2016年09月03日

日本がアジアで負けないために求められるワンランク上のボール支配

ハリルジャパンのアジア最終予選初戦の相手は因縁のUAE。

W杯ブラジル大会グループ敗退に続いてのアジア杯での敗戦は
沈みゆく日本サッカーの象徴的なシーンとなっただけに
再び巡ってきた対戦の機会では勝利して借りを返したかったところ。

勝って強い日本の復活を印象づけたかったところでしたが、
不可解なジャッジはあったもののまたしても攻め続ける展開ながらUAEに敗れてしまいました。

なぜ格上であると思われていた日本が負けてしまったのか考えていきたいと思います。

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ボールの支配に基づいた布陣

前回敗戦の教訓からも日本としては相手に先制されて自陣に引かれるような展開にしたくなく、
ボールを握ったのであれば先にゴールを奪って試合を優位に進めたかったはずです。

サイドのMFである本田と清武をより真ん中に近い位置でプレーさせる事で
中央の岡崎、香川、大島、長谷部との距離を狭めてパスワークを駆使して中央から崩す。

最短ルートである中央に人数をかけて崩しにかかる事は
失った直後のボール回収作業を効率化する事も意味するわけで、
この試合における日本はホームでの試合でもありボールを握れるという判断から
ボールを支配する事に基づいてチームをオーガナイズしていたと思います。

前半は相手からのカウンターを警戒して
なかなかサイドバックのポジショニングを上げられていませんでしたが、
中央から崩す事に軸足を置きながらサイドバックの攻撃参加によって横幅を作り
攻撃に厚みを出してゴールをこじ開けようとしていたと思います。

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流れの中からゴールは生まれなかったものの
課題となっていたセットプレーから先にゴールを奪った事は
前回の悪夢を繰り返さないという点からも日本にとって理想的な展開だったと思います。


ボールを支配するための要件とは

日本は先制した時間帯が早かった事もあり先制後は引いてカウンターを窺うのではなく
追加点を奪うためにそれまで同様ボールを支配しポゼッションを高めたサッカーを継続させています。

それに対してUAEはスペースの支配からカウンターを狙っていますので、
日本としては相手のカウンターをコントロールしてボールを握る事が求められたわけです。

ボールを持ちつつ相手のカウンターを芽を摘むためにはどうするべきなのかについて、
ポゼッションサッカーでは世界最高レベルにある現マンチェスターシティ監督のグアルディオラは
自身について書かれた
ペップ・グアルディオラ「キミにすべてを語ろう」(マルティ・パラルナウ著、羽中田昌訳)の中で
以下のように語っています。

「もし事前の連続した15本のパスがなかったら
 攻撃から守備への良い移行を実行するのは不可能である。」

「整然とした配置につくために、
 中盤で15本の連続したパスをしながら敵を混乱させる事ができたなら意味がある。
 混乱させるにはスピードがあり具体的な意図を持ったパスを使わなければならない。」

「15本のパスでチームは整然とした配置につき、
 同時に敵はボールを奪おうとしてピッチの中を追い回す事になるので気づかぬうちに混乱している。
 そこでもしロストしてもおそらくボールを奪った選手は孤立している。
 (中略)囲んでいるので容易に取り戻せる」


ボールを持ったら失った直後からボールを奪い返すための守備ができるよう
15本の連続したパスを使って自らは整然とした配置につき、
その15本のパスにスピードと意図を乗せる事で相手に混乱を与えて
ボールを回収する上での優位性を作り上げておくのが
ペップのいうところのボールを支配する事だというわけです。

つまりは、ボールを持ちながらも既に守備まで考えられているからこそ
ボールを失った直後に奪い返す守備ができるのであって、
だからこそボールを持つ意味もあるわけです。

アジア2次予選ではハリルホジッチが代表チームにゾーンディフェンスを持ちこんで
選手に高い位置での守備を求めていましたが、
日本では攻撃をしながらも予防的に守備するところまで設計されているチームが少なく
代表選手であろうともそこまで考えてボールを持つ事はしていないと思います。

UAE戦での日本もボールを持ちながらもどこに出すか迷ってスピードが上がらず、
ボールで相手を混乱させていたというよりは
ボールを手放さなくてはならなくなって自ら混乱していたように感じます。

そのような状況に陥ってしまうのはそもそもの問題がある事もさることながら
人の動きが少ないからでもあり、
相手が4−4−2で前線が2トップなのであれば日本はボランチをの位置を下げて後方を3枚にし
3人それぞれが間隔を取れば相手からのプレッシャーは分散します。

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もしそこに10番のオマルが加わってくるのであれば
その背後で日本は清武と酒井高徳とで相手の右サイドバックに対して左サイドで数的優位が作れるはずで、
前線の動き出しも少なかったところはありましたが
ボールを動かす始点のところでボランチがもっと積極的に組み立てに関与すべきだったと思います。

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大島に関しては独特な視野を有しているだけにもっとやれるはずですが
この試合では遠慮しているのか積極性が足りなかったように感じます。

狭いスペースに縦に出せる選手は日本では稀有な存在だけに
ボールポゼッションを高めるサッカーにおいて戦力としていくためにも
今回の起用を失敗と捉えずに経験を与えて成長を促していく事も必要に思います。


最後の砦に相応しくない対応

予防的に守備を構築できていない日本にとっては
相手のFW及びオマルをコントロールすることがカウンターさせないための生命線だったはずです。

再びグアルディオラに登場願いますが、
やはりペップ・グアルディオラ「キミにすべてを語ろう」の中で以下のように語っています。

「ボールを支配して勝ちたいならば自分の背後を守る事
 (中略)前線に残っている相手のFWをコントロールしなければならない」


この試合の日本がボールを支配するためには、予防的に守備ができていない以上
最低限UAEの2トップをコントロールする事が必要だったわけですが、
同点に追いつかれたプロセスを見返してみれば
相手のFWをコントロールできていない日本のCBの姿があります。

大島の弱いパスをカットされそうになり酒井宏樹が失わないように蹴り出したボールを
10番のオマルに拾われたところからUAEのカウンターが始まっていますが、
オマルから7番のマブフートに対してクサビを入れさせると
そのスピードに乗られたドリブルによって日本はピンチを迎えて
ボックス手前で吉田がファウルを取られた結果フリーキックを決められて同点とされています。

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おそらく直前に2トップが左右でポジションを入れ替わった事に起因しているかと思いますが、
相手のFWをコントロールするどころか
前を向いてスピードが乗った状態でフリーでクサビを受けさせてしまっています。

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オマルは長谷部が対応し左サイドは高徳だけしかいなかったことからすれば
森重は何を守っていたのか不可解にも思うところでマブフートとの距離を開け過ぎていたと思います。

FWが下がってポジションを入れ替えていただけに難しい判断にはなったと思いますが、
前線に残っている選手、飛び出してくる選手の把握ができていれば
前に出て距離を縮めた上で潰す対応はできたと思います。


問題は攻撃にあらず

ボールポゼッションを高めて相手ゴールに迫りながらも
ゴールが奪えないことは日本だけでなくどこでもあります。

しかし、日本はセットプレーからゴールを奪い
ゴールは認められなかったけれども2点目も押し込んでもいるように、
相手が籠るだけでもなかったのでチャンス自体はたくさん作れていたと思います。

たくさんチャンスを作りながらなかなかゴールが奪えずに負けたからといって
攻撃に問題点を求めるのはどうかと感じるところで、
そのような展開ながら2失点してしまっている事の方を問題にすべきだと思います。

予防的な守備を構築しないまま相手のFWのコントロールもままならない守備では
ボールを支配するのに十分と言えず、
それを理解しないままボールを持とうとしている事を議題に挙げるべきなのではないかと感じます。

最後にもう一度グアルディオラに御登場願うと、
自身について書かれた著書
グアルディオラの哲学(ファン・カルロス・クベイロ、レオノール・ガジャルド著、今井健策訳)
の中で以下のように語っています。

「一見矛盾しているように思うかもしれないが、攻撃的なチームを作ろうとすればするほど、
 相手からボールを奪うという観点で守備的な規律やルールが必要になる」


日本がボールを持って試合を進めようとするならば
この逆説的な観点に立つ事が必要なのではないかと感じます。






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posted by ピーター・ジョソソン at 13:41 | Comment(3) | TrackBack(0) | ハリルジャパン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハリルのサッカーの指向は実に攻撃的です。
「前への守備から攻撃へ」
1点取っても、さらに1点を取りに行く中での「いつもの」水漏れ。
別の監督さんなら、1点取った後相手をいなしながら、相手の体力を奪い、相手のブロックのスペースを広げる、またはこちらのブロックで引っ掛けて今回のUAEのようなカウンターをこちらが発動するという選択をしていたかもしれません。
ハリルは現代的な高い位置でボールを奪っての素早いシュートという哲学で指揮していますが、アジアではどうしてもボールを握らされるので、今回のようなポゼッションしながら「前へ」の意識でプレーさせられてしまい、ブラジルワールドカップと同じ轍を踏んでしまっているように感じます。
強さのレベルが均衡してきたとはいえ、「アジア」での今の日本の強さなら、「先制後」、相手にボールを奪いに来させる守備というプレーの選択肢があれば、試合の進め方の巧さという点でもう一つレベルアップできるようにも思うのですが、いかがでしょう?

と言いながら、ハリルにはそのような選択枝はなさそうには思います。

ちなみに自分は広島サポーターです(笑)。
Posted by tohoho at 2016年09月04日 10:50
tohohoさん コメントありがとうございます。
確かに先制した後の試合の進め方は大事ですよね。
そう考えると試合巧者とは言い難い日本にとっては先制するのは早過ぎたのかもしれない
...と思わせるようではいけませんよね。
リードしたら追い込まれるのは相手なのですから
心理状況をコントロールする事は必要で自陣側手前に相手を引き込む事も必要に思います。
ただ、意思統一がしっかりしている広島さんのように
低い位置でボールを回そうとすれば代表チームではリスクが高いですね。(笑)
基本的に日本代表のビルドアップ部分の中心を担っているのが
UAE戦だと吉田、森重、長谷部、大島なんですね。
アジアだとボールを持てるし日本がそういうスタイルだから相手も持たせるけれども
果たしてボールを持つのに相応しいのかと言えば実際どうなんだと思うところもあります。
決してワールドクラスと言い難いこの面子でビルドアップをする限りは
否が応にもこの先ボールを持たない選択肢が必要になる事が想像ができるけれども、
相手にボールを持たせて守備からカウンターを狙えるのかと言えば
守備力に問題があるのはUAE戦だけでなくこれまでからも明らかだと思います。
セオリーから外れた守備に球際の弱さは見ていて悲しくなります。
ハリルが一生懸命変えようとしているけれどなかなか体質が変わらず
他の選択肢を取れないのがW杯からの変わらない現実に思います。
Posted by 管理人 at 2016年09月04日 12:41
ボールを持ってても、待ち構えても危なっかしいと・・・・
正直、私より管理人さんのほうが少し悲観的なご意見で、ちょっとショック。
ココにガンバのヤットさんがいれば少しはチェンジオブペースをしたのかなあと思ったりもしたのですが、「守備の基本」はまた別次元の話ですもんね。
ご返答ありがとうございました。
Posted by tohoho at 2016年09月04日 13:12
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