2016年10月04日

トッテナムとの完成度の違いに行く手を阻まれたペップ・シティ

ジョゼップ・グアルディオラが就任した今シーズン
序盤のダービーマッチも制して開幕からの連勝を6と伸ばし
スタートダッシュに成功したマンチェスター・シティ。

同じく新指揮官を迎えながらも新チーム作りに悪戦苦闘するライバルクラブを尻目に
早くもプレミアリーグ独走の声すら挙がってきていたわけですが、
ミッドウィークに行われたCLのセルティック戦で今シーズン初の敗戦を喫し
連勝をストップさせて臨む今節の相手は好調トッテナム・ホットスパー。

こちらは指揮官マウリシオ・ポチェッティーノによる継続性をアドバンテージとしながら
エースのハリー・ケインが負傷離脱するなど必ずしも順風満帆ではなかったものの、
その穴を埋めるソン・フンミンの活躍で開幕からの無敗をキープしています。

しかし、ペップ・サッカーの浸透が不完全な状態で今後のポテンシャルを考慮すれば
もしこの試合でマン・シティが勝つようであれば
独走に拍車がかかっていた可能性も否定できなかったように思いますが、
試合はトッテナムが快勝しタイトルレースについてはより興味深くなったように感じます。

アウェイでの試合だったとは言え
優位にあると思われていたマン・シティがなぜ負けてしまったのか探っていきたいと思います。

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グアルディオラがマン・シティで描く基本設計

バルセロナであればリオネル・メッシ、バイエルンであればアリエン・ロッベンにフランク・リベリと、
これまでグアルディオラが作り上げてきたチームというのは
質的優位を有する選手を中心にして設計がされてきました。

バルセロナではメッシがファルソ9として9番の位置から中盤に下がってプレーすることに伴って
ウイングの位置であったりサイドバックの位置を変えて相手を足止めしてメッシに自由なプレーを促し、
バイエルンではロッベンやリベリがサイドでボールを受けたら
サイドの同じレーンから自チームの選手を消すことで
相手も排除して仕掛けやすい状況を作り上げてきました。

相手に「数」で対応されなければ「質」の違いで1対1の状況を制する可能性が高くなることから
質的優位を有する選手にプレーしやすい環境を与えることで
その確率を更に高めてきたのがこれまでのグアルディオラのサッカーだったと思います。

開幕からここまで数試合を見る限りではありますが、
グアルディオラが今シーズンから率いるマン・シティで
その設計の中心に描いているのがセルヒオ・アグエロだと感じます。

ただし、メッシのように中盤に下がって仕事をするタイプでなければもちろんサイドアタッカーでもなく
アグエロの能力が最も発揮されるのはその嗅覚が生かされるゴールに近いボックス周りであることから、
今シーズンのマン・シティはサイドの選手がワイドに開いて真ん中にスペースを作っていますし
近くにはケヴィン・デ・ブルイネであったりダビド・シルバもしくはイルカイ・ギュンドアンを配置して
アグエロが孤立せずに仕事しやすい状況を作り上げているように思います。

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そのアグエロを中心に据えての攻撃の設計書を下支えするのが「事前のパス」であり、
GKからCBへとボールが渡ったら後方からボールを動かすことで
相手のオーガナイズを乱しながらその位置を上げて自身のチームは相手陣内で整然とした配置につき、
設計された攻撃を繰り出しながら失った直後のボール回収作業を高めて再攻撃へと繋げる。

そうしたサイクルが作り上げられてしまうと
相手はその状況から脱してペップチームのゴールに近づくことさえ困難になるということで
グアルディオラのチームが勝利する可能性は極めて高くなる。

トッテナム戦では好調だったデ・ブルイネやサイドのノリートこそ欠場して不在だったものの
グアルディオラの敷くフレームワークの通りにプレーができれば
やはりマン・シティの勝利は動かし難かったはずです。


マン・シティの事前のパスを機能不全にしたトッテナムのプレッシング

ところが、マン・シティは勝つどころか圧倒されるかのようにしてトッテナムに敗れています。

グアルディオラのサッカーのフレームワークが阻害されたことがその原因であり
阻んだのはトッテナムの組織的なプレッシングです。

高い位置でのトッテナムのプレッシングによって事前のパスが機能せず、
マン・シティは始点であるボールを運ぶことからままなりませんでした。

今シーズン、グアルディオラの指揮するマン・シティでは
マンチェスター・ユナイテッドとのダービーマッチで顕著な動きを見せたように
後方でのボール回しにおいて2人のセンターバックとアンカーの役割をするメディオ・セントロが
ローテーションするかのようにその位置を入れ替えているのが非常に特徴的です。

時にはメディオ・セントロが最終ラインまで下がったら
入れ替わるようにセンターバックが1列前に上がる。

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ユナイテッドの指揮官がよく知っているモウリーニョだったからこその変化だったと思いますが、
最後の砦となるセンターバックまでもがその位置を動くことで相手からのプレスの的を絞らせません。

しかしながら、最前線がイブラヒモビッチだったユナイテッドに対して
ソン・フンミンとデレ・アリだったトッテナムは
マン・シティのビルドアップ時にローテーションする時間も与えなかった。

マン・シティの両CBに対してソンとアリがチェイスすると
SBに対してはSMFのラメラとシソコが、メディオ・セントロのフェルナンドにはエリクセンが付くことで
マン・シティのボールホルダーは近距離にパスコースを失います。

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パスコースがないためにGKまで戻すと
CBへのコースを切りつつソンもしくはアリがプレッシャーをかけて迫ってくるので
GKラウール・ブラヴォはやむを得ず大きく蹴り出しますが、
蹴ってしまえばマイボールになる確率は50/50(%)になってしまうのでできるだけ繋ごうとします。

GKに戻すのではなく、近距離にパスコースが無いのであれば一つ飛ばして中距離のパスを出す、
CBが自ら持ち上がって運ぶ、
またはデッドスペースとされた逆サイドへとサイドチェンジしてドラスティックな解決を試みるなど、
マン・シティは試行錯誤しながら後ろからボールを運ぶ手段を模索します。

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CBがドリブルで自ら運ぶことは一定の効果を上げていたものの
リスクと隣り合わせの手段を使い続けるわけにもいかず、
それ以外の手段ではトッテナムの左SBダニー・ローズやヤン・フェルトンゲンの出足の良い潰し作業や
アンカーのヴィクター・ワニャマのカバーリングによって悉く対応されてしまったため
マン・シティは多くの時間ボールを前に運べない状況に陥ります。


ボールを持つ意味を見出せなくなったマン・シティ

事前のパスを用いてボールを前に運べなければ自陣でボールを失うことを意味しますから
マン・シティはトッテナムのショートカウンターに晒される。

トッテナムの先制点はアレクサンダル・コラロフのオウンゴールによるものだったものの、
組織的なプレッシングでボールを奪ってからの
ローズのアーリー気味のクロスボールがそれを誘発していることからして、
トッテナムの狙いとするところと整合性は取れていたと思います。

その反対になかなかボールを運べないマン・シティはヘスス・ナヴァスの位置を下げて
パスコースを確保するようになります。

ナヴァスを送り込む位置はワニャマの横のスペースであり、
ワニャマを挟んでその反対側にシルバを配置することによって
バイタルエリアで2対1の状況を作りボールは縦に入りやすくなります。

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ただし、本来であればボールによって相手のオーガナイズを乱し、
アグエロが仕事しやすいように
サイドの選手はワイドに開いておくことを基本設計としているマン・シティにとって
ボールを動かすために自らナヴァスの位置を変えたことはうまくいっていないことを意味しています。

ナヴァスが中に入ってくることでローズを前におびき出せるためその背後にスペースができるので
アグエロが空いたスペースに流れるなどして攻撃は繰り出せますが、
中で受ければ人が中に集まって外が空きアグエロは外に向かって逃げる形となるため
少なくとも想定していた攻撃の手法とは異なることになりますし、
何よりそれぞれが整然とした配置につけていないために
その攻撃でボールを失った直後の回収作業で問題を抱えることになる。

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それはロングボールでのボール運びでも同じ設計に陥りやすく、
相手のプレスが強烈でバイエルンのジェローム・ボアテングのような精度の高いキックが蹴れないと
ロングボールを蹴り出すことによって相手陣内にボールは運べるけれども
ハイボール並びにセカンドボールを拾えないため自らが整然とした配置につくことを妨げてしまう。

マン・シティが喫した2失点目はまさしくその弊害で、
ロングボールからの両チームによる押し戻しの中で
フェルナンドとコラロフが競りながらもボールを失いエリック・ラメラに置いて行かれたことにより
ラメラの飛び出しを警戒したジョン・ストーンズがボールを受けたソンを潰しに前に出られなかった。

前で潰せずにずるずる下がると
守備者と攻撃者は5対3の状況だったにも関わらず突破されてアリにゴールを許したわけで、
トッテナムの組織的なプレッシングによって事前のパスが機能不全とされたことで
予防的に守備をするための組織が構築できなかったことがマン・シティを敗北へと誘ったと感じます。


一長一短だったハーフタイムの修正

2点をリードされて迎えたハーフタイムに
マン・シティはナヴァスの位置を右から左に変えて後半に臨んでいます。

ナヴァスを中に絞らせることでボールは動かしやすくなったけれども
相手を動かすのではなく自分たちの方が動かされたことは
ボールを持つ意味を見出せていないことの証左であり、その部分の改善を図ったように思います。

ナヴァスに中に絞らせるのではなくワイドに外に張った位置でボールを受けさせることで
トッテナムの右SBガエル・ウォーカーを引き出してCBとの間にスペースを作り
アグエロがゴールに向かってプレーしやすい環境を取り戻す。

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マン・シティの攻撃は基本的にナヴァスのサイドで仕掛けて
アグエロとともに逆サイドのスターリングがフィニッシャーとして中へ入ってくるようになっているので、
中ではなく外で受けるためにも出足の良かったローズのマークからナヴァスを解放したように思います。

ウォーカーはローズほどには前に出てこなかったため
ナヴァスがポジションチェンジした後半はマン・シティの攻撃が機能するところもありましたが、
右利きのナヴァスが左サイドにコンバートされたことで逆足になり
持ち味とする縦への突破で不自由さを抱えることになります。

すると、その間にナヴァスの背後を衝かれるようにしてウォーカーにインナーラップされると
守備するマン・シティはカオスに陥りボックス内でアリを倒してPKを与えてしまいます。

ラメラの蹴ったPKはGKブラヴォがセーブしさらなる失点を逃れたマン・シティは
ナヴァスに代えてイヘアナチョを投入してアグエロとの2トップにし
中盤をダイヤモンド型にして攻め筋を中へと求めると
トッテナムが前半からのプレッシングで体力を消耗していたことも相まって攻勢に出ますが、
最後までゴールは生まれずにトッテナムが2−0で勝利する試合となっています。

マン・シティが敗れた原因を探ってみれば、事前のパスで問題を抱えたために
その先に描いていたはずの攻撃、ボール回収、再攻撃という絵が描けなかったことであり、
トッテナムのプレッシングがマン・シティのビルドアップを凌駕した結果だったと思います。

現時点での完成度の差が示された試合だったと感じるところで、
年を跨いだ次の機会でのマン・シティの進捗状況に興味を持たせる内容だったように感じます。






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posted by ピーター・ジョソソン at 17:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | イングランド プレミアリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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