くボールを動かす事であったり、
ディフェンスの背後に飛び出すベンゼマにボールを預ける事であったり、
またはベイルら個人のドリブルによってアトレチコのプレスを回避して
ゾーンからのエスケープを図ります。

エスケープするレアルは3トップでアトレチコの守備が整わない内に攻め切ろうとしますが、
アトレチコは敷いたゾーンで奪いきれないと判断したら
レアルに時間をかけさせることによって帰陣する時間を作り
今度は低い位置にブロックを整えてスペースを消します。

時間をかけさせる事でレアルの攻撃が遅攻となれば
スペースを消す事によってレアルの選手をブロックの外に追い出し、
レアルがボールを後ろに下げる機会がやってきたら
アトレチコはそのタイミングでディフェンスラインを上げてボールを奪う位置を上げます。

個の能力で勝るレアルはポゼッションにカウンターとどのような展開にも対応できますが、
アトレチコはスペースを支配できなければ対抗するのは難しく
そのために約束事に縛られて戦い方が限定されるところはあるわけですが、
レアルから自由を奪えるだけ整えられた組織力はヨーロッパでも随一だと思います。


レアル先制で一変する試合展開

90分で決着するかわからないカップ戦の
しかも決勝戦ともなれば慎重な立ち上がりになりがちですが、
試合は前半早々からスコアが動く事になります。

ボールを保持したレアルが縦にクサビを入れたところで
プレッシャーをかけたファンフランがベイルをファウルで倒した事でレアルにセットプレーが与えられると、
クロースのキックをニアでベイルがバックヘッドで逸らしたボールを
セルヒオ・ラモスが押し込んでレアルが先制します。

クロースの正確なキックと競り合いを制してゴールに押し込んだラモスの力強さもさることながら、
バックヘッドで先に触ってゴール前にボールを送り込んだ
ベイルのポジショニングが秀逸だったと思います。

このラモスのゴールでスコアが動いた事により試合展開は大きく舵が切られる事になります。

それまではレアルにボールを持たせてスペースの支配から勝利を目指していたアトレチコですが
先制を許した事によって待ち構えているわけにはいかず、
またロングボールを蹴っていたのではボールを失う可能性も高めてしまうので
一転して自らボールを握る展開にならざるを得なくなります。

ロングボールを蹴る事からショートパスを繋いでボールを運ぶ事となるアトレチコは
左サイドハーフのコケを中央低い位置に落としてボールを動かし始めると、
入れ替わるようにしてガビを高い位置に上げて
左サイドバックのフィリペ・ルイスのポジショニングを上げます。

ボールを握って前掛りになり始めたアトレチコに対して
レアルの方は先制すると時間の経過とともにロングボールを蹴るなどしてリスクを負わずに
割り切ってカウンターへとシフトさせていたところもあり、
4−3の形で低い位置まで引いてアトレチコにボールを持たせていますから
スコアが動いて以降はそれまでとは逆の展開へと切り替わっていきます。

スペースを支配することに基づいてチームがオーガナイズされているアトレチコにとっては
非常にまずい展開になったと言えますが、
ボールをアトレチコに持たせて引いたレアルの守備にも問題があります。

最終ラインが4人その前方の中盤が3人で形成されるレアルの4−3の守備は
中央圧縮と横スライドするアトレチコの守備と比較すると横幅をカバーするのに十分ではありません。

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アトレチコはその十分でないレアルの横幅の欠損を炙り出すかのように
横の揺さぶりと中央にクサビの縦パスを入れる事で
レアルの選手をボールに寄せてサイドにスペースを作ると、
スペースと時間を得る事でサイドからタイミングを計ってクロスボールを入れます。

アトレチコから時間とスペースを削りたいレアルが
全体をボールサイドに詰めれば逆サイドにスペースができ、

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クロスボールに備えてセンターバックがゴール前にステイすれば
サイドバックとの間にニアスペースができます。

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つまりのところ、4−3で守備をすれば
ボールサイドに詰めても詰めなくてもレアルは問題を抱える事になるわけですが、
前半のレアルはサイドバックがボールサイドに詰めたり詰め過ぎなかったり
またはカゼミーロがニアスペースを埋めたり埋めなかったり
その場その場で適切な状況判断をする事によって生じる問題の解決を図っています。

右サイドのベイルの守備への貢献もあってアトレチコの攻撃を凌いだら
その次にはレアルにはカウンターを期待するわけですが、
先制した後はギアを落としているところもありカウンター等でゴールを脅かす事もなく
前半は1−0のスコアを保って折り返します。


レアルのウィークポイントを衝いたシメオネ・アトレチコ

攻勢に出ながらもゴールへと辿り着けなかったアトレチコは後半
アウグスト・フェルナンデスに代えてカラスコを左サイドハーフとして投入すると、
グリズマンを右サイドハーフの位置に下げてコケとサウールをインサイドの高い位置に上げて
布陣を4−4−2から4−1−4−1へと変更します。

守備の枚数を減らして攻撃に人数をかけるのでリスクを負う形にはなりますが
ビハインドを追っている状況ではやむを得ません。

但し、闇雲に攻撃の枚数を増やしたのではなく
アトレチコが狙うのはレアルが抱える4−3の守備のサイドの脆弱性です。

ベイルが守備をするとは言え、7人で守備する事の多いレアルの守備では
アトレチコのように横のスライドをしても完全には横幅はカバーできず、
上述したようにボールサイドに詰めれば逆サイドが空き
センターバックが詰めずにステイを選択すればニアのSBとCBの間にスペースができます。

前半のレアルはサイドバックとカゼミーロの適切な判断によって
ファーとニアどちらも半分蓋をしていたわけですが、
アトレチコが後半になって布陣を4−1−4−1にする事によって
横幅を広く使ってサイドで時間とスペースを得ると同時に
レアルのSBとCBの間のニアスペースを確実に衝いてくるようになると
曖昧なポジショニングの判断だけでは対応が利かなくなります。

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レアルのCBはクロスボールに対応するためにゴール前を動けないので
ボールサイドに流れるサイドバックとの間には確実にスペースを生みますから、
布陣を変更してそこを確実に衝いてくるアトレチコの選手を封じるには
アンカーのカゼミーロが埋めざるを得ませんが、
カゼミーロがバイタルを離れれば中央は脆弱となります。

後半早々にレアルはアトレチコにPKを与えていますが、
やはりこの場面でもカゼミーロがニアスペースを埋めた状況が絡んでいます。

アトレチコはガビがボールサイドに流れる事によって
サイドで数的優位を作って密集地帯を突破しグリズマンが中央へと侵入してきますが、
レアルはカゼミーロが最終ラインに入ったために
バイタルをカバーするのがモドリッチひとりとなっており、
グリズマンにクサビの縦パスを入れられると
受けようとしたトーレスをペペが無理に潰すような結果となっています。

アトレチコは布陣を変更する事で
レアルの守備を支えているカゼミーロを自ら動かしてチャンスを作り
その結果PKを獲得していますからシメオネの狙いは確かだったわけですが、
PKをグリズマンが外す事は想定外でありアトレチコは同点の機会を逸します。


アトレチコのお株を奪う全員守備を披露するも自ら隙を作ったレアル

アトレチコの布陣変更により
4−3の守備では崩されるのは時間の問題と悟ったジダン・レアルは
低い位置での守備を止めて高い位置にゾーンを作っての守備を画策します。

GKから大きく蹴って全体を押し上げて
自陣ゴールから遠いところで守備をすることによって問題の解決を図ろうとしたわけです。

そうするとレアルの高い位置で作るゾーンを突破しなければならないアトレチコも
再びロングボールを蹴って全体の押し上げをしますので
お互いにロングボールを拾う、押し返すの争いになりますが、
布陣を4−1−4−1に変えているアトレチコは前半とは異なりゾーンに脆弱性を抱えています。

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アンカー周りにスペースを作ってしまっている事で
アトレチコはクサビを打たれやすくドリブルで運ばれやすくなっており、
特にスペースを縫うようにして運んでくるレアルの選手のドリブルに対しては無防備だったと感じます。

ボールを運びやすくなったレアルがアトレチコ陣内に入ってボールを動かしていくようになると
アトレチコは守備に追われるようになり、
自陣でボールを奪っていざ攻撃に出る時には押し上げに時間がかかってしまっています。

横幅を広く使うのとニアスペースを衝く攻撃をするのに
インサイドハーフが上がってくるのを待たなくてはならないとなると時間ができますので、
レアルはアトレチコが攻撃に時間がかかる状況を利用して
両サイドのベイルとロナウドに帰陣を促します。

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両サイドに帰陣する事を求めて4−5の9人
もしくはベンゼマも含めれば4−5−1の10人で守備をすれば、
サイドで相手に時間とスペースを与える事なく
ニアにスペースを作らずバイタルも空けない事を実現するわけで、
つまりのところレアルはアトレチコの全員守備のお株を奪って
アトレチコの攻撃におけるアドバンテージを消したわけです。

残りの時間をそれで乗り切れると判断したジダン・レアルは
運動量の厳しくなったクロースからイスコにスイッチすると
続けてベンゼマからルーカス・バスケスにスイッチすることで
ロナウドをワントップに据えて引いた時の4−5の9人での守備を確保します。

ところが、アトレチコがアンカー周りにスペースを作っている事で
ボールを運びやすく攻撃しやすい状況は
基本的には攻撃したいレアルにとっては餌になってしまったように感じます。

レアルはアトレチコ陣内でボールを持って追加点を狙いますが
攻撃する事に傾倒して陣形を崩して高い位置で作ったゾーンを自ら脆弱にすると
カラスコに単独でゾーンを突破されます。

カラスコをファウルで止める事で時間をかけるもロナウドとベイルが戻ってこられず、
レアルは4−4の8人での守備でアトレチコの攻撃に対応する事になります。

レアルは右サイドハーフの位置に入っていたバスケスを最終ラインに下げて
クロスボールに備えてファーを埋めつつバイタルにカゼミーロを残して対応しますが、
アトレチコのフアンフランがサイドから中に侵入する構えを見せながら
ガビとのワンツーでもう一度外を使ってきた事により
食いついたマルセロがかわされてラモスがサイドに引き出されると
右サイドの突破に成功したフアンフランの折り返しにカラスコが合わせてアトレチコが同点に追いつきます。

9人もしくは10人で守備ができていればアトレチコにサイドで時間とスペースを与えず
且つカゼミーロがニアスペースを埋めたにしてもバイタルが脆弱になる事はなかったはずですから
追加点を取る事を捨てて守りに入っていればレアルは逃げ切る事が可能だったと思いますが、
それをしなかったのはレアルの品格だったのか慢心だったのか判断しかねるところ。


PK戦を制したのはレアル ビッグイヤーを逃したアトレチコ

同点に追いついたアトレチコは勢いをかって逆転といきたいところですが
失点のリスクを考慮して4−1−4−1にしていた布陣を
同点に追いついた直後から試合開始当初の4−4−2に戻しています。

ビハインドの状況ではリスクを負わざるを得なかったけれども、
同点に追いついた以上はもう一度イーブンの状況に戻して
失点のリスクを下げておきたかったかと思います。

但し、陣形を戻した事とレアルがバスケスを投入して守備をさせていた事により
アドバンテージを失ったアトレチコの攻撃は徐々に手詰まりとなります。

また守備をする際にも、アンカー周りのスペースは消したけれども
試合開始当初と比較して失った選手の運動量は元に戻らず
横への素早いスライドが叶わないことから
サイドで時間とスペースを得るレアルはクロスボールを飛ばしたり侵入を図ってきます。

アトレチコとしては同点に追いついて試合開始当初のイーブンの状況に戻したかったわけですが
陣形を戻した時にはすでに元の状況に戻れる状態ではなく、
運動量の低下から十分な横スライド対応ができないので中央を圧縮した守備へとシフトし
真ん中を固める事で最後のところで跳ね返してスコアを動かさず延長へと突入します。

延長戦に入ってからも途中交代でスタミナを残すカラスコの突破が
アドバンテージとなるのみだったアトレチコに対して、
レアルの方も後半の全員守備でゴール前を往復して走行距離を増やしていた事と
負傷者と逃げ切りを図って交代枠を使い切ってしまっていたためこちらも体力面での低下は否めず、
その影響からかロナウドらがクオリティを発揮する事もなく
両チーム1−1のスコアのままPK戦へと勝敗が委ねられる事になります。

PK戦は4人目のフアンフランが外したアトレチコに対してレアルは5人全員が成功したため
レアル・マドリーが2年ぶりにヨーロッパチャンピオンの座に就く結果となりました。

決勝でのレアルの選手のパフォーマンスは必ずしもベストではなかったと思われるだけに
シメオネ・アトレチコにとっては非常に悔やまれる敗戦だったと思います。

完成度を高めて挑んだ今回もPKながら白い巨人に苦汁をなめさせられたわけで
2度目の今回以上に3度目に向かう道は険しいように感じますが、
シメオネならば再び立ち上がってくるとも感じるところで
3度目の正直を期待したいと思います。






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posted by ピーター・ジョソソン at 13:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | UEFA CL EL | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月17日

論理を超越した赤い情熱


まずは、九州・熊本で震災に遭われた方々にお見舞い申し上げます。


ボルシア・ドルトムントのホーム・ジグナル・イドゥナ・パルクから
リヴァプールのホーム・アンフィールドに場所を移して行われた
UEFAヨーロッパリーグ・クォーターファイナルの2ndレグ。

1stレグを1−1のスコアで折り返した両チームが迎えた2ndレグは、
後半に4ゴールを挙げたリヴァプールが
大逆転でセミファイナル進出を決定する壮絶な試合となりました。

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ダービー犠牲の責務を背負って集中力を高めていたドルトムント

リヴァプールはドルトムントとの2試合の間に挟まれたストークシティ戦で実に6人の選手を代えれば、
ドルトムントは8人の選手を入れ替えて選手のコンディションを調整したところを見れば、
この試合がただのEL準々決勝という位置づけ以上のものであった事が理解できると思います。

しかし、ドルトムントの方はその間に挟まれていた試合がシャルケとのダービーマッチだっただけに、
選手を温存した揚句に引き分けて国内タイトルの可能性を自ら諦めるような状況になってしまった事は
指揮官トゥヘルへの風当たりを強くしたと感じます。

大規模なターンオーバーをしたその起用方法に正当性があった事を証明するためにも
選手のコンディショニングを万全にしてパフォーマンスを上げるに留まらず
このリヴァプールとの試合では最低限結果が欲しかったと思います。

ホームでの1stレグを1−1で折り返したドルトムントが勝ち上がるためには
アウェイゴールを2ゴール以上奪っての引き分け以上という条件が付いていましたので、
2ndレグでドルトムントに求められたものはゴールを奪う事です。

そのためにはバランスや守備よりも攻撃的に行く必要があるので、
ここへきて調子を上げていた香川を起用する事によって攻撃の枚数を増やしてきたと感じます。

反対にリヴァプールはターンオーバーもうまくいっていましたしスコアレスでも勝ち抜けるので
この試合を前にして背負い込むものはドルトムントから比較すると少なかったように感じるところで、
両チームの置かれている状況には違いがあったように思います。

比較的ニュートラルな状況で試合を迎えられたリヴァプールのサッカーの特徴は
かつてのドルトムントと同じく走力です。

その走力を生かすために、後ろでボールを動かして相手を十分に前方に引き出してから
ロングボールを蹴る事で走るためのスペースを作り、
間延びさせた前後間で攻撃の基点を作るボールホルダーをスプリントして追い越して
前方のスペースへ飛び出すことによってボールより前に人を送り込んできます。

後ろから次々と人が追い越してくるので見ていてアグレッシブで面白いサッカーが展開されるのですが、
この2ndレグにおいてはそのリヴァプールの特徴が
カウンターを得意とするドルトムントの格好の餌となってしまったように感じます。

リヴァプールはボールを持つとロングボールを収めて基点を作ったワントップのオリギを
コウチーニョ、フィルミーノ、ララーナといった2列目の選手が追い越すだけでなく
センタハーフのミルナーも前方に出てパスコースを増やしてゴールを伺います。

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ところが、この試合の序盤においては
後ろから追い越していこうとするところでボールを奪われてしまったために、
バイタルにジャンひとりしか残らないリヴァプールは
素早く攻守を切り替えたドルトムントに立ち続けに2発カウンターを食らう羽目となりました。

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ドルトムントは無闇にプレッシングの開始地点を上げずに
ボールが縦に入ってきた2列目のところに人を集めて囲い込みをしていましたので、
リヴァプールはドルトムントの術中に嵌った試合の入りだったと言えるのかもしれません。

反対にドルトムントしてはファーストアタックから決定機をものにし続けたというところでは
コンセントレーションを高めて試合に臨めていたと感じますから、
少なからずターンオーバーの成果はあったのではないかと思います。


劣勢ながらも手応えを掴んでいたリヴァプール

2点のビハインドを負ってしまっただけでなく
アウェイゴールを2点献上した事で3点が必要になったリヴァプール。

試合開始から10分足らずで早くもベスト4進出が風前の灯となってしまいましたが、
時間はあるのでとにかくまずは1点返すしかありません。

しかしながら、反撃するためにはボールを奪わなければなりませんので
リヴァプールは前から奪いに行きますが、
ドルトムントは後ろで繋ぐ、またはディフェンスの背後にボールを出すなどしてプレスをかわすので
リヴァプールのボールを奪う位置はあまり上がってきません。

低い位置で奪ったリヴァプールとしてはロングフィードを蹴って高い位置に基点を作りたいところですが、
50/50の確率のロングボールを蹴ってしまえばボールがドルトムントに渡ってしまう可能性も高くなり
そうなるとまた奪い返すのが大変になるので大事に繋いで前進する事になります。

そのためにボールを運ぶところで奪われるような事態となると
ドルトムントに再びカウンターの機会が訪れる展開が繰り返されます。

足元でパスを繋いで運ぶリヴァプールに対して
ドルトムントはそれまでのように縦に入ってきたところを囲もうとするので、
リヴァプールは素早いパスワークでプレスの的を絞らせず後ろに戻したら
ミルナーがサイドチェンジする形で右サイドのスペースに開くSBクラインにボールを通します。

ワイドに開いたクラインにボールが通ると
ドルトムントの左SBシュメルツァーが対応に出る分フメルスとの間にスペースができるので、
そこをララーナがランニングをかけて衝く、
それに対してフメルスがスペースをカバーリングしてきたら
今度はフメルスとソクラティスの間にできるスペースをオリギが衝くといった形で
アウトサイドから中央に向かってスペースメイク並びにランニングをして
リヴァプールはチャンスメイクができていたと思います。

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そうしたアウトサイドを突破口としたもの以外のところでは、
中央にポジショニングを移したコウチーニョが
守備をするドルトムントにとっての頭痛の種だったように感じます。

左サイドを主戦場とするコウチーニョが中央に移動してくると
ドルトムントのセンターハーフのヴァイグルとカストロは
一時的に数的不利の状況になる事もあり固まって
棒立ちになってしまって間を抜かれて度々ピンチを招いています。

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ヴァイグルとカストロは足技の巧みなコウチーニョに対して
無闇に飛び込んでかわされないようにしていたのだとは思いますが、
ステイしてもコウチーニョの一瞬のスピードに付けず
飛び込めば背後のララーナやフィルミーノにスペースを与える状況になっており
正直言って無力だったと感じます。

それだけにリヴァプールは2点差のついていた前半の内から
ある程度チャンスを作れる手応えは掴めていたように感じます。


攻守でキーポイントとなった香川

ドルトムントのバイタルを守るセンターハーフのプロテクトに問題があっただけに、
リヴァプールとしてはつまりのところプレッシャーの薄いアウトサイドを目指さなくとも
全体を押し上げてサイドバックの位置を上げて幅を作ったら
サイドハーフをインサイドに潜り込ませて中央から崩せばよく、
後半の狙いはインサイドだったと思います。

それに対してドルトムントもバイタルのプロテクトの必要性を感じて、
前半は最前線でオバメヤンと共にチェイシングをしていたトップ下の香川の位置を
ヴァイグルとカストロと並べるようにインサイドハーフの位置に下げています。

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中央に3選手を並べる事によってドルトムントはバイタルエリアの強化を図ったわけですが、
まずはそれが失敗だったのは明らかでした。

香川の位置が下がったことによって最前線がオバメヤンひとりとなるので
ドルトムントは左サイドのロイスが前に出てプレッシャーを与えようとしますが、
リヴァプールのCBに広がって幅を作られるとジャンへのマークが難しいものとなってしまいます。

それまでのようにサイドハーフでサイドのパスコースを切った上で
オバメヤンと香川でジャンを見ながらプレスをかける事ができない事に加えて、
ディフェンスラインは高いままであるため
リヴァプールは縦パス数本でドルトムントゴールに迫れるようになります。

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リヴァプールにオープンな状況を与えて攻撃に晒されると呆気なく1点返されましたが、
ディフェンスラインを高く設定している以上は
相手のボールホルダーに対してはプレッシャーがかかっている事が前提であるも
バイタルをプロテクトしようとして香川の位置を下げてしまったためにプレスが利かず
その大原則が崩れてしまったわけです。

ただし、守備での問題が攻撃に影響するわけではなく、
ドルトムントがボールを持った際には早めにプレスに来るリヴァプールをかわして前進させると
リードを活かすようにタメを作って攻撃する時間を作っています。

この攻撃の時間を作るところでも香川がキーになっていたと思いますが、
香川が前でアンカーの横のスペースでキープして時間を作る事によって全体が押し上がり
ヴァイグルやフメルスのボールを動かす能力や的確なポジショニングが活きていたと思います。

リトリートしての対応となれば特にヴァイグル辺りは活きてこないと思いますから
この試合の面子を考えれば前で守備をするためにも全体を押し上げる事が求められたというところで、
香川のボールキープは利いていたと思います。

リヴァプールを自陣に引かせたドルトムントは
フメルスのパスカットからのスルーパスにロイスが飛び出してゴールし3点目を入れて再び2点差とすると、
さすがにクローズドできていなかった後半の状況の改善を図って
香川をトップ下の位置に戻してプレスの仕方も再修正しています。

この修正によってドルトムントのプレッシャーは復活するので、
攻撃をクローズドされるリヴァプールが越えるべきハードルは再び上げられる事になります。


知将トゥヘルの理解の範疇を超えて出された結末

ドルトムントはアウェイで3点目を入れた事によっておそらく勝負はほぼ決したと考えたでしょうし
客観的に見てもその可能性は非常に高くなったと思います。

しかしながら、忘れてはいけなかったのは
逆効果となっていた後半の修正を前半の形に戻したに過ぎなかっただけで、
そもそも修正が必要だった理由はリヴァプールに幅を作られた上での中央攻めであって
バイタルにおける脆弱性が解決したわけではありませんでした。

2点差とされてしまったリヴァプールが拠り所としたのはまさしくそこで、
狙うは香川の位置が再び上げられて脆弱性も戻ったドルトムントのインサイドです。

ララーナとフィルミーノに代えてアレンとスターリッジを投入すると
中盤の陣形をダイヤモンド型にしてインサイドにおいて数的優位の状況を作り出しています。

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サイドバックのモレノとクラインのポジショニングを上げる事によって
サイドハーフのミキタリアンとロイスをアウトサイドに寄せて
オリギとスターリッジの2トップでドルトムントの最終ラインを引っ張っておけば、
コウチーニョを頂点にしてアレン、ミルナー、ジャンで作るダイヤモンドの陣形で
裸のカストロとヴァイグルに迫る事は赤子の手をひねるようなものでリヴァプールは1点を返します。

陣形を戻しながらも1点返されたドルトムントが
それからどう対応するのかを非常に興味を持って見ていたのですが、
ドルトムントが選択したのが再び香川の位置をインサイドハーフに戻す事で
これには少々落胆するしかありませんでした。

結局のところピッチ内にいるメンバーで対応しようとしたら4−4−2でプレッシャーを強めるか
4−5−1でプロテクトを強めるしかないというのが結論だったように思うところで、
守備での選択肢を増やすために香川交代という決断をしたのだと思います。

香川を交代させるのが適した判断だったか否かと言えば
個人的には調子のよかった香川でなくとも良かったとは思いますが、
リヴァプールの陣形に対して欠点を抱える4−4−2もしくは4−5−1から脱却するためには
誰かを代えて守備陣形を代える必要はありました。

香川を残すのであればオバメヤンかロイス辺りを代えなければならず、
もし彼らを代えてしまえば香川を代えるのと同等の守備の安定は得られるけれども
同時にカウンターで相手ゴールに迫る機会も失う事になりますから
それを許容できるかどうかと考えると香川交代はやむなしだったと感じます。

その交代の直後にリヴァプールが追いついてしまうものだから
不当にトゥヘルへの評価を貶めてしまっているようにも思いますが、
香川に代えてギンターを最終ラインに投入することで
ドルトムントは5−4−1という新たな選択肢を得ています。

そして終盤に向かってカストロとロイスに代えてギュンドアンとラモスを投入すると
5−4−1から5−3−2に変更する手を打っています。

5−4−1にしたことによって、5バックでリヴァプールの2トップと
高いポジショニングを取るサイドバックに対して数的優位は作れたものの
インサイドで2人のセンターハーフが剥き出しになる問題が解決しないので、
中盤にギュンドアンを入れてインサイドでの著しい数的不利の状況を解決し
なおかつ2トップによるチェイシングも確保したわけです。

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ドルトムントがそのように対応する事によって
リヴァプールから確実に時間を奪うに至っていましたから、
トゥヘルは試合の中でトライ&エラーを繰り返しながら
変化する状況に対して論理的な解を導き出していたと思います。

しかしながら、そうであっても勝てるばかりでないのがフットボールであり
ドルトムントからしたら悪夢以外の何物でもなかったわけですが
リヴァプールがセットプレーの流れからロヴレンが4点目を挙げて試合に決着をつけてしまいます。

2度に渡る2点のリードを守れなかった事に対しては落胆しかありませんが
だからと言ってトゥヘルの対応が間違っていたかと言えば必ずしもそうではなく、
刻々と変わる状況に対して最終的には正しい答えを導き出していたと思います。

強いて責任を問うならば、香川の交代のタイミングや5−3−2にするまでに時間をかけ過ぎた事で、
ハナから攻撃的にならざるを得なかったという点で試合前の時点から論理破綻していたものを
状況の変化に応じて修正するのにタイミングを間違えた、
時間がかかり過ぎたところはあったように感じます。

ただし、適切な対応を取っていたにしても後半に4失点して大逆転負けしたという事実は重く、
ドルトムントにとっては今後多方面に渡っての影響が懸念される敗戦だったように思います。






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posted by ピーター・ジョソソン at 13:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | UEFA CL EL | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月09日

指揮官のロジックを破壊するモンスター


バルセロナとアトレティコ・マドリーによるスペイン勢同士の対戦となった
UEFAチャンピオンズリーグのクォーターファイナル。

直近のクラシコではレアル・マドリーに敗れた昨シーズンの覇者バルセロナが
リーガでタイトルを争うアトレティコをホームのカンプノウに迎えた1stレグは
お互いに規格外の選手が良くも悪くもスコアを動かす展開となったように思います。

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バルサの狙い

手の内を知り尽くしている両チームだけに、ボールを支配したいバルセロナと
スペースの支配からカウンターを狙うアトレティコという構図は想像できたところだと思いますが、
後ろから繋いでビルドアップしてボールを前に運ぼうとするバルサに対して
アトレティコはまずは前からプレッシングをかけて高い位置で奪う姿勢を見せています。

アトレティコはオーソドックスな4−4−2の陣形で守備をセットすると
グリズマンとトーレスの2トップで
ブスケツへのパスコースを消しながらピケとマスチェラーノのCBにチェイシングし、
バルサのCBがサイドバックへとパスを出したら
ボールサイドのサイドハーフがすぐさまプレッシャーをかけてサイドに追い込みます。

サイドに追い込んでコースを消したらボールを奪いたいところですが
バルサも失わないように後ろに戻しては反対サイドへとボールを運んでこれを回避するので、
そうしたらアトレティコは再び2トップと共に
新たにボールサイドとなったサイドハーフがプレスをかけて反対サイドに追い込んだら
それまでにボールサイドだったサイドハーフはポジショニングを戻してスペースを埋めるというように、
両サイドハーフがバランスを取りながらプレッシングをかけていきます。

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アトレティコの組織的なプレッシングで近くにパスコースのなくなるバルサは
一列飛ばす形で距離の離れている右サイドのメッシにボールを預けて運ぼうとしますが、
パスの距離が長くなることから精度が伴うばかりでなければ
アトレティコもバルサがそこにボールを集めてくるのは分かっており
必ずしもボールを運ぶための有効手段になるばかりではなかったと思います。

バルサがボールを運ぶ上で効果的に機能させていたのがイニエスタのポジショニングであり、
ボールから離れたポジショニングを取るイニエスタにパスを出す
またはイニエスタに出さずにCBが持ち上がるなどすると、
アトレティコのポジションバランスは乱されて組織的なプレッシングが瓦解し
プレスを外したバルサはボールを相手陣内に運べるようになっています。

ボールを運ばれて自陣への撤退を余儀なくされるアトレティコは
低い位置に4−4−2のコンパクトなブロックを作ってバルサの攻撃に備えますので、
ボールを運んだバルサの次のテーマはコンパクトな4−4−2のブロックを攻略する事になります。

アトレティコディフェンスを攻略するためのバルサの攻撃の特徴が
高い位置を取る左サイドバックのジョルディ・アルバと右でフリーランを繰り返すラキティッチで、
アトレティコのブロックがコンパクトで中央に人を密集させてアウトサイドにはスペースができやすいので
アルバがポジショニングを上げる事により
幅を作ってブロックを横に引き伸ばすのをひとつ狙いにしていたと思います。

ボールをワイドに開いたアウトサイドに置く事によって
アトレティコがサイドの選手に対応させてゴール前に選手を残せばその間にスペースができますし、
全体をボールサイドにスライドさせれば反対サイドにスペースができる事になります。

その際に反対サイドでは頻繁にラキティッチによるフリーランが繰り返されており、
アトレティコの左サイドはその対応のために後方に押し込められる格好となります。

左のアルバで引き伸ばして右のラキティッチで相手を押し込む目的は
メッシに時間とスペースを与える事です。

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アトレティコのブロックの前方下り目の位置にポジショニングを取ったメッシに
時間とスペースを与えて決定的な仕事をさせようとしたというのが
アトレティコの4−4−2に対するバルサの攻撃の狙いだったと思います。


一挙両得を叶えるそれぞれの最適解

守るアトレティコとしては全体をボールサイドに詰めなければSBとCBの間のスペースを衝かれますし
詰めれば反対サイドにはメッシが待っているという事で、
どちらにしても放置すれば不味い未来が待ち受けることになります。

すぐに危険な状況を察知したアトレティコのシメオネ監督は前半15分の時点で早くも
2トップの一角だったグリズマンを右サイドハーフに配置換えして
陣形を4−4−2から4−1−4−1にしています。

こうした対応の早さはシメオネの指揮官としての危機管理能力もさることながら経験から来るもので、
これまでの対戦でも見られた変化だったと思います。

陣形をいじる事で前線は2トップからトーレスの1トップになっているので
アトレティコはチェイシングに連動させた組織的なプレッシングは威力を欠くようになり
バルサにボールを自陣まで運ばれやすくはなりますが、
中盤に5人の選手を配置した事で横幅をカバーできるようになるので
バルサにアウトサイドで時間を多く与えず反対サイドでもメッシに仕事をさせにくくできます。

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思うように右サイドで時間とスペースを得られなくなったメッシは
右から真ん中に移動してきてネイマールと連係して小さなスペースを衝いていきますが、
真ん中に人を集めているアトレティコのブロックは固く
そうして攻撃を凌ぐ事でバルサからボールを取り上げるようになれば
アトレティコにカウンターの芽が出てきます。

ただし、ボールを奪う位置が極めて低く運ぶ距離が長くなる事に加えて、
バルサは攻撃をしている時から予防的な守備をしていますから、
アトレティコがカウンターを仕掛けるためには
このバルサの張る予防線からボールと共にエスケープしなければなりません。

バルサの予防的守備というのはボールを失った直後からすぐにプレッシングをかけて奪い返せるように
攻撃している時から選手間の距離をできるだけ一定に保って
守備に備えてポジショニングを取るというもので、
簡単に言ってしまえばボールを失う場所を予測して
その付近と相手の最前線の選手に対して予め選手を配置しておくという事です。

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おそらくハリルホジッチが日本代表に落とし込もうとしているのがそれであって、
ボールを持った際にはパスコースとして機能し
失った際にも既に囲い込みができている状況を作るものであります。

例えばこの試合で言えば前述のラキティッチとメッシのポジショニング交換であり
グアルディオラの率いるバイエルン・ミュンヘンが見せるポジション循環が代表例だと思いますが、
誰がどこに居るかではなく適切なポジショニングに人が居る状態を作ればよいので
攻撃が停滞したりマンネリ化する事なく多様性は損なわれません。

そのバルサにカウンターを仕掛けようとしたら
予防的ポジショニングを取っているバルサの選手の外側にパスを出す
又はスペースに飛び出すといった事が求められますが、
囲まれているアトレティコが思うところにパスを出すためにはボールをキープしなければならず
キープしようとしたらパスを繋ぐのに人数が必要になります。

4−4−2の陣形だと真ん中のセンターハーフが2人なので
キープしようとしてサイドハーフがボールに関与すれば
スペースに飛び出すのは2トップと後ろからランニングをかける反対サイドのサイドハーフになるので
バルサの両CBと逆サイドのサイドバックに対応されやすくなりますし、
前線から2トップの片方が下がる形でボールをキープする人数を確保したとしても
1トップが下がるタイミングとサイドハーフが上がるタイミングを間違えれば
危険な位置で奪われてピンチを招く可能性も出てきます。

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そうした状況を改善したのもまた4−1−4−1の陣形であり、
インサイドに3人の選手が置かれているためにキープする人数が足りているので
サイドハーフは躊躇せずスペースに飛び出せるため
両サイドハーフとワントップとで即座に3つのパスコースが作れて
バルサの両センターバックに対応を迫れるようになりカウンターを仕掛けやすくなっていたと感じます。

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バルサが攻撃しながら守備をしているのであれば
アトレティコは陣形を変更する事で守備と攻撃の両面での機能性を上げており、
試合展開に沿ってリアクションして最適解を導き出していたように思います。


論理性を欠いたために罰を受けたバルサ

陣形を変化させる事でバルサの攻撃に対する守備
並びにバルサの予防的守備からのエスケープを叶えるアトレティコですが、
守から攻への切り替えという形でなければ
バルサの高い位置での予防的守備を無効化させる手立てはあります。

それはリスタート等で後ろから前線目がけてロングボールを蹴ってしまう事であり、
蹴ったボールを拾う確率は50/50にはなってしまうけれども
マイボールにできれば相手陣内でカオス状態を作れてバルサから組織性を奪う事にも繋がります。

バルサに押し込まれてしまうと予防的守備によりアトレティコが反撃するハードルは非常に高いものの
いざ相手陣内に運んでしまえばバルサは危うい守備をしており、
その原因は言わずもがな3トップの守備です。

バルサ陣内にボールを運んだアトレティコが
攻撃に厚みを出すためにサイドバックがポジショニングを上げてくると
バルサは3トップが守備に積極的でないので数的不利を起こしやすくなります。

アトレティコの先制点の場面でも
右サイドバックのフアンフランが上がってきたのに対してネイマールの戻りは遅く、
ブスケツがサイドに流れて人数を合わせて対応すると真ん中でコケがフリーとなって
コケからスルーパスを受けたトーレスが先制点を決めています。

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3トップの守備に不安があり数的不利を起こしやすい自陣での守備においては
全体をボールサイドに寄せてエリアを狭めて数的不利を感じさせないようにしたいのですが、
この場面ではラキティッチとポジション交換をしてインサイドハーフになっていたメッシが
中に絞り足りないためにコケを捕まえられていません。

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しかし、そもそも論としてインサイドを務めているのはラキティッチであるはずも、
メッシが内側に戻った事でラキティッチはアウトサイドのカバーに回り
フィリペ・ルイスをマーク対象として捉えていたためにカバーがされていないわけです。

バルサの場合は攻撃において予防的守備をしていれば守備においては予防的攻撃の態勢を取っていて
アトレティコの攻撃を凌いだら3トップを活かしてカウンターを仕掛けられるようにしていますから
3トップに守備面での負担は過度に求めていないと思います。

ただし、インサイドに入ったのであればそれ相当の守備でのタスクが求められるわけで、
そのタスクを負えないのであれば自陣ではポジションを交換すべきではないように思います。


トーレス退場で見慣れた光景に

アウェイのアトレティコが先制する展開となった事で追いかけるバルサは攻撃の手を強めて
相手陣内にボールを運ぶとボックス周りを取り囲むように選手を配置してゴールを窺います。

4−1−4−1の布陣となっているアトレティコは
ボールに対してプレッシャーをかける役割が最前線のトーレスにかかってくると
そのトーレスが立て続けにファウルを犯して退場処分となってしまいます。

この退場に関しては厳しいとも感じますが
イエローを受けた場面以外にもボールでなく脚に行っており
それまでにレフェリーの心証を悪くしていたように感じます。

直近のクラシコで相手が10人になりながらも勝ち切れなかったバルサとしては
2戦続けて数的優位の状況で逃げ切られるわけにはいきませんから、
アトレティコが1人少なくなってカウンターを受けにくくもなっているので
センターバックも高い位置に上がってきて攻撃をさらに強めます。

1点リードされた状況で前半を折り返すと
後半序盤にはアトレティコから攻撃を受ける場面もありますが、
アトレティコが前に出てきたところでバルサがボールを奪って
カウンターを仕掛けてゴールを脅かすようになるとアトレティコは前に出られなくなり
バルサが一方的に押し込む展開になります。

センターバックのピケもブロックの中に入っていき地上だけでなく高さも使って攻撃を立体化させたり、
前半はアトレティコのブロックの後方からタクトを揮う事が多かったメッシも
後半はブロックの中に入っていく回数を増やすなどしてバルサは攻勢を強めます。

ブロックの中にバルサの選手が入ってくるようになると
アトレティコの選手も中に引き寄せられてアウトサイドにスペースができるようになりますが、
バルサは前半の途中から右のアウヴェスを
予防的守備の観点から中に絞らせていたのを外に開いたところにポジショニングを変えており、
左のアルバと共に両サイドバックが左右に開かせていたことが同点の布石になったと思います。

バルサが右のアウヴェスから左のアルバへとクロスを通すと
選手を真ん中に寄せてゴール守ろうとしていたアトレティコはファーサイドで対応する選手が足りず、
アルバがクロスに合わせたボールをゴール前でスアレスが押し込んで同点となります。

なかなかすぐには追加点とはいかなかったものの
アトレティコが2人でボールを取りにいったところをブスケツがかわして
ボールを受けたスアレスが一旦右のアウヴェスに振ってからブロックの中でリターンを受けると
アトレティコの選手がバラけてブロックの中にスペースができ
そこに入り込んだスアレスがクロスに合わせて追加点を奪っていますから、
同点弾同様にブロックの外と中とを効果的に使えた結果だったように思います。

バルサからすると2ndレグを考慮すれば更にゴールを奪いたかったところですが、
アトレティコはビハインドを負うとプレッシングを強めていましたし
最前線にトーマス・バルティを投入してカウンターを機能させようとしていましたので、
ボールを動かしにくくなったのと後方のリスク管理のため
それまでのように一方的に攻め入る展開にはならず
スコアはそのまま2対1で試合を終える事となりました。

2ndレグがスコアレスでも引き分けであれば突破となることからすれば
バルサはこの結果でより優位な立場になったと言えると思いますが、
アウェイゴールを奪っての1点差である事にフォーカスすれば
次戦をホームで迎えられるアトレティコにもチャンスは十分でバルサが優位とも言い切れないとは思います。

両指揮官がどう動いてくるかというところでは
2ndレグが楽しみになるスコアではなかったかと感じます。






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