2017年01月25日

想定内か想定外か 一転したレスターの立ち位置

既にシーズンの半分以上の試合を消化しているにもかかわらず
15位に甘んじている昨シーズンのプレミア王者レスターシティ。

ミラクルを起こした昨シーズンとは打って変わって
今シーズンは真下に降格圏の迫る厳しい冬を迎えている。

周囲からマークされる立場へ変貌している事や
チャンピオンズリーグとの掛け持ちによる試合数増加の負担を負っている事からすれば、
レスターの今シーズンが難しいものになるであろうことは予測されていたもののその振れ幅は小さくない。

昨シーズン頂点まで上り詰めながらも今シーズンは降格に迫られる、
たったの1シーズンでレスターがどうしてここまで変わってしまったのか考えてみたい。


「ミラクル」と呼ばれる快進撃を見せた昨シーズンのチームの中で
驚異的な決定力を見せたのがFWジェイミー・ヴァーディと右SMFリヤド・マレズ。

突如彗星のように現れゴールを重ねる2人のゴールゲッターの活躍は
チームを勝利に導くと共に一躍プレミアリーグの主役へと押し上げた。

昨シーズンにヴァーディとマレズの挙げたゴールの合計は
チームの総得点68の実に6割にも及んでおり、
2人の活躍なくしてレスターの躍進は無かったと言って過言ではない。

ところが、注目の的となった彼らも
今シーズンは直近のサウサンプトン戦を消化した22試合を終えた段階で
ヴァーディが5ゴールにマレズが3ゴールと、
共にプレミアリーグの得点ランキングを争った姿とは異なり、少ないゴール数に収まっている。

チャンピオンズリーグとの掛け持ちによるターンオーバーや
マレズのアフリカ選手権参加で共に出場時間は昨シーズンから減らしているものの、
6割を占めていた2人の得点力の低下は当然チームの浮沈を左右するわけで
今シーズンここまでレスターの順位が上がっていかないのは必然だと言える。

しかしながら、レスター不振の要因を
ヴァーディとマレズの得点力の低下だけに求めることはできない。

なぜなら、昨シーズンと比較して今シーズンのレスターは
2人の得点力の低下以上に失点の数を飛躍的に増やしているからだ。

昨シーズン全38試合において36だった失点数は
今シーズンは22節終了段階で既に昨シーズンを超える37にまで上っており、
1試合平均1失点にも満たなかった堅守は破綻している。

レスターがボールの保持をベースとしたチームではなく
相手に持たせたボールを奪うところからゲームをスタートさせる事からすれば、
この守備の破綻こそがレスターの順位を下位へと押しやっているのだと言えるところがある。


昨シーズン堅守を築いたレスターは、
ボールが敵陣にあるときにはコントロールさせないように
相手のボールホルダーには絶え間なくプレッシャーを与え、
連動してプレッシャーをかけ続けるのが難しいと判断したらその守備位置を下げている。

高い位置でのプレスと低い位置でのコンパクトなブロックと
その中間に位置するハーフウェイでセットする守備、
それぞれの位置ではボールを奪う事に注力しながらも
相手のボールの位置や状況に合わせて守備位置を変えられる柔軟性を強みとしている。

その中でもレスターの守備の特徴と言えるのが、
自陣に引いた際に一般的には低過ぎると考えられる程に深くまでディフェンスラインを下げることにある。

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レスターも基本的にはディフェンスラインは中〜高くしており、あくまで必要に応じてではあるが、
自陣に引いたレスターがディフェンスラインを低くするのは
CBのロベルト・フートとウェズ・モーガンにスピードが欠けているからであり、
カバーしなければならない背後のスペースをより小さくするためだ。

だからこそ、守備位置を高くして背後にスペースが広がっているときには
相手のボールホルダーに対してプレッシャーをかけ続けてボールの出処をクローズドしておく必要があるし、
それが無理なら速やかに守備位置を下げる判断が必要になる。

守備位置を下げて相手を自陣に招き入れれば失点のリスクをより高くするが、
そのリスクを回避するためにレスターが武器としているのが
チーム全体が深くまで引いて作り出すコンパクトな陣形だ。

選手同士の間隔をコンパクトにしてスペースを狭めると、
ラインを上げ下げしながらプレッシャーをかけ
相手からミスを誘発させてボールを取り上げる。

最終ラインの選手だけでなく2列目より前の選手も深くまで引いて低い位置にも人を集め、
コンパクトな陣形を形成することにより相手の攻撃から身を守っている。

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敵陣から自陣深くに至るまでを広くカバーするにはそれ相応の運動量が必要になるが、
レスターはそれぞれの選手がチームプレイヤーに徹することで全員守備を実現する。

ただし、チーム全体が自陣深くまで引いてしまえば
相手ゴールとの距離を遠くして守備から反撃へと移る事を困難にする。

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その部分を解決したのが昨シーズンのヴァーディとマレズの活躍であり、
彼らの有するスピードと運動量とテクニックは少ない人数でのボールキープを実現し
自陣低い位置での守備からボールと共に敵陣へとエスケープする事を可能にした。

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敵陣へとボールを運んだレスターは
前線の選手がタメている間に後ろからの押し上げを図る。

この後ろからの押し上げはレスターの攻撃に厚みをもたらすと共に、
ボールを失った直後の敵陣での守備へのスムーズな移行を可能にし
全員攻撃からその位置を敵陣へと変えた全員守備のサイクルを作り上げる。

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現マンチェスターシティ監督のジュゼップ・グアルディオラの作り上げるチームが
15本の事前のパスと言われる後方からのショートパスで攻守のサイクルを作っているとしたら
クラウディオ・ラニエリのレスターではポジティブ・トランジションがその役割を果たしており、
攻守を良い形で循環させるためにも
ポジティブ・トランジションの可否がレスターにとって試合を支配する要件になる。


しかしながら、今シーズンのレスター不振の原因はおそらくそこではない。

ヴァーディとマレズによって解決を図れたポジティブ・トランジションの前後を挟み込む
「低い位置でのブロック守備」と「敵陣でのプレス守備」、
本来レスターのベースとなっているはずのこの守備面で問題を抱えているように見える。

レスターは昨シーズンと今シーズンとで守備のやり方をほぼ変えていない。

にも関わらず異なる結果が出されるのは、
昨シーズンと今シーズンの試合を見比べれば一目瞭然
不可欠だった選手を欠いているからだ。

オフにチェルシーへと移籍したエンゴロ・カンテの存在は
昨シーズンのレスター躍進のキーになっていた。

その貢献度が高かった事は、
インターセプト数にタックル数といったボール奪取のパーソナルデータにおいて
プレミアリーグでもトップクラスの数値を叩き出していた事が既に証明している。

今シーズンのレスターの失点シーンを集めるとその大半は3つのパターンに集約できる。

@サイドを起点とした流れの中からによるもの
Aコーナーキックからによるもの
B後方からのロングフィード1本によるもの

その中でも群を抜いて多いのが、@のサイドを起点としたものだ。

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低い位置で守備をするレスターの武器は全員守備で作るコンパクトな陣形ではあるが、
コンパクトな陣形は一定のスペースを圧縮するためにそれ以外の箇所にスペースを作る。

レスターが優先して狭めるスペースは
当然ながらゴールへの最短距離となる中央であるので、
中を固める分サイドにはスペースが生まれやすい。

時間とスペースを与えないようボールサイドに寄せながらも相手に素早く逆サイドへ展開されてしまうと、
かえって逆サイドで相手に時間とスペースを与え起点を作られやすくなる。

カンテのいた昨シーズンも
前線からプレスを利かせられずにサイドに起点を作られる事は多々あった。

しかし、敵陣あるいはハーフウェイにおいて
アグレッシブにプレッシャーをかけてボールにチャレンジしているため、
相手のボールキープのハードルを上げて
より高い位置でのボール回収を可能にして低い位置での守備機会を減らしていた。

また低い位置での守備においては
相手のボールホルダーに対する速い寄せと
空いたスペースを埋めるカンテの運動量はレスターを失点から遠ざけた。

ところが、カンテを欠く今シーズンのレスターは
敵陣やハーフウェイでプレス守備をしても嵌らない事も多く、
自陣への侵入機会を増やしてサイドチェンジを許しサイドに起点を作られると
バイタルを十分にプロテクトできない現実がある。

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起点を作られたサイドから縦に突破されてクロスボールを折り返されると
バイタルエリアを埋め切れていないためにCBが跳ね返してもそのこぼれ球を拾えず、
左右に揺さぶられてから中央へとカットインされると侵入を止められない。

全員守備を実現することで成り立っていると思われたレスターの堅守は
実際にはかなりの部分をカンテに依存していたと言える。


そのカンテの穴を埋めようとラニエリは試行錯誤をしているように感じるが、
シーズン半ばを過ぎた現段階においてもレスターは未だ最適解を導き出せていない。

CMFの組み合わせを変えたり、中盤の枚数を増やすも、
人と配置を変えるたけでは解決しない。

それならばサイドMFの位置を下げる事でプロテクトしたいところであるが、
SMFマレズに過度な守備の負担を強いれば得点への期待値を著しく下げ
トップのヴァーディを孤立させることに繋がる。

守備負担を取り除いたマレズのトップ下での起用が両方を叶える折衷策であるようには感じるが、
試合数を増やしている中では選手のやりくりに追われ、継続してトップ下起用できない事情もある。

そうしてあれこれといじりながらも改善の見られない状況は
まさしくティンカーマンの異名を取ったかつての姿が蘇る。

だからといってプレミアリーグを制す程のチームを作り上げたその手腕が否定されるものではなく、
様々なアイデアを駆使することでいつかは課題を解決する出口が見つかるはずだ。

しかしながら、その一方でラニエリ自身は
開幕時から一貫して「目標は勝ち点40」だと、低い目標設定を言い続けている。

タイトルを獲得して浮かれる選手と周囲に自制を促すための
謙虚さから発せられたのだと思っていたが、
それが裏表のないリアルな目標だったのだとしたら
選手の意欲との間にある微妙な意識のズレが気になるところではある。






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posted by ピーター・ジョソソン at 13:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | イングランド プレミアリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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