2016年10月26日

コンテと共に先へ進むチェルシー

「スペシャル・ワン」に「ハッピー・ワン」
就任時には自らをそう称してチェルシーに数々のタイトルをもたらしたジョゼ・モウリーニョ。

ところが、成績不振から蜜月にもあったチェルシーとの関係を解消せざるを得なかった元指揮官が
1年も経たない内にスタンフォード・ブリッジへ帰還した姿は敵将としてでした。

クローズアップされるモウリーニョとチェルシーを巡るエモーショナルな関係に
多くの人は感傷的にもなったところですが、
ピッチというスクリーンに映し出されたのは非情なまでの現実だったように感じます。

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今シーズンからアントニオ・コンテに率いられているチェルシーが
ここへきて選手起用と布陣選択において最適解を導いて結果を出しつつあるのに対して、
モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドは未だ手探りの最中。

キャプテンに指名しておきながらスタメンから外すウェイン・ルーニーの起用に関する問題は
その象徴的なできごとであるとも言えますが、
ユナイテッドにとっての最適解が見えてこないのが現状だと思います。

そうしたチーム状況が反映されたのか、
ユナイテッドは試合開始直後にチェルシーのファーストアタックで失点をしてしまいます。

チェルシーの攻撃の始点となったボールホルダーの
ガリー・ケーヒルに対して十分にプレスがかかっていなければ、
クサビを受けに下がってきたエデン・アザールを潰せていないだけでなく、
マルコス・アロンソのパスに対してディフェンスラインの連係ミスで
ペドロ・ロドリゲスに背後を取られてしまっている。

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あっさりと背後を取られるユナイテッドの守備の脆さには首を傾げたくなるところではありますが、
まずはこの試合のユナイテッドがチェルシーの攻撃をどのように想定して
守備の設計をしていたのかを知るためにも整理しておく必要があります。


モウリーニョ・ユナイテッドの守備設計

3バックがメインの布陣となりつつあるチェルシーは、
前線ワントップに攻撃の基準点となるジエゴ・コスタを置くことで
ユナイテッドの両センターバックを足止めすると、
コスタの存在によって前に出にくいユナイテッドを尻目に
エデン・アザールとペドロ・ロドリゲスをバイタルエリアに解放する。

チェルシーは後ろを3バックにしていることで
サイドのウイングバックの位置を押し上げられることから、
4バックで対応するユナイテッドは布陣上ギャップを被ることになる。

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そのため、4バックのチームが3バックシステムの相手と対峙した際には
相手の5人目の選手を如何にして捕まえるかを考える必要があります。

ユナイテッドがこの試合で用意した解決方法は、
両サイドに配置するジェシー・リンガードとマーカス・ラッシュフォードで
チェルシーのウイングバックをケアすることであり、
4バックに加えて両サイドが下がることによってギャップを生じさせない対応をしています。

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つまりは、この試合のユナイテッドの守備の仕方から浮かび上がってくるのは
ボールを相手に渡した戦い方です。

ボールをチェルシーに渡したら
自らは守備を整えてパスコースを奪い相手のミスを待つ・誘う、
言ってみればモウリーニョが得意とするスタイルのサッカーです。

先日はハリルジャパンがこのサッカーを選択して言われもない批判を頂戴していますが、
相手に主導権を握らせるサッカー自体は非ではありません。

オーストラリア戦のハリルジャパン同様に
この試合のユナイテッドもまたアウェイ環境であったことからしたら、
相手にボールを渡してしまう戦い方は
試合を勝つために必要なひとつのストラテジック・チョイスであるといえます。

ただし、ボールは相手に与えても主導権は渡してはならず、
例えボールを持たれていても持たせるようにしなければならない。

ボールを持た「せ」ているのか、それとも持た「れ」ているのか、
その違いを判断する材料となるのが「仕掛け」の有無だと思います。

オーストラリア戦の日本で言えば香川真司と原口元気とでサンドイッチするところであり
反対サイドなら山口蛍のボールを奪う個の能力のところで、
あえてオーストラリアのインサイドの選手とは距離を取って
ボールが縦に入ってきたら左は数的優位、右は山口個人の質的優位を使って
罠を張って待ち構えていました。

この試合のユナイテッドの場合は、
チェルシーの3人のセンターバックに対して距離を取ってボールを持たせたら、
近距離に当たるセンターMFエンゴロ・カンテとネマニャ・マティッチに対しては
マルアン・フェライニとポール・ポグバで対応し、
サイドMFは前述したようにウイングバックをケアしています。

コンテのサッカーはこれまで率いてきたユヴェントスでもイタリア代表でもそうであったように
最前線の選手にボールを当てるところから攻撃をスタートさせるため、
クサビのターゲットとなるところに数的優位を作って絶えず人を捕まえるようにし
縦に入ってきたら潰すという罠を仕掛けておいたというのがこの日のユナイテッドであり、
チェルシーに対して意図してボールを持たせようとしていたと思います。


設計書を破ったスモーリング

それを頭に入れた上で失点した場面を振り返ってみると、
ボールホルダーのケーヒルには十分にプレッシャーがかかっていないのは
意図したもので必然であり、そこには何の問題もなかった。

問題となるのはそれから先で、ボールを受けに下がってきたアザールに対して
アンドレ・エレーラの反応が少し遅れてクサビを受けさせてしまっている。

本来、仕掛けを作ったからにはそこでボールを奪わなければならないものの、
アザールの俊敏性やボールを扱うクオリティを考慮すれば
エレーラひとりでボールを奪い切れる時ばかりではなかったと思う。

仮に奪えなかったとしても、相手に前を向かせないようにプレーを限定させることが大事であり、
エレーラは遅れながらもアザールを追い込んでいることからしても
最低限の役割は果たしていたと感じます。

ボールをコントロールしたアザールから
クサビを落とされたWBマルコス・アロンソに対してはヴァレンシアがプレッシャーをかけており、
アロンソは後ろに戻さないでもしない限りは
ユナイテッドディフェンスの背後にボールを出すしかなかった。

パスコースが見つからずに相手がユナイテッドディフェンスの背後に蹴ってくるようであれば
ユナイテッドはボールの回収ができるので計算通りとなるはずでしたが、
そうならなかったのが試合開始直後の失点シーンだったと思います。

ペドロに背後を取られたダレイ・ブリントは
最終ラインをマネジメントできるクレバーな選手であることに疑いはないものの、
守備者として見ると対人守備では強くない。

それだけに隣のクリス・スモーリングが体をぶつけてでも
ブリントとともにサンドしてペドロを潰す対応があって然るべきところでしたが、
避けてしまったためにペドロのコントロールを失ってしまった。

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ユナイテッドが相手のクサビのパスを潰すことをするがゆえに
パスコースのないチェルシーは背後へとボールを出してくる、
そこまでは予め想定できていたはずであることからすれば
スモーリングの対応はあまりに稚拙だったと言わざるを得ません。


試合を優位に進めたチェルシーの状況を読み取る判断

開始早々からビハインドを追ってしまったユナイテッドは前からボールを追わざるを得なくなる。

ユナイテッドが相手から時間を奪うことによって
高い位置でボールを回収して攻撃につなげるようになれば、
チェルシーも無理には繋ごうとはせずにロングボールを用いてボールを運んでくる。

手段が何であれボールが自陣に運ばれてしまえば、
4バックのユナイテッドがチェルシーにギャップを与えないようにするには
サイドMFが一定のタスクを負うために下がるしかない。

自陣に下がっての守備を強いられれば、
リンガードとラッシュフォードがサイドのケアで張りつけになるため
ユナイテッドの陣形は6−3−1のような陣形になる。

最前線がイブラヒモビッチひとりとなることで
チェルシーに与えるプレッシャーを確保しにくくなるユナイテッドに対して、
全体を押し上げてくるチェルシーは
ユナイテッドの6−3−1の陣形の2列目の「3」の前方で
右に左に左右にボールを動かす事で「3」の横にスペースを得るに至る。

チェルシーはここに両サイドのCBケーヒルまたはアスピリクエタを上げてくると
ユナイテッドはポグバ、フェライニで対応することになる。

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しかし、それにより、ポグバとフェライニがマッチアップしていた
カンテもしくはマティッチはマークから外れてフリーとなり、
最前線へと還元されることによってユナイテッドの最終ラインに対してカオスを与える。

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そうした中で獲得したコーナーキックからチェルシーは追加点を奪っています。

ユナイテッドのコーナーキックの対応自体に問題がなかったわけではありませんが、
後ろからクサビのパスが入りにくい状況で無理に縦パスを入れていくのではなく
ロングボールで全体を押し上げて攻撃を仕掛けるようにしたからこそ
獲得したコーナーキックでありゴールであって、
そこに至るまでのチェルシーの判断が試合展開を楽にしたと感じます。


戦況が悪化するユナイテッドは仕掛けを作って待ち受けているわけにもいかず
前からの圧力を強めて高い位置でのボール回収を試みます。

反撃したいユナイテッドの攻撃の核となるのは
言うまでもありませんがズラタン・イブラヒモビッチです。

武器であるその高さを生かすためにも
チェルシーの最終ラインで最も高さに不安のあるセサル・アスピリクエタにロックオンして
マッチアップする状況を作り出したところにクロスボールを供給するというのが
ユナイテッドの攻撃の中心になっていたと思います。

ところが、待っていてもボールが自身のところにまで届いてこない状況
もしくは届いてもあっという間に囲まれる孤立した状況から、
イブラヒモビッチは自ら中盤に下がってボールを受けるようになる。

イブラヒモビッチが下がることでユナイテッドは時間を作ることができるようになるものの、
今度はサイドに展開したところから
イブラヒモビッチがゴール前に上がってくる時間が必要になるというように
必ずしもユナイテッドの攻撃は機能的であるとは言えなかったように感じます。

ただし、それでも右サイドのヴァレンシアがドリブルで仕掛けることで
クロスボールが上がってくればわかっていても対応が難しくなるため、
チェルシーはクロスボールを簡単に上げさせないように一旦自陣に全体が引く選択をするようになる。

そうなるとボールを敵陣に閉じ込めようとするユナイテッドと
その状況から脱しようとするチェルシーとの間で攻防が繰り広げられることになりますが、
チェルシーは3バックで中央を固めていることから
後方からの出足と2列目からのプレスバックによって
中盤を圧縮することで数的優位を得やすい状況にある。

またワントップのコスタのコントロールという部分でユナイテッドの対応も十分でなかったので
ユナイテッドのプレスからボールとともにエスケープを果たすチェルシーは
長い距離のカウンターを仕掛ける。

肝心なところでコスタとペドロの呼吸が合わずカウンターは不発に終わっていますが
2点リードをしたことからすれば相手を引き込んでカウンターを仕掛けることは常套手段であり、
やはりここでも状況に即した判断をするチェルシーの姿があったように思います。


変化を迫られるユナイテッドを手玉に取ったチェルシー

前半に2点リードされたユナイテッドは後半フェライニに代えてフアン・マタを右サイドに投入し
ラッシュフォードをイブラヒモビッチの横に並べて布陣を4−4−2に変更します。

ゴール前に脅威を与えるため、高い位置でボール回収するため、前線で時間を作るため、
リードされたチームにとっては必要な決断だったと思います。

しかしながら、守備位置を上げたかったのはチェルシーも同じで、
前線に人を増やしてきたユナイテッドを相手にして
前半のように全体が引いて受け身になってしまえば抜け出すことが困難になる。

そのためにより積極的にプレッシャーを与えてユナイテッドのボール保持から時間を削り
クロスボールを上げさせない態勢を取りつつしっかりと中を固めてイブラを封じたら、
ユナイテッドの背後にボールを出してゴールから遠ざけてラインを上げる。

作り直しをさせられるユナイテッドは4−4−2の布陣にしていることから
ボールを運ぶにあたっては前線の2トップにボールを預けようとするため、
チェルシーは上げているディフェンスラインからダビド・ルイスが前に出てボールを収めさせず
ユナイテッド陣内にボールを押し返す。

ボールを押し返してどちらともつかない状況を作り出したところでマイボールにすることができれば
守備を整えられないユナイテッドに対してチェルシーにはスペースが与えられる。

ただし、チェルシーはそこで攻め急がないから秀逸である。

スペースを埋めようとするユナイテッドに対してチェルシーは後ろからの攻撃参加を促すと
両チームの間に横たわっていたギャップが再び姿を現す。

ユナイテッドは前半、両サイドのMFにウイングバックをケアさせることでギャップを消したけれども、
陣形を変えてしまっていることから
前半同様に両サイドMFが下がってしまえば中盤中央のポグバとエレーラの2枚は裸同然になってしまう。

その状況で、曖昧なポジショニングを取るシャドーの選手であったり
ポジショニングを上げてくる左右のセンターバックをどう捕まえるか整理しなければならず、
解決策を見出すことができないままチェルシーに3点目、4点目と献上することとなりました。

試合の方向性を決めたのは開始早々のユナイテッドの自滅だったと思いますが、
ゲームをコントロールするだけの状況判断という部分でチェルシーの方が長けていたと思います。

ユナイテッドは内容以上に結果を求め
ある意味では勝つことこそが積み重ねとなるチーム事情に対して
半分も勝てていない現状は厳しいと言わざるを得ません。

勝つことに特化しながらも勝てないようではモウリーニョの価値は無いに等しく、
その立場は非常に危ういものとなっているように感じます。






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posted by ピーター・ジョソソン at 17:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | イングランド プレミアリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月20日

敗者なきピッチ

ちょっと遅くなってしまいましたが
今年から名称を変えて行われることとなったYBCルヴァンカップの決勝
浦和レッズ対ガンバ大阪の試合をみていきます。

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序盤の攻防を制したガンバの連動性

浦和レッズとガンバ大阪、
この試合に臨むにあたってのお互いのゲームプランは非常によく似ていたように思います。

できるだけ自陣ゴールに近づけないよう
相手陣内高い位置で守備をしてリスク管理することが約束事になっており、
ボールを相手陣内に運んだら閉じ込めようとする両チームの姿がありました。

しかし、お互いに相手陣内にボールを閉じ込めようとすれば
図らずも自陣ゴールに近いところでのプレーも強いられます。

自陣ゴールへの距離を近くしてかけてくる相手のプレッシャーの餌食になれば
ショートカウンターを受ける危険性が高まることからしても、
自陣でのプレーを強いられる際には
一刻も早くボールを相手の包囲網の外に出して危険を回避しなければなりませんが、
安易にボールを手放してしまえば再び守備に追われる。

そのため、お互いに似たプランをもって試合に臨んだ両チームが解決しなければならなかったのが、
相手陣内に運んだらボールを閉じ込めておくこと
自陣でのプレーとなったら危険を回避しつつボールを失わずにキープすること、だったように思います。

同じ課題を突きつけられた両チームでしたが
より良い解答を示したのはガンバの方でした。

後方から大きく蹴り出して浦和陣内にボールを運ぶと、
前線から浦和のボールホルダーに対してしつこくプレッシャーをかけ
後ろはラインを上げて縦にボールが入ってきたところを出足よく前に出て潰す。

前でプレッシャーがかかったら後続もラインを上げてスペースを狭めることは
ボールを相手陣内に閉じ込めようとしたら当たり前のことなのだけれども、
それぞれのプレーのタイミングがバラバラになることなく
ガンバの選手の動きは連動していたためより機能的で、
浦和は試合序盤にはほぼ攻撃へと移ることができなくなっていました。

それでもプレーが切れればガンバはプレッシングを一旦控えて守備を整えるため
浦和はボールを落ち着かせてガンバ陣内に攻め入ることになり、
やはり浦和もガンバ陣内にボールを閉じ込めようとします。

しかしながら、ガンバはボールを相手陣内に閉じ込める作業と同様
ボールを繋ぐ作業においても意思疎通がより図られているといった印象で、
それぞれが球離れを早くするワンタッチパスを使って浦和のプレッシングを回避する。

事前の意思の疎通とボールコントロール技術を駆使して
ゲームプラン通りに試合を進めたのはガンバの方であり、
試合序盤の攻防を制したガンバが主導権を握るようにして試合を進めていきます。


悪癖を出した浦和

ガンバが連動したプレスで相手陣内にボールを閉じ込めながらも、
ボールが落ち着きさえすれば浦和はその可変システムによりボールをキープします。

後方に阿部勇樹と柏木陽介が下がって組み立て
サイドにセンターバックとウイングバックを配置する浦和の陣形に対して、
無理に前から奪いに行こうとすればガンバは後方で破綻をきたします。

ボールを落ち着かせて前進してくる浦和に対してガンバは自陣に引くことになると、
4バックのまま試合に臨んでいるために浦和の5トップがギャップになります。

4バックのチームが数的不利を根本的に解決しようとしたら
昨シーズンのボルシア・ドルトムント対バイエルン・ミュンヘン戦で
トーマス・トゥヘルとジュゼップ・グアルディオラの両指揮官共にそうしたように
自らも5枚にする以上の解決策は現状考えにくい。

しかしながら、普段4バックのチームがその試合だけ5バックに変えれば
日常の光景を失うことにもなって自らの特長も損なう可能性も出てくる。

相手の長所を消すことと自らの長所を消すことをガンバが天秤にかけたのかは知りませんが、
5トップの浦和に対して4バックのまま試合に臨むためには相応の対応策が必要になります。

4バックのまま5トップの相手に対応すれば
最終ラインのところで1人足りない状況が生まれるため選手を他から補充する必要が出てきますが、
それぞれがポジションを放棄してしまえば元々の位置にスペースを作ってしまう。

そこでガンバは、4バックがペナルティエリアの幅で守備をし
ウイングバックにボールが入ってきたらできるだけサイドMFが戻って対応しながら、

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サイドMFが遅れるようであればサイドバックもしくはボランチが対応して
遅れてきたサイドMFはボランチのスペースを埋めるというように
ボールサイドに近い位置の3つのポジションの選手が連携してギャップを隠していました。

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そのためにブロックの前方では浦和の選手をフリーにしてしまうところはありますが
ギャップは露わになりにくい。

そうした状況にある中で攻撃にアクセントをつけようとしたのか、
ガンバのブロックの前でボールを受けた槙野智章が
後ろのカバーリングが十分でない状況で仕掛けた結果ボールを失ってしまった。

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浦和は失ったボールの回収を試みるも、
ワンタッチで繋いだガンバが前方へとボールをつなぐと
アデミウソンがマーカーの遠藤航に体をぶつけてボールをキープしてフリーとなり
50〜60mを独走して先制ゴールを挙げます。

本来なら、ボールを失った直後の高い位置での回収作業を優位に運ぶために
中央に絞って数的優位を与える存在でなければなかった槙野が
相手にカウンターされやすくなるピッチの内側で仕掛ける判断をするべきでなかった。

また、その槙野の仕掛けに対して遠藤がアデミウソンをコントロールできなければ
阿部勇樹は前方から戻ってきておらず、森脇良太も絞りが足りていない。

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槙野の仕掛けた判断からフォローに至るまでの判断において
浦和の守備は著しくリスク・マネジメントに欠けており、
かつてを思い起させる稚拙な判断の数々に対して相応の代償を払わされたように思います。


時間の経過がもたらすガンバの下降曲線

ガンバが1点リードして前半を折り返すと、
後半はビハインドを追っていた浦和が出足良くガンバのカウンターの起点を潰して
ボールを相手陣内に閉じ込めて攻撃する時間が増えます。

ガンバとしてはやはり浦和のプレッシャーを逃れるために
ワンタッチでボールをはたいてこれを回避しようとするのだけど、
浦和の選手がそれぞれ距離を縮めて密着して強くプレッシャーをかけるため
ガンバはボールをコントロールできず押し込まれるようになります。

前半のように足元で繋いでボールをキープして押し上げられないガンバは
リスタート等において後ろから大きく蹴って押し上げを図ろうとしますが、
前線でボールを収められないことによって
素早く攻守を切り替えてくる浦和に対して間延びした陣形を提供してしまう。

そこでガンバはアデミウソンに代えて長身の長沢駿を投入して
足元だけでなくロングボールを前線で収めて時間を作って押し上げる手段も確保しますが、
ガンバにとってのタイムリミットは刻一刻と迫ってきます。

攻撃で浦和陣内に深く攻め入れば攻め入るほど
前半から長い距離をカバーしてきたサイドMFの運動量の低下から
間延びが隠せないものとなってくる。

1度J2にまで落ちたガンバが1年でJ1に復帰して3冠を達成するに至った
その原動力が攻撃と守備を機能させるために上下動を繰り返すサイドMFの運動量です。

長谷川・ガンバの場合はサイドMFに運動量を求めるため
時間が経過してくるとどうしてもその量を確保するのが難しくなり、
サイドMFの運動量が落ちればチームとしての機能性を著しく欠くことになる。

そこで、大森晃太郎に代えて藤本淳吾を投入し、
ボランチの井手口陽介と今野泰幸の無尽蔵であるかのような運動量でもって
チームのオーガナイズを維持しようとするも、
ピッチの中央でボールを奪えた今野がチャンスと見て浦和ゴール前まで上がってしまうと
そのタイミングでボールを失ったガンバは浦和からカウンターを受けてしまう。

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5対4の数的優位の状況が生まれた浦和は
関根貴大からパスを受けた高木俊幸がシュートを放つ大きなチャンスを迎えるも
GK東口にセーブされる。

高木は関根の外を追い越した方が良かったように感じます。

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大きなチャンスをふいにしてしまった浦和ですが、
これで得たコーナーキックを直前に投入された李忠成が合わせて同点に追いつきます。

ピッチ内には李に先がけて長身のズラタンが投入されていたため、
ガンバの注意がズラタンに向いてしまっていたように感じます。

時間の経過がある意味でのチームの劣化にもつながるガンバに対して、
浦和は選手のリフレッシュが結果として違いをもたらした。

時間の経過とともに下降曲線を描いてしまうガンバと
緩やかながらも上昇カーブを描いていた浦和の曲線が
交わった時間帯に生まれたのが同点ゴールだったようにも感じます。


勝負弱くなかった浦和 熱戦に拍手

おそらくこの時間帯が過ぎればガンバも逃げ切ることを考えていたでしょうから、
同点ゴールは想像以上のダメージをガンバにもたらしたように思います。

運動量の低下から前半のようには連携してのカバーリングができず
ズレが生じてくるようになると、ガンバは肝となる真ん中を固める。

そのためにサイドにスペースが生まれる浦和は
前半の間に負傷した宇賀神友弥に代わって投入されていた右の駒井善成と左の関根で
ドリブルで仕掛けて何度もチャンスメイクするようになります。

同点に追いつかれて逃げ切りのカードが切れなくなったガンバは
運動量の低下する倉田秋を引っ張れるところまで引っ張ると
呉屋大翔をトップに投入して長沢を左サイドに持ってきて試合は延長戦に入っていきます。

浦和が駒井、ズラタン、李と投入していたのに対してガンバは長沢、藤本、呉屋と
それぞれが前線の選手を投入していることからも
延長戦はフレッシュな選手を前線に走らせる傾向がより強くなるとお互いに前後が間延びします。

スペースが拡がった中でお互いが攻守を切り替える展開となってゴールに近づきますが
ともに決められずPK戦に決着が委ねられると、
GK西川周作が呉屋のPKを止めて浦和がカップを掲げています。

延長戦後半には藤本のスルーパスを受けた呉屋のシュートがゴールポストに当たって
ゴールライン上をコロコロ転がるといった惜しい場面も迎えていたことからすれば
呉屋は掴みかけた「ヒーロー」の称号が一転して「戦犯」となってしまったように感じます。

しかし、この試合に戦犯と呼べるような選手はいなかったと言えるほど
決勝に相応しい熱のこもった一戦が繰り広げられたように感じるところで、
浦和とガンバの両チームに拍手を贈りたいと思います。






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posted by ピーター・ジョソソン at 16:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ・天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

瀬戸際で見せた奇術師の顔

試合終了間際の山口蛍のゴールで辛うじてイラクを振り切って勝ち点3は獲得したものの、
クリエイティブに欠ける攻撃手法とギリギリの結果は
指揮官ヴァイッド・ハリルホジッチの手腕への懐疑的な見方を止めるどころか加速させたように思います。

それだけに引き続き周囲から厳しい目が注がれるオーストラリア戦は
イラク戦から内容または結果の改善が求められたところ。

その中で出した1−1のドローによる勝ち点1という結果と内容は
指揮官の続投に値するものだったかどうか検証していきたいと思います。

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ワントップに本田圭佑が起用されたワケ

この試合に臨む上でまずハリルジャパンに求められたのは
選手をどうやりくりするかということだったと思います。

アジアの選手とは体格やプレースタイルの異なるオーストラリアが相手だけに
テクニシャン以上にフィジカルコンタクトで戦える選手を起用したいところだったのに加えて、
岡崎慎司に長友佑都そして累積警告で出場できない酒井宏樹と
この試合を前にして起用できない選手が出てきてしまった。

選手起用の選択肢が狭まりやりくりが試される中でハリルホジッチが出した答えは
本田のワントップ起用と酒井高徳の右サイドバックへのコンバートと槙野智章のスタメン出場でした。

サイドバックに関しては酒井宏樹と長友が不在となって補充もされないとあれば
酒井高徳を右サイドにコンバートするしか手はなかったですし、
高さのある相手を考慮すれば槙野か太田宏介か自ずと答えは出せます。

問題は岡崎の出場が微妙だったワントップのポジションです。

考えられた選択肢は、出場に問題のない浅野、小林悠、本田のいずれかを選択するか、
もしくはコンディションが万全でなくとも岡崎を起用するか、
そもそもトップを置かないゼロトップにするかだったと思います。

順当ならば代役は浅野拓磨となるところですが、
スピードを生かすためにも切り札のジョーカーとして手元に残しておくためにも
浅野は後半途中から起用した方がベターだったと思います。

また、ここまでの予選ではコンディションの良くない選手を起用したがために
チームのパフォーマンスを落とすことにも繋がっており、
万全でない岡崎を起用することには抵抗があったように感じますし
新しい戦術をチームに落とし込む時間がないことからするとゼロトップも選択しにくい。

となると、やはり代役を立てるしかないところに行き着くように思いますが、
そこで考えなくてはならなかったのはワントップに求める役割です。

ボールを持った時のFWというのは相手の背後に対して脅威を与える役割と共に
相手を背負ってボールをキープし味方が攻め上がるための時間を作る役割があります。

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できることならどちらの役割も担える選手が理想ではあるも無い物ねだりしても無いものは無いので、
ワントップにどのような仕事を求めるのか優先順位をつけなくてはならない。

この試合の日本は自らボールを持つのではなく
相手にボールを持たせてハーフウェイまで引いたらコンパクトに守備を整えて
入ってきたクサビのパスを潰してボールを奪ってカウンターを仕掛けています。

つまりのところ、プランBのサッカーがこの日のハリルジャパンの選択であり、
守備から攻撃へスムーズに移行するためにも
前線で相手のディフェンダーを背負えて時間を作れるタイプのワントップが必要でした。

そうしたときに相手の背後への飛び出しを得意とする浅野や小林悠では適任とは言えず、
白羽の矢が立ったのが2012年以来のコンバートとなる本田圭佑だったわけです。

フィジカルで負けない本田が前線でタメを作ったら香川がフォローしてボールをキープし
時間を作っている間に両サイドの原口と小林悠が背後へ飛び出す、
この日の日本が描いたゲームプランを遂行するためには本田が適任だったし
本田しかいなかったように思います。


ハイボールを蹴らせない低いプレスライン

しかしながら、日本がボールを奪う位置を高くすれば
前線で時間を作ることに躍起にならなくてもよいはずで、本田でなくともよかったはず。

奪う位置を上げて両サイドが前線に飛び出すための距離を短くしてやれば
何も本職ではない本田をトップで起用する必要はなかったわけです。

日本はこれまでもボールを持たない時にはできるだけ高い位置でのボール奪取を模索してきましたし
それを「是」としてきたところもあったと思います。

現に識者の間でも、オーストラリア戦後には
相手にボールを持たせるのであればもっと高い位置からプレスをかけて
積極的に守備をすべきとの声が挙がっていたと思います。

守備をするセオリーに照らせばそれは正しいと言えますが、
果たして日本がプレスの位置を上げればどうなるだろうか。

プレスの位置を上げてボールを保持する相手から時間を奪ってしまったら
おそらく追い込まれるオーストラリアは繋ぐのを諦めて前方にボールを蹴り出してくる。

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しかし、高さのない日本はハイボールの処理に不安を抱えおり、
相手にボールを蹴らせることが得策とは言えない。

だからこそ、相手にボールを持たせら無理に追い込もうとせずにハイボールを自重させ
できるだけ足下でボールを繋がせてミスを誘う、
そのためにもボールを奪うためのプレスラインは無闇には上げない。

つまりのところ、プレスの位置が低かったのではなくて
確信をもって上げなかったというのが正解だったように感じます。

おそらく相手が足元でのボールコントロールに長けたよりレベルの高い相手であれば
ミスを誘おうにも誘えないので待ち構える守備を日本は選択できない。

しかし、ここまでのオーストラリアの試合を分析すれば
意識的にボールを持とうとする気概は感じるもののそれほど巧みであるわけではないので、
ハイボールを蹴らせないようにして
オーストラリアにボールを持たせた方が得策であると考えたと思います。


確信を持ってオーストラリアを「罠」にかけたハリル

だからといってただ待ち構えるのではなく、
日本はトラップを仕掛けた上でオーストラリアを待ち構えたわけです。

ハーフウェイまで全体を引いた日本は
オーストラリアのアンカーのマイル・ジェディナクの場所を基準に
本田そして香川真司がチェイスを始める。

ジェディナクへのコースを消しながらセンターバックにチェイスするため
パスコースの少なくなるオーストラリアは低い位置で幅を広げるサイドバック
またはCBとSBの間に降りてくるインサイドMFにボールを預けて次への展開を模索する。

ここで特徴的な動きをしていたのはトップ下の香川です。

最前線右でチェイスのスイッチを入れる本田に連動してジェディナクへのコースを消すと、
ボールが左に振られた際に香川は
相手のCBではなくインサイドMFの13番アーロン・ムーイへとプレッシャーをかけています。

またそれに呼応して右サイドMFの原口は相手のSBとムーイの間に立ってSBへのコースを消すと
やはりムーイに対してプレッシャーをかけているため香川とともにムーイをサンドするような格好となる。

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つまりは、日本はボールホルダーであるオーストラリアのCBに対して
ムーイへのパスコースという餌を意図的に与えながら、
すぐにその道を遮断することによってボールを奪おうとしたわけです。

そうした日本の狙いは前半5分に奏功し、ムーイを餌に罠にかけてボールを奪ったところから
クサビを受けた本田を相手が潰しに前に出てこなかったこともあって
難なく原口元気へとスルーパスが出されると先制ゴールが生まれた。

先制以前と以後で変わらない香川らの動きから判断しても
偶然生まれたものではなく完全に狙ったものであって、
ハリルの仕掛けておいた罠にオーストラリアは真正面から嵌まり込んだと感じます。


回避される「罠」

右サイドに下りてくるムーイへの安易なパスは危険と認識したオーストラリアは
左のインサイドMFマッシモ・ルオンゴを使ってボールを前に運ぼうとするも、
日本は中盤をスライドさせると山口が前に出てきてカバーする。

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幅をとる役目のサイドバックに預けようとすれば
今度は日本のサイドMFの小林悠と原口がそれぞれプレッシャーをかける。

そのためにオーストラリアはパスコースはあるのだけど
パスを出せばすぐさまプレッシャーを受ける状況に陥ります。

そこで、オーストラリアは少し無理をする形で逆サイドに展開させたり、
狙われるムーイがポジショニングを上げる、
またはムーイとルオンゴとでポジションチェンジを図ったりするなど、
ビルドアップにアイデアを持ち込んで日本のプレスの的を絞らせないようにしてボールを動かそうとする。

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ここで頑なに蹴らなくなっているところにオーストラリアの変化を感じとれるわけですが、
蹴らないためにハリルの術中からなかなか逃れられませんでした。

日本が加点することもなかったので前半の間はそれ以上状況に変化はなく、
変化が起こったのはハーフタイムを挟んだ後半になります。

後半のオーストラリアはサイドバックがポジショニングを上げると、
アンカーのジェディナクの位置を動かしてくるようになる。

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この相手の変化によって日本はサイドMFがオーストラリアのサイドバックに押し込まれ
インサイドでは捕まえるべき選手を見失うようになりボールの奪いどころが曖昧になると
オーストラリアにPKを与え失点することになる。

ムーイとルオンゴが左右でポジションを入れ替えたことに加えて
ジェディナクがポジションを移動し始めたことで誰が誰を捕まえるか混乱すると、
日本は長谷部誠がムーイを捕まえるために前に出るが
その背後で山口蛍はスライドを怠りカバーをしなかったため
オーストラリアのトップ下の23番トム・ロギッチに長谷部の背後のスペースへと侵入される。

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前半の間の長谷部と山口の位置が左右逆だった時には
山口が前に出て長谷部がスライドしてカバーするというように
それぞれの特長にあった役割が分担されていたものの、
この場面では左右が逆になっていたことからそれぞれの特長が活きなかったところがあります。

そのために日本はロギッチとの距離を近くしていた右SB酒井高徳が潰すために前に出るも
前にボールを送られてしまってポジショニングを上げていた左SBスミスに背後を取られる。

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後半のオーストラリアはサイドバックの位置を上げていたため小林悠のプレスバックも間に合わず
日本はスクランブルとなってゴール前に人を集めるも、
ファーサイドに逃げた9番ユリッチをフリーにしてしまって急いで戻ってきた原口が倒してしまった。

左サイドルートは香川と原口でサンドして封鎖し、右サイドルートは山口が潰したら
長谷部が右に左にスライドして中央のロギッチへのルートを封鎖していたのが、
後半にオーストラリアがサイドバックの位置を上げてジェディナクの位置を動かしてきたことで
日本の罠が発動しなくなったことがきっかけとなって
するべきことを見失ったことが失点に繋がったように思います。


動いてしまった試合で高さへのマネジメントをしたハリル

同点になると、日本、オーストラリアともに
ロングボールに端を発したトランジションの攻防となります。

ロングボールを蹴って全体の押し上げを図りボールを収める、
またボールを収められなくとも高い位置でプレッシャーをかけてボールを奪ってゴールに迫る。

但し、全体の押し上げを図っているため背後に大きくスペースを作るようになると
オーストラリアはロングフィードのボールを蹴ってくるようになる。

ジアヌに代えてロビー・クルーズを投入し日本の背後へ脅威を与えてきたオーストラリアに対して
日本もトランジションで対抗するも肝心なところでミスが目立ち不発に終わったことで、
左右にボールが行き交う状況でボールを収めたのはオーストラリアでした。

オーストラリアがサイドバックの位置を上げているためサイドMF原口と小林悠が押し込まれる日本は
長谷部と山口の横にスペースに蓋をするために香川がポジションを下げますが、
それにより前線が本田ひとりだけとなるため
日本は前方に広大なスペース提供することになりオーストラリアの攻撃に晒される。

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オーストラリアはここで満を持してユリッチに代えて日本の天敵ティム・ケーヒルを投入すると
終盤にはムーイに代えてマシュー・レッキーを投入し嵩になって攻撃を仕掛ける。

日本としてはボールを奪ったらカウンターを仕掛けたいのだけれども
自陣に入り込んでいるオーストラリアの選手の数が多く
すぐにプレッシャーを受けることからボールキープすることがままならなければ、
本田に預けようにもコースが1つしかないために読まれてしまっている。

日本は終盤になって負傷した小林悠から清武弘嗣、
そして本田に代えて浅野を投入してボールを奪ったら相手の背後に飛び出すことによって
オーストラリアのボールポゼッションから脱出を試みる。

浅野の飛び出しはほとんどがオフサイドとなってしまったものの
相手に対して背後へ脅威を与えることに成功しており
もっと早くに投入すべきだったようには感じます。

それを早期に決断しなかったのは
危険な間延びを回避する事と交代枠を残しておくことにあったと思います。

オーストラリアのポゼッション状態を脱出するのに当たって、
縦に速く急いでしまえば相手が前方に残った状態で日本は前後が分断されるので
もしその攻撃でボールを失うようなことになれば守備に戻るのが遅れて危険を招くことになる。

だからこそ、日本が攻撃するためには相手を一旦引かせたく
そのためには前でボールを収められる本田を簡単に外すわけにはいかなかったように感じます。

そしてアディショナルタイムに原口に代えて丸山祐市を投入して
スコアを保ってドローのまま試合を終えるわけですが、
おそらく日本がリードされている展開でもなければ丸山の投入は確定していたと思います。

終盤のオーストラリアの放り込みに対して
高さで簡単に負けないようにするためにも必ず丸山枠を残しておきたかったところで、
負傷者の出ることも想定した結果、交代が遅れたところがあったように感じます。


あとがき

すでに1敗している日本にとっては勝ちたい試合だったけれども
アウェイで首位オーストラリアとの試合であったことからしたら納得できる結果だったと思います。

結果は概ね納得できるものであるならば内容はどうだったのかが問われるところですが、
ボールを持たないで引いて守備をするこの試合の日本の振る舞いに対して
批判の声はやはり挙がっているかと思います。

しかし、この試合でのハリルホジッチは
ボールを保持するスタイルへの転換期にあるオーストラリアの弱点を見抜いた上で
能動的にボールを持たない選択を日本にさせています。

それはボールを持つオーストラリアに対して「罠」を仕掛けておいたことからも明らかです。

1−1のドローという結果が満足できないならば理解もできますが、
分析して相手のウィークポイントを突きながら日本のウィークポイントには蓋をした
その中身のどこに批判するべきところがあっただろうか。

うまくいかないからといって全てにおいて批判ありきの姿勢では
日本サッカーは進歩していかないように感じます。

日本人が思い出さなければならないのはザックジャパンの失敗で、
いくらボールを回せたとしても
それだけでは違った展開にされたときに大きな問題となって日本に降りかかるからこそ
プランAだけでなくBも用意しておかなければならない。

今の日本代表のメンツで、かつてのバルセロナのようにボールを回し続けられるのかと言えば
そのような展開で試合を進めることはできるかもしれないけど90分通しては無理であって、
日本の得意とする展開に持ち込めない時にはそれ相応の処し方をしなければならない。

ここのところのハリルジャパンは前線で核となる選手が試合に出場できておらず
肝心なプランA部分で錆びつきを見せているのが気になりますが、
プランBでオーストラリア相手に勝ち点1もしくはそれ以上の結果も得られたかもしれなかったことは
これまでひとつのことしかできなかっただけにポジティブに考えてよいと思います。

今後ハリルホジッチは日本代表の指揮官として
請け負ったタスクであるプランBの構築を進めるとともに
プランAの錆落としに対しても解決策を示さなくてはならないですし、
変化する状況を選手自身がピッチの中で判断できるよう
スキルを高める手助けをしなければならない。

やらなければならないことは山積していると言えますが、
少なくともこの2連戦において
ハリルホジッチの解任を判断するまでの材料は示されなかったと感じます。






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posted by ピーター・ジョソソン at 16:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ハリルジャパン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする