2015年10月27日

強さは細部に宿る 浦和に求めたいディテールの追求

久しぶりにJリーグの試合から。

年間3位をキープしたいFC東京にとって
2位の浦和との直接対決はチャンピオンシップ出場のかかった大事な試合でしたが、
FC東京自らゲームプランを壊してしまうミスがあったのは確かだったものの
現在の両チームの間にある実力差も浮き彫りになったように感じます。

dss20151027001myboard.jpg


ボールを持つ者と持たざる者

浦和や広島のように最前線に5人の選手を配置するようなチームを相手にした時
相対するチームが4バックのチームであればそのまま4バックで臨むか、
それとも相手に合わせて5バックで臨むかという判断が求められると思います。

4バックで臨めば5トップの浦和に対して人数が足りず
そこにギャップが生まれる事になりますので、
ギャップができるのを嫌えば自らも5バックにするという選択をするという事になります。

この試合で浦和と相対したFC東京は
浦和のシステムに合わせるのではなくて4バックのまま試合に臨んでいます。

普段4バックのチームが浦和や広島と対した時だけ5バックにすれば
慣れないシステムに選手が戸惑う事が考えられますので、
いつもと変わらない布陣で臨めるというところでのメリットは必ずあると思います。

ただし、4バックのままで浦和と相対する事になれば当然ながらギャップはできますので、
そのギャップを受け入れる格好となるFC東京が如何にして対応するかという事が
試合のひとつの焦点になると思いますが、
FC東京はボールサイドに全体をスライドして寄せて
反対のサイドのウイングバックへのマークは棄てるという対応をしていますので、
ボールサイドと反対のサイドの浦和のウイングバックの選手は
FC東京のマークが及ばずフリーという事になります。

dss20151027002myboard.jpg

FC東京からすれば反対のサイドを棄てるような状態になったとしても
ボールのあるサイドに全体をスライドさせて相手の活動エリアを狭めてしまえば
例えボールの無いサイドでフリーの選手ができてしまっても
それは構わないという対応になると思います。

しかし、浦和からするとボールとは反対のサイドながらも
アウトサイドで相手のマークを受けない選手がいるという事は、
そこにボールを運べさえすれば
時間とスペースを得られるために大きくチャンスが拡がる事になります。

そのために、浦和は
ボールサイドから一気に反対のサイドへと展開する大きなサイドチェンジのパスや、
左右にボールを早く動かしてからすぐに縦に入れるという形で
反対サイドのフリーのウイングバックにボールを供給していきます。

dss20151027003myboard.jpg

それに対するFC東京としては
浦和が大きくサイドを変えて来ようが急いで繋いで縦に入れて来ようが
全体を急いでスライドさせるという対応をする事には変わりなく、
フリーにしてしまっている浦和のウイングバックから時間とスペースを小さくするために
スライドを急いでするという事になりますから地味な作業を強いられる事になります。

それが見ていて楽しいサッカーとは言えないかもしれないけれども、
今シーズンのFC東京はピッチ上の全選手でオーガナイズして守備をして
安定した守備力を手に入れる事で成績の安定を図れているところがありますから、
我慢強くハードワークする事は勝つための担保だと言えます。

ですから、浦和にボールを持たれて守備に追われる展開というのは
FC東京にとってはゲームプランの範囲内であり、
ボールを持つチームと持たないチームとで
思惑ががっぷり組み合うような試合が予想できたように思います。


ボールを持つ意味を示した浦和に対して人もスペースも支配できなかったFC東京

ボールを持って攻撃を仕掛ける浦和と
ボールを持たないで守備をしたところからの1発を狙うFC東京とで、
どちらがより優位に立てるか否かを決めるのは
ボールを持つ意味、または持たない意味をピッチ上で示せるかどうかだと思います。

ボールを持つ浦和がその意味を示すためには
自らボールを持って動かす事によって相手を動かして
ボールを持つからこそできる事を見せる必要がありますし、
反対にFC東京はスペースを支配してパスコースを絞って相手を困らせ
ボールを奪ったら攻守を切り替えてカウンターを狙っていく必要があります。

ボールを持つにしても持たないにしてもどちらがいいという事ではなく、
それぞれがそのようにゲームを展開させる事の意味を示さなくては
ただボールを持たされているだけ、持てないだけになります。

そういったところで、試合の序盤からピッチ上で意味を示していたのは
ボールを持つ側の浦和だったと思います。

サイドチェンジのパスを使っての大きな展開や
素早いボール回しや逆に遅いボール回しで緩急をつけてボールを動かす事によって
スライド対応するFC東京は動かされていますし、
素早く左右に揺さぶりをかけて縦に入れる際にも
表で受けるだけでなく裏でも受けて相手のディフェンスラインと駆け引きをしています。

また単調に空いているアウトサイドだけでなく中央にもクサビを入れていくなどして
浦和はFC東京にパスの的を絞らせていません。

dss20151027004myboard.jpg

ボールを持たないFC東京からすると
スライドしてエリアを狭める事でボールを持つ浦和にパスコースを限定させて
スペースを支配したかったところだと思いますが、
浦和のボール回しに的が絞れずに対応が後手を踏む形となっていましたので
ボールを支配される形になってしまっていたと言えると思います。

そうしてボールを動かした浦和の先制点は
FC東京GKアブラモフのキャッチミスが直接的な原因でしたが、
そこまでに至るプロセスを見ていけば
槙野がダイレクトで縦パスを入れると
FC東京は宇賀神にSBの背後を衝かれてクロスを入れられているわけですから
お世辞にもFC東京がスペースを支配していたとは言えません。

前半の間の浦和の3点目のゴールにしても
やはりビルドアップで後ろから縦パスを入れて
最終的には反対サイドの関根をフリーにする事でゴールを生んでいる事からすると、
浦和のボール支配がFC東京のスペースの支配を凌駕した結果がスコアに表れたと思います。

ただし、浦和の先制点の直後の追加点の場面については
相手関係の問題ではなかったように感じます。

5トップに対してFC東京は4バックで試合に臨んでいますから
浦和のフリーになっている反対サイドのウイングバックにボールが入ったのであれば
FC東京は速やかに全体をスライドさせて対応させる必要があります。

ところが、浦和の2点目の場面では
新たにボールサイドとなったウイングバックの関根に対応したSB太田を
インサイドハーフの羽生がカバーしながらも
それに続くはずの高橋秀人は後ろの興梠のマークに付いてしまっていますし、
その割に反対サイドの米本は中央への絞りが足りていませんので
羽生の背後の中央バイタルにポッカリとスペースを空けてしまっています。

dss20151027005myboard.jpg

その空いたスペースを使おうとする柏木に対して
河野が前方から戻ってくるものの間に合わず、
すぐに気付いた高橋も間に合わずに横パスを出されると、
ダイレクトで武藤が流し込んで浦和が追加点を奪っています。

FC東京が人に付く守備をしようとするならば4バックでは確実に足りない事になりますので
その分をアンカーの高橋で補完するという対応をする事は理解できます。

しかしながら、高橋がそのように対応するのであればスペースを埋める事ができないので、
高橋が埋めきれないスペースを埋めるためには米本が中に絞りをかけるか
前線から河野が戻ってくるしかありませんが、
この場面ではどちらも十分な対応をしていなかったと思います。

人に付く対応をしていくのであればアンカーの高橋がその任務を負う事になりますので
その周りの選手が約束事を守る必要が出てきますが、
プレーを見る限りでは約束事が徹底されている様子でもなかったですから
4バックのままで人に対応する難しさが出てしまっていたように感じます。


布陣の変更で状況を好転させたFC東京

ボールを支配する浦和は攻撃しながらも敵陣でボールロストするような事があれば
その場で奪い返そうと高い位置からチェイシングをかけていますし、
FC東京がカウンターへと移行するために打つクサビの縦パスに対しても
後ろからプレッシャーをかけて足元に収めさせずにボールを回収しています。

浦和が高い位置でのボール回収をしてポゼッションを高めていきますので、
FC東京はその状況から脱出しようとすると
ワンタッチで繋ぐなどして攻守の切り替えを早くする事になるので、
お互いに攻守の切り替え時に力の入るインテンシティの高い試合にもなります。

追いかけるFC東京としてはいざ落ち着いてボールを持てたとしても
浦和の人に付く守備対応で簡単にはボールを運ばせてもらえてはいなかったので、
守から攻への切り替えで急ぐのは消耗が激しくなる一方で
浦和が高い位置から人数をかけてプレッシャーをかけて後ろが手薄となっているために
攻守の切り替え時さえ抜け出す事ができれば
ボールを運ぶ事とチャンスメイクが同時に叶う事にもなります。

ただし、2点をリードされてしまうと相手がペースを落としてくることもあり
FC東京は攻守の切り替えよりも自らボールを持って前方に運ぶという事が求められます。

そこでFC東京は状況の打開をするべく、2失点した直後に布陣の変更を図って
インサイドだった羽生を右サイド、米本をセンター、東を左サイドに置き換える形で
4−3−1−2から4−4−2に変更しています。

4−4−2の布陣となる事で羽生がアウトサイドに移るとともに
センターへとポジションを移した米本もボールサイドに顔を出すようになるので、
FC東京としてはリスクは負う形となりますが更にボールサイドに人数をかける事ができます。

dss20151027006myboard.jpg

浦和はそのFC東京の変化への対応が求められましたが対応が働かず、
フリーにしてしまった米本からスルーパスが供給されて
抜け出した東がGK西川のニアを打ち抜いて1点を返していますから
FC東京は布陣を変更した事が状況を好転させたと言えます。

また、4−4−2にした事で2列目が3枚から4枚になりますので
守備でスライド対応する上でスライドする距離を短くできて
サイドを変えられてもスライドが容易く間に合うようになり
浦和のウイングバックに与える時間とスペースが格段に小さくなります。

dss20151027007myboard.jpg

FC東京はそうして布陣変更をする事で攻撃と守備の面で大きな利点を得たわけですが、
それが全てを解決したわけではないという事を徐々に知る事になります。


始点が解決しないFC東京 GKと偽のSBで違いを作る浦和

FC東京は布陣を変更する事によって自らがボールを運ぶところで人数をかけられるのと、
自陣で守備を整えた時にスライドが間に合うなどのメリットを享受しています。

しかしながら、まだリードされている状況からして
ボールを運ぶにしてもまずは自らがボールを持たなければならないですし、
できれば自陣深い位置までボールを運ばせてから奪うのではなくて
相手のゴールに近い位置でボールは奪いたいわけです。

そうなるとまずは相手からボールを取り上げるという事が必要なので
FC東京は高い位置からプレッシャーをかけていく事になりますが、
4−4−2の布陣にしているために最前線は前田と河野の2トップになっています。

浦和はCBの那須と下がってくる阿部勇樹とでボールを動かしますので
数的関係はお互いに2対2の状況ですからプレッシャーは利かせやすいはずですが、
浦和はGK西川をビルドアップに組み込んでいますのでFC東京はここで数的不利を起こします。

dss20151027008myboard.jpg

現代サッカーではGKにこれまで以上の役割が求められるという事の一端が
このようにGKが数的優位の一翼を担う事であり、
西川周作はそのタスクを負えるだけの足元の技術と判断力を有しています。

後ろで3対2の状態になるために浦和は阿部もしくは那須が
自らボールを持ち上がってくるとFC東京はこの持ち上がりを制御できず、
浦和は阿部が縦パスを入れたところからパスを繋いで
最後は反対サイドでフリーの関根が決めて3点目を奪っています。

dss20151027009myboard.jpg

4−4−2への変更で状況を好転させながらも
始点となるところでボールを奪えなければどうしようもないという事で、
FC東京は更に布陣の変更を図って3−4−1−2の並びにしています。

結局のところ浦和に対応するためには、後ろを5バックにしてギャップを作らせず、
最前線を3枚にしてチェイスする布陣にするしかなかったという事だったと思います。

これで両チームともにギャップのない状態になるわけですが、
そこで違いを生み出すのが
浦和の場合はゴールキーパーであり偽のサイドバックです。

FC東京はシャドーポジションに移った河野と再びインサイドに入った羽生で
ビルドアップする浦和の阿部と那須に対して間合いを詰めると
ワントップの前田がGK西川にまでプレッシャーをかけています。

4−4−2の布陣から比べれば3人の選手でプレッシャーをかけられていますので
浦和のビルドアップ隊に対するプレッシャーは強まっている事になります。

ところが、ボールを戻されたGK西川はそのプレッシャーに追い込まれることなく、
1列飛ばした長い距離のパスを正確に味方に通していますから
ここでもGKがフィールドプレイヤー並のキック精度を有している事が
ボールを繋ぐ上でアドバンテージとなっています。

dss201510270010myboard.jpg

高い位置で追いこみながらも奪えず繋がれてしまうと
FC東京は前線に人数を使っているため中盤がスカスカで
浦和にボールを握られる事になります。

それでも後ろは5バックにして人数を残していますから最後のところで対応は利きますが、
浦和はそこに偽のSBである槙野や森脇が上がってくるから
対応する側からすればカオスとなります。

dss201510270011myboard.jpg

FC東京は布陣を同じくして各所が1対1の状況になっているため
槙野や森脇が上がってくると
前線の選手が低い位置まで戻ってこないと対応が利かないという事になりますが、
攻撃で力を発揮したい選手がそこまで守備対応できるかと言えば簡単ではなく
そういった状況ができて生まれたのが浦和の4点目となる槙野のゴールでした。

この槙野のゴールでほぼ試合の勝敗は決定していましたので
浦和はそのままスコアを保って試合を閉めたかったところだと思いますが、
FC東京のリスクを負った攻撃に押し込まれる展開となると
左サイドの太田からの良質なクロスに苦しめられます。

クロスの質の高さやFC東京の的の多さはあったものの、
終盤にかけて失点を重ねてしまった脆さが
それまでの浦和の強さに対する信用を失わせます。

ここまで素晴らしいサッカーをしているのだから
浦和には90分通した賢いゲームマネジメントを求めたいですし、
それはシーズンを通した戦い方にも通じてくるのではないかと思います。






banner_22.gif

にほんブログ村 サッカーブログ 海外サッカーへ
にほんブログ村


posted by ピーター・ジョソソン at 15:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ・天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。