2016年12月21日

レアルと真っ向勝負 鹿島の後ろに道はできる

決勝が約束されていたも同然の戦力を有するレアル・マドリーに、
参加する事に意義があったはずの鹿島アントラーズが挑んだ
2016FIFAクラブワールドカップ・ジャパンの決勝戦。

鹿島の躍進は開催国の日本では注目を集めるのに一役買ったものの、
南米王者アトレチコ・ナシオナルの行く手を阻んだことにより
決勝戦の勝敗への興味は失わせたように思われた。

ところが、一時はレアルを逆転するスリリングな展開にまでになろうとは
鹿島サポーターでさえも一部を除いては思ってもいなかったのではないだろうか。

鹿島アントラーズとして、日本のJリーグのチームとして、また日本サッカーとしても
確実に歴史の一部となるであろう試合がどう展開されたか見ていきます。

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勇敢に戦う姿勢を示した鹿島

BBCトリオの揃い踏みこそならなかったものの、
レアルの破壊力ある攻撃が対戦する相手に脅威をもたらすことに変わりはない。

そのスーパースター軍団を前に、
決勝まで上がってきた鹿島がどう対峙するかが、この試合まずは注目されたところ。

大方の予想は、鹿島がゴール前の人数を増やしてレアルの攻撃を待ち構え
ボールを奪ったらカウンターを伺う展開にするものだったと思われるが、
蓋を開けてみれば鹿島は戦前に予告していた通りにレアルを相手にしても怯まず
前線からプレスをかけることでレアルから時間とスペースを削る選択をした。

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対戦する相手チームが強ければ強いほど
ゴールを脅かされる危険が高まることから引いて守ろうとしてしまうのが常ではあるが、
鹿島はそれを良しとしなかった。

自陣ゴール前で守備をすれば
シュートブロックの飛んだ方向が悪かっただけでも失点する可能性があり、
アクシデントを排除しきれない以上は相手の強力な矛に盾で対抗することは危険を伴うが、
盾ではなく矛で立ち向かおうとすればその恐怖心がどれほどのものであるか想像に難くない。

鹿島は湧き上がるはずの恐怖心を抑えてレアルに対して矛を出すと、
その勇敢な姿勢は確かにレアルから自由を奪ったと言える。

しかしながら、プレッシングの行き着く先はボール奪取でなければならない。

鹿島のプレスはレアルから自由は奪ったものの
ファウルで止めてしまった事でレアルのリスタートから試合は再開されてしまう。

鹿島がプレッシングを効果的に機能させたのだと言い切るためには
ファウルを取られずにボールを奪うことが重要なファクターになるだろう。

リスタートによりプレッシングの機能性を失う鹿島は自陣への撤退を余儀なくされるが、
序盤はレアルのエンジンのかかりが良くなかったこともあり
人数をかけた守備によって自陣でレアルからボールを取り上げる。

ただし、レアルもその場でボールを回収しようとプレスをかけてくるので、
ここで鹿島が蹴り出してしまえば
敵陣でボールを回収することになるレアルが再攻撃へと繋げて
鹿島はボールと共に試合さえも支配される展開となっていただろうが、鹿島は蹴らずに冷静に繋いだ。

蹴らずに繋いで自らの攻撃の時間を作ることで
守備だけに追われるような試合にしなかったところに
この試合に臨む鹿島の覚悟やスピリットが感じられた。

鹿島はSBマルセロの背後へ土居聖真が流れることで反撃の起点を作ると
追い越すSMF遠藤康によってレアルディフェンスからのブレイクスルーを試みるが、
レアルも縦に横にピッチを広くカゼミロがカバーを働かせている。

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レアルはファーストディフェンスからのオーガナイズの不完全さを
カゼミロで危機管理することで解決を図っており、
前線のタレントが攻撃に専念できるのもその存在があるからだと言える。

カゼミロのカバーリングで鹿島の侵攻をストップしたレアルがボールを再び動かし出すと
鹿島もラインを上げて高い位置でのボール奪取を試みているが、
レアルは鹿島のプレスの餌食とならないようインサイドハーフをSBの位置まで下げると、
SBの位置を上げることでパスコースを確保して鹿島のプレスを剥がしにかかる。

その際にレアルが、前線の選手をボールサイドに集めることにより
サイドで局地的な数的優位を作り出してボールを運びやすくしているのは
準決勝のクラブ・アメリカとの試合から変わっていない。

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本来なら左サイドにいるべきはずのクリスチャーノ・ロナウドが右サイドに流れてくると
ボールサイドで明らかな数的不利に陥る対戦相手はボールを奪うことが難しくなる。

そうして敵陣へとボールを運んできたレアルは
サイドチェンジのパスを用いて左右に揺さぶりをかけると、
ブロックを形成する鹿島の守備ラインを押し下げて鹿島の選手間の距離を拡げ、
パスを通すための道を作る作業に入る。

選手と選手の間にスペースを作ったら縦へのスルーパスを狙うレアルに対して、
鹿島は中に絞ろうとする意識が強くなることからサイドにスペースを作る。

スペースの空いたサイドにボールを振ったレアルはクロスボールを入れると、
植田直通が跳ね返したボールを拾ったルカ・モドリッチのミドルシュートはGK曽ヶ端準によって弾かれるも、
ゴール前に詰めていたカリム・ベンゼマが押し込んでレアルが先制することとなった。

鹿島はディフェンスラインを上げて
ゴール前のロナウドとベンゼマのポジショニングをオフサイドにしたいところだったが、
モドリッチのシュートが放たれた瞬間ロナウドはオフサイドだったものの
ベンゼマは最終ラインの昌子源よりも手前のオンサイドになっていた。

昌子のポジショニングに問題があったのであれば正さなくてはならないし、
GK曽ヶ端がベンゼマの前に弾いたことを悔やむならば
その前のモドリッチにフリーでシュートを打たせてはいけなかったし、
モドリッチにフリーの状況を与えた事を悔やむのならば
植田のクリアはもっと遠くに飛ばさなければならなかった。

どこで対応や判断を変えていたならば鹿島は失点を免れる事ができたのだろうか、
失点の原因を突き詰めて改善していくようでないと
鹿島だけでなく
引いては日本サッカー全体の守備スキルも積み上がっていかないだろうと思う。


不足する質を補うための量を確保した鹿島の粘り強い守備

リードされて確実にゴールが必要になった鹿島はプレスを強めてボールを取り上げようとするので、
レアルはショートパスによりプレスを剥がそうとするだけでなく
ロングボールも蹴ることで鹿島のプレスからの回避を試みるようになる。

ただし、ラインを上げた鹿島はこれを跳ね返してレアルからボールを取り上げると
人数をかけた攻撃へと移行する。

鹿島の狙いはボールを運ぶのに引き続き、レアルの左SBマルセロの背後である。

ワイドに開いて横幅を作る遠藤康に土居が寄せると
SB西大伍にはインナーラップをさせることにより、
ワイドに開いたら中を衝き、中を閉じたらサイドを衝く態勢を取ってレアルに迫る。

そうしてマルセロの背後を攻略してクロスボールを折り返すと、
金崎夢生と中に絞ってきた柴崎岳とで合わせることを試みるため、
レアルも逆サイドのカルバハルが中に絞るようになる。

そこで鹿島は左SBの山本脩の位置を上げることで
その外側にフリーマンを作って厚みのある攻撃を演出するが、
鹿島の逆サイドへのパスが精度を欠くと
レアルは自陣ゴール前からカウンターアタックへと移行してくる。

鹿島の仕掛けのところでの西のインナーラップは
そのレアルのカウンターから身を守るためのリスク管理の役割も担っているわけだが、
レアルは低い位置まで下がってくるルーカス・ヴァスケスやベンゼマでパスコースを確保すると
トニ・クロースからダイレクトに最前線に残しているロナウドへとボールを供給するため、
中央へと絞りをかけていたはずの西は寄せることもままならずに
オープンスペースのロナウドへとボールを運ばれてしまう。

クロースやモドリッチから配給されるパスは距離が長くとも精度が高く、
前線に残すロナウドにピンポイントでボールを届けて鹿島を窮地に陥れる。

広くスペースを与えられたロナウドは非常に危険であったが、
鹿島は対応に当たった植田が無闇に突っ込まずに
ロナウドに時間をかけさせる対応をして味方が戻るのを待った。

ボールを持った時のロナウドが
プレーのクオリティを上げられなかったところもあったようには思うが、
すぐに滑ってシュートブロックすることばかりだった日本の選手が
焦らずに時間を稼ぐ守備対応ができるようになったところは感慨深い。

世界一のアタッカーを向こうに回して落ち着いた対応ができたことは称賛に値する。

しかし、ボールが鹿島陣内へ運ばれてしまっている事実に変わりはなく、
全体を押し上げてくるレアルに対して鹿島は押し込まれることになる。

鹿島のブロックの前方でスペースと時間を得たレアルは
今度は近い距離からトニ・クロースとモドリッチがボールを配ってくるだけでなく、
自らボールを持ち運んできたり、後ろから前方のスペースへとランニングしてくる。

特に後ろから前方へと入ってくる選手は
ディフェンスが後ろ向きでの対応になることから捕まえるのが難しいが、
鹿島は振り切られても諦めることなく付いていくことによって
パスコース及びシュートコースを消してGK曽ヶ端を助けていた。

この試合では曽ヶ端のスーパーセーブが鹿島を助ける場面を多く目にしたように感じるが、
曽ヶ端もまたコースを消してくれるディフェンスによって助けられていた側面があったと思う。

レアルの攻撃を凌ぐことができたら鹿島も反撃へと移りたいところで
やはり自陣低い位置から繋いで反撃を試みるも、
鹿島はレアルのファーストプレスはかわしながらも
その次の段階であるボールを前方に運ぼうとするところでのパスの精度が伴わず、
何度もエスケープ手前で頓挫することになる。

ようやく相手陣内深いところまで運べたにしても
ファイナルサードのところを雑にしてチャンスを潰していたように、
レアルのパス精度と比較すると
ボールを持ってからのクオリティの差は顕著であり、
鹿島の課題を浮き彫りにしていたように思う。

ところが、前半終了間際にレアルは緊張を走らせることになる。

自陣内でのレアルのプレスをかわした鹿島は
カルバハルの背後に流れてきた土居にボールを預けて反撃の起点を作ると、
下がってきた土居と前後を入れ変えるようにして後ろから上がってきた金崎が
マークを振り切ってボールを受けて自陣からのエスケープに成功する。

この場面でレアルのディフェンス陣が総じて手を挙げてアピールしていることからも
おそらく土居と入れ替わる際にトラップした金崎にハンドがあったのではないかと推測されるが
主審がファウルを取らなかったために鹿島は攻撃を続けることができた。

そこから土居によって折り返されたサイドからのクロスは一旦跳ね返されるが、
その跳ね返りを拾えたことにより今度は時間が作れてゴール前に人が揃ってくると
もう一度折り返したクロスを受けた柴崎がトラップに失敗しながらも
CBのヴァランも体勢を崩したことによりシュートチャンスを迎えて同点ゴールを決めている。

鹿島のクオリティは運の要素を巻き込む形で確保されたようには感じるが、
体力的にきつい時間帯に柴崎や西がスピードを上げてきたことや
ゴール前では金崎が相手をブロックしていたことなど
クオリティを下支えしていたのは偶発的なものだけでもなかったように思う。

だが、レアルに対してどうしても不足する質を補うためには
鹿島にとっては幸運と共に量が必要でもあったように思うところで、
この同点に至るまでの間を0−1のスコアのまま崩すことなく維持していたことが
鹿島にとって試合を面白くする大きな要因となったと感じる。


地上戦から空中戦へ 「まさか」でなかった逆転劇

1−1のスコアに戻した後半、
鹿島は前半以上に普段着のサッカーをしようとしていたように思う。

後半開始から後ろから大きく蹴り出しボールを自陣ゴールから遠ざけるとともに、
相手の背後にボールを供給してレアルを間延びさせる。

レアルにコンパクトな陣形を作らせずに
間延びした陣形の中でイーブンボールの奪い合いに持ち込むことで
攻撃及び守備を実現するのが鹿島の狙いだったと言える。

勇敢に足元で繋いだ前半とは打って変わって後半になるとロングボールを蹴ってくる、
鹿島が前半と後半とで異なる戦い方を選択したのは今回が初めてではなく
既に浦和とのチャンピオンシップでも披露している。

しかし、鹿島を知らないレアルは同点に追いつかれたことでボールを欲して
前半よりも更に前からボールを取りに来ることになるが、
周囲の状況は前半とは異なりスペースが広がっていた。

縦のコースを消しながら前に出てくるレアルのプレッシャーは脅威ではあるものの、
鹿島は簡単に蹴ってしまうことをせずに
蹴ると見せかけてプレスをいなすとスペースを使って繋いでいる。

その状況判断は見事としか言いようがないが、
この作業において最も輝きを放ったのは右SBの西大伍であった。

平然とレアルのプレスをかわしてボールを前に運ぶことを実現させると
自らも前方へと上がって攻撃に加わることで鹿島の攻撃に厚みをもたらしている。

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サイドでボールを受けた遠藤康の判断が遅かったために攻撃は成就しなかったものの、
もし遠藤康が西へとボールを出していたら
その直後に訪れる歓喜よりも早く鹿島は歓喜に包まれていたのではないかと思う。

ひたひたと確実に背後に迫っていた鹿島の足音に気づいていたかいなかったは知らないが、
レアルはディフェンスの背後へのフィード対応において
戻りながらの対応を余儀なくされたセルヒオ・ラモスが雑に扱うと、
鹿島はそのこぼれ球を柴崎が拾いゴールにつなげている。

この日2ゴール目となる柴崎の
状況を打開した個の力が素晴らしかった事は言うまでもないが、
鹿島の戦術の上に乗っかったところに存在したゴールであり、
逆にレアルは後半の鹿島の変化を感じ取れずに
ラモスを始めとしてそれぞれが雑な対応をしたことにより鹿島の術中に嵌まり込んだ。


本気になったレアル

まさかの鹿島の逆転劇はレアルを焦らせる。

一気にギアを上げてプレーの速度を上げると、
下がってくる右のヴァスケスと左のベンゼマで攻撃のための起点を作って鹿島のプレスを回避し、
空けたスペースへと両サイドバックが追い越して上がってくることで
嵩にかかった攻撃をしてくるようになる。

ワイドに開いて幅を作るサイドバックに対して攻撃の起点を作ったら中へと入ってくるウイング、
このレアルのサイドの構成に対して
鹿島はサイドハーフとサイドバックの2対2の数的関係だけでは対応が難しくなる。

そこで鹿島はCMFの小笠原満男と永木亮太に加えて、
前線からは金崎と土居がプレスバックして
守備ラインを下げながらもボールサイドに人を集めることで対応する。

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鹿島がボールサイドに人を集めることによって
仕掛けを難しくするレアルはボールを一旦後ろまで戻す、
または逆サイドに展開して仕掛けるタイミングを計るようになるが、
鹿島は新たなボールサイドへ切り替えて素早く寄せることでレアルを再びブロックの外へ排除しようとする。

鹿島が粘り強く左右に人を集めることでレアルに仕掛けるのを踏み止まらせるが、
何度も左右に振られることにより鹿島の守備は徐々にボールサイドへの集まりを悪くする。

鹿島の守備がばらけたタイミングで右からヴァスケスが中へと入ってくると、
対応に当たった柴崎が食らいつくも遅れて
最終的にはカバーした山本脩がヴァスケスを倒してレアルにPKを与える結果となっている。

外側から食らいついた柴崎とともに内側の小笠原とでヴァスケスをサンドして
ボックスに侵入される前に対応して失点を免れたかったところであったが、
レアルの左右の揺さぶりは前半から奮闘していた小笠原から体力を奪い
そのタイムリミットを早めていたように思う。


レアルが自ら放棄したアドバンテージ

PKをロナウドが決めて同点に追いついたレアルは一気呵成に突き放したいところ。

しかしながら、ヴァスケスが躍動して引き続き活性化している右サイドに対して
左サイドからの攻撃はマルセロから上がってくるクロスボールに依存するようになる。

幅を作る役割を完全にサイドバックへと受け渡したレアルは
後方のラモスとヴァランの間にカゼミロを落として最終ラインを3バックにし
前線に人数を割いてボールポゼッションを高めようとしていたのは明らかだった。

ベンゼマをトップに上げることによって機能を落とした左サイドは
運動量の多いヴァスケスをトップ下に配置することにより左右をカバーさせている。

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その変化が戦術ありきだったのか
ベンゼマの運動量の低下を受けてのものだったかはわからないが
それにより鹿島の反撃に移るハードルが上がったことは間違いない。

鹿島は自陣でのレアルの嵩になった攻撃を凌がなければならないのと同時に
レアルのボール回収のためのプレスからエスケープすることが必要になる。

レアルの包囲網を突破したい鹿島は小笠原に代えてファブリシオを投入しているが、
狙いとするところは低下した小笠原の運動量を柴崎と土居で確保する事と共に
レアルの包囲網からの脱出にあったと思われるものの、
ポゼッションを高めるレアルの圧力に対してエスケープするまでには至らなかった。

ところが、80分過ぎになってレアルがヴァスケスに代えてイスコを投入すると潮目が変わってくる。

レアルの交代の隙を突いてボールを敵陣へと運んだ鹿島に対して、
自陣ゴール前まで戻っての対応を余儀なくされながらもボールを奪い返したレアルは
一気に最前線へとロングフィードを送っている。

ポゼッションスタイルへの変更に伴って前線をロナウドとベンゼマの2トップにしていたレアルは、
2対2の数的状況となっている鹿島のセンターバックとの間にボールを入れることで
個の力で2対2を制して一気に鹿島ゴールを脅かそうとする。

ロナウドとベンゼマを同数で相手にすることになる昌子と植田には大変な負担となるが
奮闘するセンターバックとGKとで難を逃れると、
カウンターから攻め切ってしまっていることによって
ポゼッションを高める時間を作れなくなったことはレアルからアドバンテージを取り上げた。

カウンターを仕掛けるレアルに呼応するように
鹿島も素早く縦に運ぶことでお互いに陣形を間延びさせることに繋がると、
その攻防で苦しくなったのは意外にもレアルの方だった。

2対2の状況でロナウドとベンゼマが思うほどの成果を挙げられなかった事で、
後ろに下がり過ぎずにミッドフィールドに選手を残した鹿島の人数をかけた攻撃に
レアルディフェンスの方が負担を重くしたように感じる。

そのような展開にあってレアルは、
鹿島陣内へとボールを運んだからには自陣へと下がることのないよう
ボールも鹿島の選手も敵陣に閉じ込めておきたい。

その強い思いがファウルに繋がったようにも感じるが、
ターンしてカウンターへと移行する金崎をラモスが倒してしまった。

既に1枚イエローカードを受けていたラモスに対して
主審がポケットに手をかけた仕草は退場を意味するものだと誰もが思ったところだったが、
カードを出さなかったことで物議を醸すことになる。

おそらくカードを出しても出さなくても議論の対象にはなったと思うが
出すか出さないかの判断する裁量は主審に委ねられていることからして
どちらの判断をするにしても毅然とした態度が欲しかったところではあった。


タイトルホルダーとして名は刻めずも 世界の人の記憶に刻まれた「Kashima」

終盤に鈴木優磨を投入した鹿島は
運動量を武器にしてボールを支配し始めるとあわや勝ち越すまでの場面を作り出す。

鹿島がレアルから金星を挙げられるとしたら
おそらくこのタイミングでゴールすることだったように思うが、
最後までフィニッシュのところで落ち着けずにクオリティを欠いた遠藤康は
ヒーローにもなりえたところでヒーローになり損ねた。

延長戦の前半に入ってしまうと、
落ち着きを取り戻したレアルがボールポゼッションを高める展開となる。

やや持ち過ぎて周りとの呼吸が合っていなかったものの
ボールをキープできるトップ下のイスコの存在は鹿島陣内でボールを回し続ける事に寄与する。

鹿島は自陣でボールを動かすレアルの隙を衝いたファブリシオが
ボールを奪ってスカスカとなっているレアル陣内までドリブルで運び決定機を迎えるが、
カウンターを仕掛けたことによって
逆にオーガナイズを乱した一瞬の隙を衝かれてブロック間にクサビを入れられると、
ベンゼマにターンまでされてスルーパスを供給されてロナウドにラインブレイクを許した。

植田と昌子は外のマークを捨ててでも中のコースを切って
イスコ側にボールを誘導すべきだった。

延長戦に入ったことにより蓄積した疲労と集中力の欠如は
鹿島のディテールを甘くしたように思う。

それでもレアル陣内までボールを運んだ鹿島はセットプレーを得ると
マークを外した鈴木優磨がヘディングで合わせてレアルゴールに迫る。

このシュートが惜しくもバーを叩いたことで鹿島はチャンスを逸すと、
延長前半終了間際にはクロースのシュートミスに反応して
カットしたロナウドにハットトリックとなるゴールを決められて白旗を上げざるを得なかった。

最後は地力の違いが出たというところだったが、
そもそもそこまで接戦に持ち込まれようとは思ってもいなかった。

レアルを本気にさせることができたら、大敗しなければ、
とにかく決勝に進出したチームとして最低限の勝負ができれば開催国の代表としては及第点だろう、
その程度だった鹿島への期待感は試合時間を追うごとに増していった。

レアルから勝利するなど発すること自体が笑われる、
そんな空気がテレビの中からだけでなく自分の中にもあったのは偽りのない事実である。

しかし、鹿島の選手は勝利を信じて疑わなかった。

その強い気持ちが延長までもつれ込む接戦を演出したのだろうと思う。

この鹿島の奮闘は、鹿島の選手にとって素晴らしい経験となっただけでなく、
レベルが低いと指摘されるJリーグに対しても
世界との差を詰められているようには見えない日本代表に対しても
間違いなく刺激を与えるものであった。

フィジカルコンタクトで戦えない、ボールを扱う技術だけしかない、
世界と比較したときには自らの劣っているところばかりが目につくものだが、
もっと頭を使ってクレバーに戦うことができれば十分戦える。

鹿島の奮闘はその可能性を認識させるのに十分だった。

日本は世界のサッカーを知っているけれども、世界は日本のサッカーをよく知らない。

相手が知らないのは、知る必要性も感じていないからこそなのだけれども、
逆にそれは日本にとってマイナスに働くことなくアドバンテージにもなる。

鹿島の奮闘はサッカー選手だけに留まらず、見ている我々をも確実に刺激している。






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posted by ピーター・ジョソソン at 03:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ACL・CWC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

レスターを蘇えらせたラニエリ采配とマン・シティの不安定な最終ライン

ミラクルと言われた昨シーズンから一転して今シーズンは降格圏でもがくレスターシティが
ホームにマンチェスター・シティを迎えた第15節の試合。

レスターはダニー・ドリンクウォーターを累積警告で欠いているのと
期待の岡崎慎司はベンチからスタートとなっている。

マン・シティの方は前節のチェルシー戦で退場処分を受けた影響により
エースのセルヒオ・アグエロとフェルナンジーニョが今節から出場停止処分、
ニコラス・オタメンディが累積で出場停止となっている。

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序盤のマン・シティに欠けていたサイドチェンジ

堅守からの速攻を武器とするレスターと
ボール保持に基づいたスタイルのマン・シティの対戦となれば
試合がどのように展開されるかは想像に難くない。

コンパクトに保ったブロックを構築するレスターを前にして
ボールを保持したら繋いで前進しようとするマン・シティ、
この構図はレスターのホームで行われた試合でも作り上げられることになる。

ブロックを作ったレスターは選手間の間隔を一定の距離に保ちながら
マン・シティが動かすボールに合わせて全体をスライドさせて対応することで、
クサビとなる縦パスの入ってくる中央コースを小さくして
マン・シティのミスを待つ、ミスを誘うことによりボールを奪う機会を窺う。

ボールを保持するマン・シティとしては
ボールを動かすことでレスターの選手を動かして相手ゴールに向かって前進し、
仮にその途中でボールをロストしてもすぐに奪い返して再攻撃へと繋げられるよう
ボールを動かしながら優位なポジショニングを取っておきたい。

マン・シティはボールを保持して前進させる際には
ベースとなる4ー1ー4ー1の布陣を3ー4−2ー1へと変化させている。

4バックの左サイドのアレクサンダル・コラロフをCBと共に後ろに残すと、
右サイドを務めるパブロ・サバレタの位置を上げて
アンカーのフェルナンド・レゲスと並べることにより形作っている。

マン・シティはボールを動かす始点である後方を3バックにし
レスターの2トップに対して数的優位の状況にすることによりボールを動かしやすくする。

また、レスターの2トップと4ー4のブロックの間にはフェルナンドとサバレタを、
ワイドに開いた左右にケヴィン・デ・ブルイネとヘスス・ナヴァスをそれぞれ配置することで、
コンパクトなレスターの選手間の距離を拡げると、
拡げた選手間でインサイドのダビド・シルバとイルカイ・ギュンドアンにボールを受けさせる。

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ブロック間でボールを受けようとすることで相手が中を閉じればサイドが空き、
サイドでボールを受けようとすることで相手を外に引き出せばインサイドもしくは相手の背後が空く。

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4−1−4−1のマン・シティが変化させた3−4−2−1の布陣は
レスターの4ー4ー2の布陣を前にしてボールを動かすには非常に理に適っていると言える。

ただし、4−4−2の10人が一体となるレスターのスライド守備は
それを簡単には許さない。

後方との距離をコンパクトに保ちながらも
精力的にボールへのチェイシングをする2トップのジェイミー・ヴァーディとイスラム・スリマニ。

その後方の4−4のブロックは2トップに連動して中央ルートを封鎖すると、
アウトサイドに全体を素早くスライドさせてマン・シティから時間とスペースを削る。

レスターの素早いスライド守備によって中央とサイドに蓋をされるマン・シティは
ボールを前に運ぶためのルートを失うことになる。

しかし、レスターがボールに対して全体をスライドさせて距離を詰めてくるのであれば、
マン・シティはボールと反対のサイドに広がっているオープンスペースへと運ぶことでチャンスとなるはず。

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ところが、サイドチェンジするだけの展開力に欠けていたこの試合の序盤のマン・シティは
反対サイドにボールを運ぶのに時間を要した。

タッチラインを背にするサイドアタッカーが仕掛けるためには時間とスペースを必要とするが、
その時間とスペースが削り取られることで仕掛けられないアタッカーは
ボールを失わないために後ろに戻すようになる。

自陣に籠るだけの守備にしたくないレスターは徐々にボールを奪う位置を上げてくるため、
マン・シティはボールを動かすために使っていた後方のスペースも徐々に狭められる。

危険な場所でボールを失いたくないマン・シティが前方にボールを蹴り出すようになると
どちらのものでもないイーブンボールとなるが、これを制したのはレスターだった。

前線からのプレスに伴って全体を押し上げてスペースを圧縮すると
後ろから跳ね返したボールもまたイーブンボールとなるが、
レスターはボールの落下点にいち早く反応することにより守備の整わないマン・シティを制した。

最も速くボールに触れたマレズからボールを受けたスリマニのスルーパスに対して
ジェイミー・ヴァーディが抜け出してゴールを決めたレスターが早々に先制する。

この試合開始から3分と経たない間の先制劇を振り返れば、
レスターの前線から連動するディフェンスとイーブンボールへの反応が
マン・シティのそれと比較して上回っていたと言えるが、
相手をボールに引きつけたところでサイドチェンジが打てず
オープンスペースへとボールを運べなかった点で
マン・シティ自身のパフォーマンスに疑問も感じるところ。


露出する高さ問題

先制されたといっても、まだ試合は始まったばかりである。

残されている時間を考えればマン・シティには反撃する機会は膨大にあったが、
直後に生まれたのはレスターの追加点だった。

この試合を読み解くためのひとつのポイントとして
マン・シティの主力選手の出場停止というファクターがある。

中盤の底を務めるドリンクウォーターを累積による出場停止で欠いていただけのレスターに対して、
マン・シティは前節に退場処分を受けたアグエロとフェルナンジーニョに加えて
オタメンディの3人を累積警告で欠いている。

マン・シティにとってアグエロの不在は、相手に与える脅威の部分で痛手だったが、
オタメンディの不在をバカリ・サニャで補ったことにより
マン・シティはこの試合で高さも失ってしまっている。

レスターは高さを失ったマン・シティのウィークポイントを曝け出すように、
ヴァーディとともにスリマニを起用して高さ勝負を挑んでいる。

身長188cmのジョン・ストーンズと187cmのコラロフを避けて
176cmのサニャと173cmのサバレタの右サイドに
188cmのスリマニと178cmのヴァーディをぶつけてハイボールを供給するため、
両チーム間に横たわる高さのギャップが露わになる。

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身長差を利用してハイボールを蹴り出すことで敵陣までボールを届けられるレスターは
空中からボールを運ぶために自陣でマン・シティのプレスの餌食にならない。

敵陣深くまでボールを運び左サイドでスローインの機会を得たレスターは
クリスティアン・フクスがゴール前にロングスローを投げ入れる。

その際CBロベルト・フートが躊躇なくゴール前まで上がってくると、
スリマニの対応だけでも苦慮に瀕しているマン・シティにとって
190cmを超えるセンターバックの存在はカオスでしかない。

185cmのフェルナンド・レゲスとサバレタとで挟み込むようにして対応しながらも
空中戦におけるフートを制御することはできずにマン・シティのゴール前へとボールが送られると、
スリマニから下げられたボールをフリーで受けた
アンディ・キングのミドルシュートが鮮やかに決まってレスターは追加点を挙げるに至った。

キングのミドルは素晴らしいものであったが、
ゴール前のスリマニに対して自由を与えたマン・シティの対応は温かったと言わざるを得ず
失点はその罰を受けたと言える。

ただし、オタメンディに代わってサニャを起用する以上は
高さが欠如することは予め分かっていたはずであり、
マン・シティは高さの勝負となるような場面自体を数多く作らせたくなかったのだろうと思う。

ボールを持ったら前進させながら整然とした配置に付くことを実現し
失ってもすぐに回収するサイクルを作り上げてボール支配を高めたかったところだったが、
前提であるそのサイクルの構築に失敗したことにより相手にボールを渡した結果
ウィークポイントである高さの欠如を露呈させたように思う。

この2失点で留めておけば勝敗に対して可能性は残していたと思うが、
マン・シティは前半更に失点を重ねている。

コラロフから出されたクサビとなるパスが主審に当たってコースが変わると、
偶発的に相手にボールが渡ったことにより
マン・シティは敵陣でのボール回収どころかプレッシャーもかけられずに
ボールホルダーとなったフクスに自由を与える。

自陣でフリーとなったフクスからピンポイントで
マン・シティディフェンスの背後へと飛び出したマレズへとロングフィードが送られると、
センターサークル付近で帰陣を試みたコラロフをヴァーディが体を当ててブロックしたため、
マン・シティはその対応に中央からストーンズがサイドに引き出される。

その動きを見たマレズがボールをダイレクトでストーンズの背後へコントロールすると
体をぶつけられてカバーの遅れるコラロフを尻目にヴァーディが走り勝ち、
飛び出してきたGKをかわして無人のゴールに流し込みレスターが3点目を挙げている。

パスを主審に当ててしまったコラロフには想像力が足りていなかったようにも思えるが
それ自体は偶発であり責められるものではないと思う。

しかしながら、レスターはボールを奪ったらすぐに背後に飛び出すと
その背後に飛び出した選手をしっかりとサポートできており、
両チームの攻守の切り替えに対する意識の違いもスコアに反映されたように思う。


実験か?温存か?良くも悪くも型に嵌らなかったペップ采配

レスターに3点目が入って以降のマン・シティはボールを持ったら素早く動かすことに加えて、
精度はあまり高くなかったものの
試合の序盤には乏しかったサイドチェンジを用いるようになって攻撃を活性化させている。

また、その場でボールを回収するサイクルを作り上げることで
ボールポゼッションを更に高めている。

そのパーセンテージは8割にも迫ろうかというものだったものの、
前半の間に反撃の狼煙となるゴールを挙げるまでには至らなかった。

そこで、3点のビハインドを追うこととなったマン・シティは、
選手交代しないまま配置だけを変えて後半に入っている。

左サイドだったデ・ブルイネをインサイドに移すと
インサイドをダビド・シルバを頂点にしたダイヤモンド型の陣形にし、
それに伴って右サイドだったヘスス・ナヴァスを左サイドに持ってきている。

dss20161213006myboard.jpg

その配置換えは、枚数を増やした中央からの崩しを増やす事と同時に
失った直後のボール回収効率を上げる事を期待したのではないかと思う。

サイドから縦に突破してクロスを上げたとしても、
高さのあるレスターのCBを相手にしてのハイボールのクロスは分が悪ければ、
グラウンダーのクロスばかりを狙っていてもコースを読まれる。

それならば、中央に選手を多く配して
選手間の距離を縮めた中でコンビネーションプレーからゴールを伺い、
例えそれが失敗しても中央で作り上げている数的優位を使ってすぐに回収して
再攻撃へと繋げようとしたのではないかと思われる。

ただし、中央から圧力を強める後半のマン・シティに対してレスターも中を閉じるため、
マン・シティがボールを失わないようにキープしながら動かそうとすれば
スペースの空いているサイドにボールを置くようになる。

後半のマン・シティの布陣は
右サイドから移ってきたナヴァスが左サイドで高い位置を取ってボールに絡むために、
明確に高い位置に人を配置していない右サイドがオープンスペースとなりやすい。

dss20161213007myboard.jpg

右SBのサバレタが位置を上げてくることによってオープンスペースを使うと、
マン・シティはそこからアーリー気味のクロスボールを入れたり、
インサイドにポジションを移したデ・ブルイネらがサイドに流れて
ショートパスからのコンビネーションプレーを使って崩し作業に絡んでいく。

それでもボールをゴールに押し込めないマン・シティは
ナヴァスに代えてラヒム・スターリングを投入するとともに
イヘアナチョに代えてヤヤ・トゥーレを投入、
ヤヤ・トゥーレをワントップに据える大胆なコンバートを披露する。

それが機能していたかと言えば機能はしておらず、
後にはプレー精度を欠いていたギュンドアンに代えてノリートを投入する際
ヤヤ・トゥーレの位置を1列下げている。

点差が開いたままだったので
マン・シティには多少の諦めムードや実験的要素も含まれていたようには感じるが、
カメレオンのように変化させた陣形から繰り出される後半の攻撃は猛攻と呼べるものではあったように思う。


「最高のレスター」に導いたラニエリ采配

時折ゴールを脅かすカウンターアタックを披露していたレスターも
後半は確実に自陣に押し込まれる時間を長くする。

そうした状況を打開するためにレスターが最初に切ったカードは
スリマニに代えて岡崎の投入だった。

ボールを持つマン・シティの猛攻に対して、
レスターは疲労から前半のようにはチェイスできずに
コンパクトさを保って相手のミスを待つ状況になっていたことから、
もう一度前線からボールを追い回すことによって
マン・シティからミスを誘える状況を作り出そうとしたものと思われる。

投入された直後からボールを追いかける岡崎によって
マン・シティのボールホルダーから再び時間とスペースを削るようになったレスターは
連動してマン・シティからボールを取り上げるとカウンターを発動させる。

そのカウンター自体は不発に終わるも、
ジョン・ストーンズがGKラウル・ブラボへ出したバックパスを狙っていたヴァーディが
ボールを奪い取って角度のないところから流し込んだシュートがゴールに吸い込まれて
ヴァーディがハットトリックを達成する。

劣勢の中で挙げたこの4点目のゴールは
レスターの勝利を確定させるものであったように思う。

3点のリードをして試合を閉めようとするレスターに対して、
マン・シティはその後コラロフが直接フリーキックを決めると
更に試合終了間際にはノリートもゴールを挙げて追い上げたものの焼け石に水。

4−2で逃げ切ったレスターがマン・シティから堂々と勝利を収める結果となった。

今シーズンここまでのレスターは降格圏まで落ちてしまっている順位が示すように、
チャンピオンズリーグとの兼ね合いの難しさも手伝ってチームは低迷を極めている。

しかしながら、昨シーズンの躍進が決してフロックでは片づけられないことを
この勝利は示したように思う。

ヴァーディの得点力さえ戻れば、
カウンターに関しては今でもヨーロッパでトップクラスだろう。

昨シーズン最高だったレスターを取り戻した要因は
ラニエリの采配とマン・シティの最終ラインの不安定なパフォーマンスにある。

普段着でないマン・シティに対して
スリマニのスタメン起用とヴァーディを組み合わせることで高さとスピードで勝負すると、
前線から追える岡崎を途中投入することで相手に傾いた流れを引き寄せた。

その的確な采配は「最高のレスター」を引き出すのに役立ったように思う。

ボールを持ちたいマン・シティにとってカウンターチームはアンチテーゼでもあり、
マン・シティは試合の序盤からパフォーマンスを上げられなかったことで
カウンターに特化するレスターの餌食となってしまった感はある。

そのような展開にしないためにも、マン・シティの最終ラインには
ボールを保持した際の確かなビルドアップとともに展開力が欲しかったところで、
イギリスの「デイリー・ミラー」紙でも指摘されたように
ヤヤ・トゥーレの最終ラインでの起用については試合を見ていて全く同じ感想を抱いた。

ボールを捌けて高さも有しているヤヤ・トゥレを最終ラインで起用できれば
少なくともこの試合で生じた問題については解決できるように思う。

ただし、レスターのヴァーディを始めとするプレミアリーグのスピードスターを相手に
ヤヤ・トゥレが背後に広がるスペースを管理できるのかと言えば不安が残るところで、
伝えられている確執と共にそこへの不安がグアルディオラから選択肢を奪っているようには感じる。






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2016年12月06日

細部に宿らなかった強さ

年間総合勝ち点1位の浦和レッズと、
2位川崎を破って勝ち上がってきた3位鹿島アントラーズによるJリーグチャンピオンシップ決勝の2ndレグ。

1発勝負ではなくホーム&アウェイ方式での決着なので先に整理しておくと、
浦和が鹿島のホームで行われた1stレグを先勝しているため
今回鹿島をホームに迎えた浦和は2ndレグで勝つか引き分けるかで優勝が決まることになる。

逆にアウェイの鹿島が勝つためには2ゴール以上を奪っての勝利が必要な状況となっていた。

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鹿島のプレスを無にするGK西川周作のロングフィード

ホーム&アウェイの2試合で決着をつけようとした時、
得失点で並んだ際に優劣を決定するアウェイゴールの存在は
ゲームをプランニングする上で大きなウェイトを占めてくる。

守備的になりがちなアウェイチームからは積極性を引き出せる反面で
ホームチームはアウェイゴールを取られまいとしてリスクを冒しにくくなる。

鹿島のホームで行われた1stレグの試合も
アウェイゴールに支配されるかのように鹿島がスコアを硬直させる試合となった。

しかしながら、ホームとアウェイを変えて臨む2ndレグではその立場が逆になる。

ましてやアウェイとなる鹿島は1点ビハインドを追っている状況でゲームプランに選択の余地がない。

逆にホームの浦和には選択肢ができる。

ゴールの欲しい鹿島が前からの圧力を強めてくることはわかっているので、
自らボールを保持して進めるのか、
それとも鹿島にボールを渡して自陣に引いてカウンターを狙うのか、
選択肢があるだけに迷うところもある。

その浦和の迷いは、中盤における激しい球際の攻防に対して、
背後に広がるスペースを警戒してリトリートした最終ラインの姿に表れる。

前後のコンパクトさを失う浦和は
鹿島の2トップに時間とスペースを与えて鹿島を自陣に招き入れる。

それでも、自陣ゴールに近いところまで全体の位置を下げて人数をかけた守備をすることによって
浦和は鹿島の攻撃を切ってボールを持つようになる。

ボールを失った鹿島はプレーが続いても続いてなくとも
高い位置からプレスをかけてボールを奪い返そうとするが
過度なプレスは自らの首を締めることを知っているため、
金崎夢生と土居聖真の2トップに加えてボランチの小笠原満男が前に出ることで
GK西川周作に近い距離からコースを消しながら徐々に浦和を追い詰める。

バランスを保ちながら前から圧力を強める鹿島のクレバーなプレスは西川に蹴り出す事を選択させるが、
西川から放たれるロングキックは前線の大外にポジショニングをとる関根貴大へとフィードされる。

dss20161206002myboard.jpg

浦和は正確なキックを蹴られる西川の存在により
ショートパスを諦めてもなお繋ぐことは諦めないでいられる。

その反対に、プレッシャーをかけて浦和からボールを離しながらも
ボールを奪えずに自陣へと運ばれてしまう鹿島は
5トップの浦和に4バックで対応するため人数が足りなくなる。

ボールコントロールする関根の対応にSB山本脩斗がサイドに引き出されると、
CB昌子源とファン・ソッコは武藤雄樹と興梠慎三を、
逆サイドのSB西大伍は高木俊幸への対応で一杯一杯となる。

浦和の5人目を作るボールサイドと反対サイドのWB宇賀神友弥は
関根のサイドからボールが運ばれると中に絞りながら下がってリスク管理へとシフトしているが、
ボールが折り返されれば後ろに下がった位置からゴール前へと入ってくるため
やはり鹿島は最終ラインの対応だけでは人が足りなくなる。

安全に守備をするのであれば相手の攻撃の数よりも1人多い数を用意して対応するのがセオリーであるが
4バックの鹿島は最終ラインの選手だけでは5トップの浦和に対して人が足りないため
2列目から補うことになる。

鹿島のホームで行われた1stレグでは
ボランチの小笠原と永木亮太が1人ずつ最終ラインまで下がることでこれに対応していたが、
1stレグと違って2ndレグでは前からボールを奪うために小笠原の位置を上げているため
永木まで最終ラインへと下げるわけにはいかない。

dss20161206003myboard.jpg

そうなると鹿島はサイドのMFを下げるしかなく、
後からゴール前に入ってくる宇賀神には右SMF遠藤康が戻ってカバーする形で対応している。

ただし、サイドハーフが下がってしまえば反撃の起点が2トップに限定されてしまうため
鹿島は低い位置から脱出する事を難しくすることになる。


約束事を守るべきか破るべきか

カツカツのこの状況で守備をすることは鹿島にとって危険と隣り合わせであったと言えるが、
ビハインドを追っている以上はボールを浦和から取り上げるために前からプレスをかけるしかなかった。

それだけに、鹿島は前線からはオーガナイズした組織で連動したプレスをかけながらも
ボールを運ばれてしまった際には約束事に縛られないスクランブルでの対応も必要だったし、
前半早々の浦和のスローインから始められたリスタート時もそうした対応が求められたように思う。

関根のスローインからニアゾーンへ侵入した高木の対応に
鹿島は昌子が引き出されたためゴール前はファンと西に興梠と武藤の2対2になると、
興梠と武藤が交差してゴール前に入ってきたことによって
ファンと西がともに武藤につられて興梠をフリーにして浦和にゴールが生まれた。

この場面でまず問題となるのは、
関根のスローインに対していち早く動き出した高木へのマークを
山本脩への指示だけに留めて自らは付いて行く姿勢を示さなかった永木の判断と、
スローインする関根にばかり気を取られていた山本脩の対応だろうと思う。

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永木が山本脩に指示を出していることからも、
小笠原が前に出ているために永木自身はできるだけ中盤から離れたくなかっただろうし
それがチームとしての約束事だったとは思うが、
指示が伝わっておらず山本脩が動き出さなかったのであれば
永木自ら動いてまずは高木をサイドに追い込んでおくべきだったと思う。

dss20161206004exmyboard.jpg

ただし、昌子のカバーリングによってこれに対応して高木の更なる侵入を食い止めると、
折り返されたボールに対してゴール前は2対2の状況になっているので
鹿島は十分ではないけれども最低限守れる状況にはあったとは思う。

しかし、鹿島はCBファンが興梠をマークすると
後ろから斜めに入ってきた武藤に対して西が付いていたが、
興梠と武藤が交差してゴール前に入ってくると
武藤をマークし続ける西と共にファンも武藤にマークを変えてしまって
ファーに逃げた興梠をフリーにしている。

ゾーンで守備をするのであればファンの対応が正しくて西が追いかけ過ぎ、
マンツーマンであれば西の対応は正しくファンは興梠のマークを離すべきでなかったが、
咄嗟の判断を迫っているという点で武藤と興梠の交差するランニングが見事だったと言うべきだろう。

やはり鹿島が悔やむべきはその前の段階で浦和を食い止めておくべきであり、
永木には約束事に縛られ過ぎない柔軟な姿勢が欲しかったところだったと思う。


球際を支配した小笠原満男と永木亮太

浦和が1stレグとの合計で2点をリードしたことは鹿島に心理面での圧迫は与えたとは思うが、
この試合の鹿島が2ゴール必要なことには変わりない。

喫緊の優先事項をより明確にした鹿島は前からのプレッシングを強めて浦和に蹴ることを促し、
蹴らせたらディフェンスラインを上げる事でスペースを狭めてボール回収の効率を上げる。

それによりボールを保持できたら両サイドバックのポジショニングを上げて
浦和の5バックを押し込めてボールの支配を試みる。

鹿島は両サイドバックで横幅を取り始めるとトップ下の土居をボランチ裏に配置、
また前半途中からは左SMF柴崎岳を頻繁に中に絞らせている。

柴崎を中に絞らせた意図は、
土居の位置を上げることで前線を2トップにして浦和の3バックを足止めする事と、
浦和のカウンターを未然に防いでボールポゼッションを高める事にあったように思う。

dss20161206005exmyboard.jpg

特に両サイドを上げる前の段階から既に横たわっていた
浦和のカウンターに対する防御の必要性に鹿島は迫られていたと言える。

浦和のボランチの阿部勇樹と柏木陽介に対して鹿島は小笠原と永木で対応したとしても、
低い位置に押し込めた両サイドのシャドー武藤と高木が繋ぎに加わると
マークが及ばずにどうしても空いてしまう。

dss20161206005myboard.jpg

それに加えて、浦和に2点リードされて両サイドバックを上げ始めている鹿島は
ボールを動かす作業と回収する作業をボランチとセンターバックに依存し、
ボールが動かしやすくなるようボランチの小笠原はCBの近くに降り永木はサイドに移動しているため
クサビのパスを奪われるようなことになると前線との距離が開いている状況にある。

dss20161206006myboard.jpg

ただでさえ浦和にカウンターを許しやすい状況に更に回収しにくい状況を上乗せしたことで
ボールポゼッションを高めるどころか
浦和のカウンターによって点差が開いてしまう危険性を抱えていたため、
柴崎を中に配置することによってそれを回避する意図もあったように思う。

その変更によって鹿島が浦和陣内にボールを留めるシーンは確かにあった。

だが、柴崎のプレスバックで浦和陣内で辛うじてファウルで止めるのが精いっぱいで、
背後に大きく広がるスペースを完全にコントロールするには至っていない。

反撃する機会を得て全体を押し上げてくる浦和は
ボールを鹿島陣内に閉じ込めてポゼッションを高めようとする。

しかしながら、小笠原ひとりに球際で負けてボールキープを許すと
浦和は再び撤退を余儀なくされる。

永木からボールを受けたファンの前線へのフィードでボールを運んだ鹿島に対して
前後が間延びする格好となる浦和は宇賀神が遠藤康に競り負けて突破を許すと、
その対応に槙野智章がサイドに引っ張られ、
スピードを上げてゴール前ニアに入ってきた柴崎に遠藤航と森脇良太がつられて
ファーサイドでフリーで待ち構えていた金崎に押し込まれた。

ボール支配率を高めるスタイルを標榜する浦和の守備は敵陣でのボール回収にある。

そのためにはボールを回収できるよう予め優位なポジションを取るべきであるし、
プレスを怠るようなことはあってはならないし、球際で負けてはいけない。

しかしながら、球際の攻防で存在感を発揮したのは浦和の選手ではなく
自陣に戻ってきた鹿島の永木であり小笠原であり、
この低い位置での球際の攻防を制したことが鹿島にとって大きかったと思う。


空中戦に持ち込む鹿島と地上戦へとシフトした浦和

前半の間に1対1に追いつけたことで鹿島は落ち着きを取り戻す。

ただし、もう1ゴール必要な状況ではあるので
前からプレスをかけたらディフェンスラインを上げてボール回収の作業効率を高めることを継続しながらも、
ボールを持った際には左SBの山本脩は高い位置に上げて
右SB西の位置はあまり上げずにバランスを取るようになっている。

もう1点取らなければならないけれども
逆にまた失点するようだと苦しくなることからすれば、
鹿島が殴り合いの姿勢からバランスを取り始めたことは必然だったと思う。

それにより、西のサイドは空かないけれど山本脩の背後は頻繁に空くため
浦和の狙いは鹿島の左サイドへと照準が定められるが、
飛び出してくる関根に対して鹿島は昌子、ファン、西の最終ラインがスライドカバーし
必要とあれば逆SMF遠藤康の位置を下げることで対応する。

右肩下がりの鹿島の布陣はボール回収の位置を低くするも、
左サイドでは金崎と土居の2トップと柴崎を前線に残しているため
ボール回収した後にはロングフィードを蹴ることによって逆に浦和の3バックに同数での対応を迫っている。

その鹿島に対して、浦和は後半序盤は押されるところはあったものの、
ロングフィードを用いた前半とは打って変わって後ろからショートパスを繋ぎ始めると状況が変化する。

右肩が下がって左肩の上がった鹿島の布陣は
前半のように連動してコースを切ったプレスをかけづらくなった。

dss20161206007myboard.jpg

ショートパスを繋いでボールを鹿島陣内へと運んだ浦和は
左から右、右から左にボールを動かすことで逆サイドでスペースと時間を得ると、
遅れて下がって陣形の整わない鹿島に対してボールを支配し
裏に抜けた宇賀神のクロスから高木が決定機を迎えるまでに至っている。

そこで鹿島は前半から長い距離上下動した遠藤康を諦めて鈴木優磨にスイッチすると
鈴木の頭にボールを集めてボールを運び始める。

対して浦和は、高木に代えて青木拓矢を投入すると
柏木の位置を一つ上げて守備負担を軽減してロングフィード対応を強化するとともに、
関根に代えて駒井善成を投入することで山本脩の背後を衝くことも忘れなかった。

更には興梠に代えてズラタンを投入し、ボールを預けて前線で時間を作ることによって
引いて受け身にならずに時計の針を進めようと先手を打った。

その後に鹿島が利いていた小笠原を代えてしまったことには疑問符が付くが、
浦和のペトロビッチ監督が切った交代のカードはいずれも納得できるものではあったように感じる。


浦和を優勝から遠ざける雑なディテール

ところが、浦和は鹿島陣内にボールを運んでポゼッションを高めようとした場面で
森脇が金崎のプレスバックに遭ってボールを失うところから失点してしまう。

柴崎からクサビのパスを受けた土居が左サイドを上がってきた山本脩にボールを送り
その山本脩から前方に走りこむ土居へのリターンパスがそれると槙野がボールに触れず
右サイドからダイアゴナルに中に入ってきた鈴木に拾われて独走を許したことで
後ろから槙野がファウルで止めて鹿島にPKが与えられた。

このPKを金崎が決めて鹿島がとうとう必要としていた2点目を挙げることになるが、
この失点の責任の所在を槙野ひとりに求めるのは無理がある。

まず浦和がボールを支配できる状況にありながらもできなかったのは
鹿島陣内での阿部の立て続けの2つの軽率なパスがある。

最初のパスでは味方選手のフォローによって事なきを得ているが
金崎が背後に迫っていたにも関わらず森脇へ出した2つ目のパスの判断は
確実に浦和の失点の入口を作った。

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そして、個人的には槙野以上に問題だったと感じるのが
鈴木を視界に捉えて距離も近かったはずの宇賀神の対応である。

ダイアゴナルに走りこんだ鈴木に対してタイトに付いていくことをせず
槙野のミスを失点に直結させた。

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背後への警戒を怠った槙野の判断は責められて然るべきではあるが、
その判断ミスから失点する状況を作り上げたのは槙野ひとりではなかった。

浦和がもっとタイトルを取ろうとするならば
こうした先端にまで神経を張り巡らせる必要があるように思う。

これで逆にゴールが必要になった浦和はその後、槙野を前線に上げてパワープレーを敢行するも
機能するところを見せることなくゴールには至らず、タイトル獲得を逃す結果となっている。

2位以下を離して掴んだはずの年間総合1位の肩書は
むなしくも鹿島のタイトル獲得に蓋をされることとなった。

この結果は、年間3位からでもタイトルを獲得した「勝負強い鹿島」に対して
強いはずなのにここ一番で負ける「勝負弱い浦和」のレッテルを貼る。

しかし、両者を分けたのは決して都市伝説的な何か不明瞭なものではなく
全てにおいて相手以上にディテールを追求しきれたかどうかにあったように感じる。

ただし、その積み重ねをしたことで最も勝ち点を積み上げたはずの浦和が
タイトルを逃したことについてはやはり理不尽さを禁じ得ないところであり、
Jリーグが来シーズンから再び当たり前のあるべき姿を取り戻すことは歓迎したいと思う。






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posted by ピーター・ジョソソン at 16:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ・天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする